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―― 第三章 ――
【四十六】目玉商品
しおりを挟む店内には飾り付けがなされていて、各地にショウケースがあった。僕は買い物を、邸宅に来た商人以外からした経験がそもそも無かったので、一つ一つが物珍しくて、すぐに興味津々になってしまった。
「クライヴ、これは何?」
「ネコミミだな。仮装に使う」
「仮装?」
「黒神の使い魔に猫がいたという逸話から、仮装をして楽しむ民がいるらしい」
「そうなんですか。これは何? 尻尾に見えるけど、これも猫に扮するための品ですか?」
「――まぁ、そうと言えなくもないが」
「どうやって身に着けるんですか?」
「球体がついているだろう?」
「はい」
「それを、体の中に挿入する。すると振動する魔導具だ。ようは――大人の玩具だな」
「え!?」
僕は思わず真っ赤になった。俯いてプルプルと震えていると、隣でくすくすとクライヴ殿下が笑った。チラリと視線を上げて周囲を見れば、確かに用途が大人向けにしか感じられない魔道具や張り型まで、子供向けと思しきぬいぐるみの隣などにポンと並んでいる。あんまりにも自然と置いてあったものだから、僕は気が付かなかった。
「年齢制限のある店舗だと、看板には記載されていたぞ」
「そ、そうですか……」
「真っ赤だな。興味があるか?」
「ち、違、っ……クライヴは、こういうのが好きなんですか?」
「ルイスに頼まれたら使うことを検討する程度には、と、答えておく」
余裕たっぷりの顔をしているクライヴ殿下の笑みに、僕はさらに赤面してしまった。
それからクライヴ殿下は、斜め前を見た。
「まぁここは雑貨店だからな。手錠一つとっても、玩具だ」
その言葉につられて視線を向けると、ファー付きのおもちゃの手錠がそこにはあった。銀色の鎖が見える。こうして僕達は、店内を回り始めた。やはり目玉商品は、首輪らしく、こればかりは高級そうなガラスケースの中で、きらめきを放っている。
――いつかクライヴ殿下は、僕の気持ちが固まるのを待つと言ってくれた。
僕の気持ちはもう明らかだ。僕は、クライヴ殿下が大好きだ。
もっともっとクライヴ殿下だけの存在になりたい。けれど、今もクライヴ殿下は僕と正式なDomとSubとしてのパートナー関係になりたいのかと、改めて問う事が出来ずにいる。断られたらと思うと、苦しくなる。ただ、僕の方から切り出すべきだと、実はここ数日ずっと考えていた。
「ルイス、首輪が気になるか?」
「っ!」
その時、後ろからクライヴ殿下に抱きしめられて、僕はビクリとしてしまった。
「贈ってもよいと思ってもらえたならば、俺にはその用意がある。ただ、出来れば特注させてくれ。ルイスのためだけに、世界に一つだけの首輪を用意したいんだ」
「クライヴ……いいんですか?」
「ああ。ん? ということは、贈っても良いのか?」
「……本当に、僕でいいのなら、僕はクライヴから首輪が欲しいです」
「ルイス以外をパートナーにしたいと思った事は一度もない。そうか、ありがとう」
嬉しそうにそういうと、クライヴ殿下が両腕に力を込めた。
後ろから抱きしめられたままで、僕は終始照れていた。
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