スローライフに疲れましたが、この結婚は予定外です。

猫宮乾

文字の大きさ
20 / 28

【20】朝になったのに(★)

しおりを挟む


 その日、工房へと素材を持っていくと「二日で素材が全て揃うなんて……」と、驚かれた。ユフェルのおかげだと思う。あとは、熟成させる薬液があるからとの事で、一週間だけ待つ事になった。

 ユフェルと共に家へと帰りながら、俺は空を見上げた。日が落ちるまで、もう少しである。

「今夜も体が熱くなるのか……」

 思わず俺が溜息をつくと、ユフェルがそっと俺の肩を抱いた。

「辛い想いをさせるな」
「……ユフェルは、嫌じゃないのか?」

 媚薬の熱に飲み込まれると、俺は自分で自分が分からなくなってしまう。考えてみれば、いくら子供が欲しいとは言え、ユフェルだって望んで俺の相手をしているわけではないと思うのだ。

「嫌なはずがないだろう。カルネと繋がっていると、満ち溢れた気分になる」
「え?」
「伴侶紋が疼くんだ。ずっとこうしていたいと訴えてくる」

 それは俺には分からない。無意識に左手首に触れながら、俺はユフェルを見た。

「カルネが伴侶で俺は嬉しいぞ」
「どうして?」
「理屈は無い。ただ、嬉しいだけなんだ。これまでに、こんな幸福感を覚えた事は無い」

 その言葉に俺は照れてしまった。
 こうして二人で帰宅し、その日は早めに夕食を取った。
 そうして――夜が来た。

 やはり俺の体は熱くなった。しかし三回目であるせいなのか、本日は随分と余裕が有る。まだ理性が飛んでいない。そんな俺を抱きしめると、ユフェルが耳元で言った。

「媚薬が無しでも、俺に抱かれてくれれば良いんだが」
「……それは、その」
「この一週間で、俺に絆されてくれ」
「ユフェル……ん!」

 直後、熱烈なキスが降ってきた。正面から俺は座った状態でそれを受け止める。何度も何度も深く唇を貪られると、全身がカッと熱を帯びた。

「あ、あ、これはダメだッ!」

 きゅっとユフェルが俺の左乳首を摘む。そうしながら右腕では抱き寄せられ、更に深くキスをされた。

「あ、あ、あ」
「カルネの全てが欲しい」
「ん、ぅ」

 一糸まとわぬ姿だった俺の右乳首を、ユフェルが吸う。それから甘く噛まれると、俺は訳が分からなくなった。

「や、ゃァ……! ん、ハ」

 陰茎が頭をもたげ、俺の先端からは透明な先走りの液が溢れ始める。純粋にそれが気持ち良くて、俺はユフェルの背中に腕を回した。ペロペロとユフェルは俺の乳頭を舐めている。その度に、ジンジンと甘い疼きが全身に広がった。

「あ、あ」

 そのまま座った状態で挿入されて、俺は喘いだ。膝を立てている俺は、ゾクゾクとしながら目を閉じる。始めは浅く挿入され、シーツを握り締めながら、俺は甘い衝撃に耐えた。

「ンん、あ、もっと……」
「カルネは綺麗だな」
「あ、ハ……っ、うあ」

 俺の両方の太ももを持ち上げて、ユフェルが深く挿入し始めた。抽挿される度に、俺の口からは声が漏れる。それが恥ずかしいのだが、抑えられない。根元までぐっと挿入した状態で、その時ユフェルが動きを止めた。

「や、あ、もっと動いてくれ」
「ああ、いくらでもな」
「ん――!!」

 そこから激しい抜き差しが始まった。感じる場所を突き上げられる度に、俺は快楽から涙をこぼした。穏やかな交わりは、逆に俺の体の熱を酷くする。

「あ、ああ! あ、足りない、っ」
「俺も全く足りない」
「いやだ、アあああ、あ、あ、あああ! 気持ち良っ、うあああ!」

 激しくユフェルが動き始めると、この日も理性が掻き消えた。
 それから空が白むまでの間、俺達は交わっていたのだった。

 翌朝――ユフェルの腕の中で目覚めながら思った。
 俺は結構、こんな朝が幸せかも知れない、と。

 ユフェルを見ると、視線が重なった。

「目が覚めたか?」
「うん……ユフェルは寝たか?」
「ああ、少しな」

 微苦笑したユフェルを見ていたら――ドクンドクンと胸が煩くなった。理由は分からないが、その表情があんまりにも綺麗に思えたのだ。赤面してしまった俺は、シーツで顔を隠す。するとその状態のまま、ユフェルが俺を抱きしめた。

「カルネが足りない。もっと欲しい」
「……ユフェル」
「媚薬が無ければ、ダメか?」
「……っ」

 その言葉に、俺は苦しくなった。ダメ、だとは思わない自分がいた。俺も何故なのか、ユフェルがもっと欲しい気がする。だからシーツから顔を出して、俺はまじまじとユフェルを見た。頬が熱い。

「……ダメじゃない」
「本当か?」

 するとユフェルが俺を抱き起こした。されるがままになっていると、俺の腹部にユフェルの剛直が当たった。

「挿れても良いか?」
「う、うん……」

 完全に理性がある状態では、初めての事である。緊張がないわけでは無かったが――俺は、拒否しようという気にはならなかった。何故なのか、左手首が熱い気がする。

「ん、ア」

 俺を上に乗せるようにして、下からユフェルが挿入してきた。巨大な屹立に、俺は震える。押し広げられる感覚がして、いつものような媚薬の熱が無いから、露骨に感じて狼狽えた。慌ててユフェルにしがみつくと、喉で笑われた。

「大丈夫か?」
「あんまり!」
「……慣れてくれ」
「あ、ああ!」

 最奥までユフェルのものが一気に入ってきた。腰を掴まれている俺は、逃れられない。触れ合っている箇所が、熱いのは変わらない。ただ、いつもより鮮明に、ユフェルの存在感を俺の体が識っている気がした。

「ん、ぁ、ああ! 動いてくれ」
「良いのか? もう少し馴染んでからの方が良いんじゃないか?」
「い、いいから……あ、ああ!」

 ゆっくりとユフェルが体を揺さぶった。そうされると、切ない疼きがこみ上げてくる。媚薬の熱が無いというのに、俺ははっきりと、もっと欲しいと感じていた。

「あ、あ、ああ! ユフェル、動いて」
「――求められるのは悪い気がしないな」
「ああア――ん、っ、うあ!」

 それからユフェルが激しく動き始めると、俺は気持ち良すぎて、媚薬の熱が無いというのに理性を飛ばしてしまった。気が付けば、俺の腰も蠢いていた。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する

SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する ☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます! 婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

処理中です...