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―― 本編 ――
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昌波さんは美容に気を遣う男子なので、俺は過去にもリップクリームを渡されたことがある。素直に塗っていると、行永が咳払いした。
「それでは、そろそろ僕と砂原くんはお暇させて頂きます」
「ええ、ええ。また」
「行くよ、砂原くん」
「ん? おう」
俺は昌波さんにリップクリームを返してから立ち上がった。何故なのか、行永は目が笑っていない。冷たい表情だ。口元だけ、無理に唇を持ち上げて笑みを作っているように見えた。
――帰り道、俺はラブホに引っ張り込まれた。男でも入れるラブホらしい。
「あ、あ、あああああ、やっ、なに、ぁア!」
「どうしてリップクリームを借りたりするの? それって普通なの?」
「ひゃっ、ぁァ……ああ! やぁ!」
俺はうつ伏せになって臀部を突き出し、ギュッとシーツを掴む。しわくちゃだ。
ボロボロと快楽由来の涙を零す。
「あ、あ、あ、頭馬鹿になる、まってくれ――うああ、深、っ」
「いつもは手加減してるからね。もっと深く出来るから」
ズクンっと、行永が俺を穿つ。容赦なく結腸を責められると、じわりじわりと俺の内側から快楽が弾ける。
「やぁあああ、あっ――、――!!」
そのまま中だけで果てさせられ、俺は長い射精感が全身を襲うのに必死で耐えた。
「うあ、ぁッ待って、まだ、イって――やあああ」
だというのに、追い打ちをかけるように打ち付けられて、俺の意識はブツンと途切れた。事後、目を覚ますと、俺の体からはトロトロと白濁が零れていた。
「ああ、目が覚めた? 挿れるよ」
「え」
すると俺を正常位の体勢にして、行永が俺の太ももを持ち上げて挿入してきた。
「まだ解れてる。中、トロトロだよ」
「あ……ぁ、ァ……そ、そういうこと、言わないでくれ、っ」
「どうして?」
「恥ずかしいから――やぁ、ぁァ……ああ」
緩急をつけて動かれて、俺の体はすぐに再び熱くなった。
そのまま――この日は、日付が変わり、どころか夜が白むまでの間、俺は抱き潰された。事後、再び意識を飛ばし、やっと目が覚めた時、俺の体は綺麗になっていた。行永が処理をしてくれたみたいだ。行永は、椅子に座って膝と腕を組んでいる。とても不愉快そうな顔をしているので、俺は不安になった。今回だって、今までに無いくらい啼かされた。手酷くされたと思う。気持ちよかったのが、なんとも言えないのだが……。
「あ、あの? さ? なんか怒ってるのか?」
「そりゃあね。きみが、僕以外に唇を触らせたり、リップクリームで間接キスしてたりしたら、不愉快にもなる」
「……? でも、昌波さんはいつもああだぞ?」
「だからそれが気に食わないという話だよ」
吐き捨てるようにそう言ってから、行永は立ち上がると、俺の方へとやってきた。そしてやっと上半身を起こした俺の頬に触れた。そして、俺に触れるだけのキスをした。
「きみの唇は、僕のだから」
多分、そう言われてから、かなと思う。
俺は、行永を――自分が明確に意識していることに気がついてしまった。多分、これは恋だと思う。行永にとって俺は愛人で、都合の良い性処理相手なのだろうから、俺が好きな状態で関係を維持するというのは、いいやそもそも元からダメだったのかもしれないが、本当に誠実ではないと思う。青真くんの教育にも悪いだろう。
今日、行永は作家仲間に誘われたそうで、飲みに出かけている。
帰ってきたのは、俺が皿洗いを終えた時だった。
「こっち、おいで?」
そう言われた俺は、今日こそ行永に、関係を終えようと告げるべく、行永の前に立った。女性ものらしき香水の匂いがする。
「あ、あの、行永――」
言いかけた時には抱きすくめられていた。俺が切り出したら、この体温に触れることはもうなくなるのだろう。今だって、女を抱いてきた帰りだと思うし。
「ん?」
「もう、止めにしよう。な?」
「なにを?」
「だ、だから……その……ヤるの」
「……どうして?」
すると行永が、片腕で俺を抱き寄せたまま、じっと俺を見た。
「愛人とか、よくないと思うんだ、やっぱり」
「――は?」
俺の精一杯の言葉に、行永が呆気にとられたように目を見開いた。
「俺は、やっぱり恋人としか、シちゃダメだと思う。俺、さ――その……困らせるかもしれないけど、行永のこと、好きになっちゃったんだ。だから、片想いしたまま抱かれるっていうのは、結構精神的にクるし、だから……日給ためてたし、ネカフェとかいけるから、俺、なんなら出てくし。その、今までありがとうな」
