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―― 第三章 ――
【四十七】気軽なリーシュ
しおりを挟む「あちらも見てみよう」
クライヴ殿下がそう言って僕の手を引いた。小さく頷きついていくと、そちらにはリーシュがたくさん並んでいた。実物を見るのは初めてだったけれど、大きく『リーシュ』と書かれているから、間違いはないと思う。服の下、素肌に装着する形の、革や紐の拘束具が、安価なものから高価な品まで、ショウケースや棚、ハンガーにかけられてトレーに並んでいる。あくまでも雑貨の種類の一つの様子で、首輪と並ぶほどの意味合いの品は、ここには存在していない様子だ。
「ここにあるのは、プレイ用というよりは、気分を味わうための品のようだな」
同じ見解らしいクライヴ殿下の声に、僕は頷く。首輪の類似商品としては、他におそろいのドックタグなども、別の区画に飾られているのを先ほど見た。
「ルイスはここにある雑貨ならどれが好きだ?」
「そうですね……僕は、これが綺麗だなと思います」
僕は正面に飾られていた、ショウケースの中でマネキンが装着している、黒い紐でできたリーシュを見据えた。四肢や胸、腰を飾る品で、解きやすそうな紐リボンがついている。ただよく見れば、それは飾りで、その下に銀の留め具も見える。
「そうか。俺はルイスには、赤が似合いそうだと思っていたけどな、黒もいいな」
「え?」
「買ってみないか? せっかくだから」
悪戯っぽく笑っているクライヴ殿下の声に、僕の頬はより熱くなった。
「嫌か?」
「……嫌じゃないです」
僕が小さく告げると、頷いてからクライヴ殿下が店員に声をかけ、同一の品が入るという箱を購入した。柔らかそうな波打つ髪をした眼鏡の店員は、僕達が店を出るまで見送ってくれたけれど、僕達が領主夫妻であるとは気づかなかった様子だ。変装とは偉大である。
その後は街はずれまで、再び手を繋いで歩き、僕達は待っていた馬車へと乗り込んだ。
そうして城へと戻ってから、僕はそのまま手を引かれ、寝室へと促された。
「つけさせてほしい。ダメか?」
「……は、はい。ダメじゃないです、その……」
僕は緊張しながらも、何度も頷いた。
ただ少しだけ恥ずかしい、という気持ちと、クライヴ殿下にもっともっと支配されたいという気持ちが、交互に僕の胸へと浮かんできた。
「そうか。《服を脱いで》」
「はい……」
僕は首元の布に手をかけ、たったままで一枚ずつ服を脱ぐ。指先が期待と緊張から震えてしまう。僕が身に着けたら、クライヴ殿下は喜んでくれるのだろうか、そんな想いがとても強い。僕は支配されたら嬉しいけれど、クライヴ殿下も同じように想っていてくれるだろうか。きっと、大丈夫だと僕は思う。僕は今、殿下を心から信頼している。漠然とそう考えて、自分の気持ちに改めて気づいた。
支配されることが、嫌ではない。僕は、もうDomも怖くない。
自分の願望と向き合うことへの恐怖も薄れている。
脱ぎ終えた僕は、店での会話を思い出しながら、クライヴ殿下を見上げた。
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