色々話し方を考えていたはずが、結局上手く言えなくて、直接的に伝えてしまった。
「待って、ねぇ、待って。どういうこと? 僕は砂原くんを恋人だと思ってるけど?」
「それでは、そろそろ僕と砂原くんはお暇させて頂きます」
「ええ、ええ。また」
「行くよ、砂原くん」
「ん? おう」
俺は昌波さんにリップクリームを返してから立ち上がった。何故なのか、行永は目が笑っていない。冷たい表情だ。口元だけ、無理に唇を持ち上げて笑みを作っているように見えた。
――帰り道、俺はラブホに引っ張り込まれた。男でも入れるラブホらしい。
「あ、あ、あああああ、やっ、なに、ぁア!」
「どうしてリップクリームを借りたりするの? それって普通なの?」
「ひゃっ、ぁァ……ああ! やぁ!」
俺はうつ伏せになって臀部を突き出し、ギュッとシーツを掴む。しわくちゃだ。
ボロボロと快楽由来の涙を零す。
「あ、あ、あ、頭馬鹿になる、まってくれ――うああ、深、っ」
「いつもは手加減してるからね。もっと深く出来るから」
ズクンっと、行永が俺を穿つ。容赦なく結腸を責められると、じわりじわりと俺の内側から快楽が弾ける。
「やぁあああ、あっ――、――!!」
そのまま中だけで果てさせられ、俺は長い射精感が全身を襲うのに必死で耐えた。
「うあ、ぁッ待って、まだ、イって――やあああ」
だというのに、追い打ちをかけるように打ち付けられて、俺の意識はブツンと途切れた。事後、目を覚ますと、俺の体からはトロトロと白濁が零れていた。
「ああ、目が覚めた? 挿れるよ」
「え」
すると俺を正常位の体勢にして、行永が俺の太ももを持ち上げて挿入してきた。
「まだ解れてる。中、トロトロだよ」
「あ……ぁ、ァ……そ、そういうこと、言わないでくれ、っ」
「どうして?」
「恥ずかしいから――やぁ、ぁァ……ああ」
緩急をつけて動かれて、俺の体はすぐに再び熱くなった。
そのまま――この日は、日付が変わり、どころか夜が白むまでの間、俺は抱き潰された。事後、再び意識を飛ばし、やっと目が覚めた時、俺の体は綺麗になっていた。行永が処理をしてくれたみたいだ。行永は、椅子に座って膝と腕を組んでいる。とても不愉快そうな顔をしているので、俺は不安になった。今回だって、今までに無いくらい啼かされた。手酷くされたと思う。気持ちよかったのが、なんとも言えないのだが……。
「あ、あの? さ? なんか怒ってるのか?」
「そりゃあね。きみが、僕以外に唇を触らせたり、リップクリームで間接キスしてたりしたら、不愉快にもなる」
「……? でも、昌波さんはいつもああだぞ?」
「だからそれが気に食わないという話だよ」
吐き捨てるようにそう言ってから、行永は立ち上がると、俺の方へとやってきた。そしてやっと上半身を起こした俺の頬に触れた。そして、俺に触れるだけのキスをした。
「きみの唇は、僕のだから」
多分、そう言われてから、かなと思う。
俺は、行永を――自分が明確に意識していることに気がついてしまった。多分、これは恋だと思う。行永にとって俺は愛人で、都合の良い性処理相手なのだろうから、俺が好きな状態で関係を維持するというのは、いいやそもそも元からダメだったのかもしれないが、本当に誠実ではないと思う。青真くんの教育にも悪いだろう。
今日、行永は作家仲間に誘われたそうで、飲みに出かけている。
帰ってきたのは、俺が皿洗いを終えた時だった。
「こっち、おいで?」
そう言われた俺は、今日こそ行永に、関係を終えようと告げるべく、行永の前に立った。女性ものらしき香水の匂いがする。
「あ、あの、行永――」
言いかけた時には抱きすくめられていた。俺が切り出したら、この体温に触れることはもうなくなるのだろう。今だって、女を抱いてきた帰りだと思うし。
「ん?」
「もう、止めにしよう。な?」
「なにを?」
「だ、だから……その……ヤるの」
「……どうして?」
すると行永が、片腕で俺を抱き寄せたまま、じっと俺を見た。
「愛人とか、よくないと思うんだ、やっぱり」
「――は?」
俺の精一杯の言葉に、行永が呆気にとられたように目を見開いた。
「俺は、やっぱり恋人としか、シちゃダメだと思う。俺、さ――その……困らせるかもしれないけど、行永のこと、好きになっちゃったんだ。だから、片想いしたまま抱かれるっていうのは、結構精神的にクるし、だから……日給ためてたし、ネカフェとかいけるから、俺、なんなら出てくし。その、今までありがとうな」
色々話し方を考えていたはずが、結局上手く言えなくて、直接的に伝えてしまった。
「待って、ねぇ、待って。どういうこと? 僕は砂原くんを恋人だと思ってるけど?」
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