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―― 本編 ――
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「いや、いい。お前、今日も女抱いてきたんだろ? それに、愛人をちょくちょくここに連れ込んでるんだろ? 俺がいると、連れ込みにくいだろうし」
「だから待って。なにそれ、どういう事かな? 誰がそんなこと言ったの? ちなみに今日行ったのは風俗じゃないけどね? クラブだよ。若干女の子との座る距離が近かったのは認めるよ、残り香かな」
「……青真くんが言ってたんだから、事実だろ?」
「青真のやつ……あいつは、まったく」
「子供を責めるなよ」
俺が俯くと、強引に行永が俺の顎を持ち上げた。
「誓って僕は、愛人をこの家に連れ込んだことなんてない。妻が亡くなってから、何度か恋人がいて、その相手を連れてきたことはあるけれどね。僕は、外ではともかく、家では本当に好きな相手以外を抱いたりしない。だから僕に迫ってきた過去のハウスキーパー達と揉めて、昌波さんに紹介を頼んだ次第だよ」
つらつらと語ってから、行永がぎゅっと俺を抱きしめた。
「繰り返すけど、僕は砂原くんを恋人だと思ってる。砂原くんもそう思ってくれてると思っていたよ」
「……」
「一番最初に誘った夜、僕は本気できみにそばにいて欲しいと思った。思って、ああ、好きみたいだと思ったから、誘ったんだよ。その夜だって、僕はきみをきちんと愛していた」
「……」
「だけどさっき、きみだって僕を好きだと言ってくれたんだから、もしまだ恋人じゃなかったんだとすれば、僕らは両想いなんだから、今から恋人になって問題は無いよね? お願いだ、出て行くなんて言わないでほしい。僕は、きみがいないとダメだ」
……。
果たしてこの言葉は、信じていいのだろうか?
俺は自分の気持ちには正直だから、確かに告白をした。だが、遊び歩いていた行永の言葉には信憑性がない。信じる根拠もない。
「ねぇ、砂原くん……っ、あのさ、本当に僕は、今、きみ一筋だし、きみと寝て以来きみ以外と寝たこともない。どうしたら信じてくれる?」
俺の不安が伝わっていたのか、切実そうな目をして、ギュッとより強く行永が俺を抱きしめた。
「弱ったな、どうすれば伝わるんだ? とにかく、僕はきみが好きだ。言葉ではなんとでも言えるかもしれないと言われたらそれまでだけど――なんだろうな。ああ、どうしよう。そうだ。じゃあ、こうしよう」
「?」
「砂原くんが信じてくれるまで、僕はきみを抱かない。その代わり、恋人らしいことをいっぱいする」
「へ? たとえば?」
「そうだな、花火大会にでも行こうか」
俺の目を見て、行永が困ったように笑った。果たして花火が恋人らしいのか、俺には分からなかったが、俺は小さく頷いた。
こうして出て行くこともなく、俺は花火大会の日を迎えた。
「ほら、砂原くん。浴衣」
「えっ、これ……買ったのか?」
「うん。きみの浴衣姿が見てみたくてね」
俺を後ろから抱きしめて、優しく行永がいう。近い距離に、俺の心臓は高鳴る。
その後、俺は黄緑色、行永は紺色の浴衣を着て、男二人というのもどうかと思うが、近くの花火大会へと出かけた。曲にあわせて花火が上がる。俺はお好み焼きのパックを手にしながら、空を見上げた。
「綺麗だな」
「そうだね。砂原くんと見られて僕は幸せだよ」
「……そ、そうか」
なんだか擽ったい。そもそも俺はデートといったものをしたことがないので、こういうのが恋人同士の普通なのかは分からないが、ただ一つ分かるのは、決して嫌ではないと言うことで――この夜の花火大会は、とても楽しかった。
車で帰宅し、俺は浴衣のまま部屋でベッドに座った。すると同じく浴衣の行永が、苦笑した。
「似合うだろうと思ってはいたんだけど、似合いすぎて困るな」
「へ?」
「押し倒したくなる。あ、いいや、なんでもないよ」
「……」
きちんと聞こえていた俺は、羞恥に駆られて瞳を揺らす。
すると行永が歩み寄ってきて、俺の頬に触れた。
「今日、楽しんでもらえたかい?」
「ああ」
それから行永は、指で俺の首の筋をなぞった。背中がゾクリとした。正直毎夜繋がっていたから、それが消失したここ数日で、俺は溜まっていた。だが、シないことになったのだから……そもそも俺が肉体関係を止めようと言ったのだから、行永にシたいなんて言えない。しゃがんだ行永が、上目遣いに俺を見る。
「まだ、僕の気持ちは信じてもらえないかな?」
「……悪い、信じられないけど……でも……な、なぁ、その触り方やめ……ッッッ」
行永が、俺の浴衣の合わせ目から手を入れ、乳首を弾いた。俺は息を詰めつつ仰け反る。すると押し倒された。
「最後まではしないから」
「!」
行永の目は獰猛だった。そしてきっと、俺の目には情欲が宿っていただろう。
「だから待って。なにそれ、どういう事かな? 誰がそんなこと言ったの? ちなみに今日行ったのは風俗じゃないけどね? クラブだよ。若干女の子との座る距離が近かったのは認めるよ、残り香かな」
「……青真くんが言ってたんだから、事実だろ?」
「青真のやつ……あいつは、まったく」
「子供を責めるなよ」
俺が俯くと、強引に行永が俺の顎を持ち上げた。
「誓って僕は、愛人をこの家に連れ込んだことなんてない。妻が亡くなってから、何度か恋人がいて、その相手を連れてきたことはあるけれどね。僕は、外ではともかく、家では本当に好きな相手以外を抱いたりしない。だから僕に迫ってきた過去のハウスキーパー達と揉めて、昌波さんに紹介を頼んだ次第だよ」
つらつらと語ってから、行永がぎゅっと俺を抱きしめた。
「繰り返すけど、僕は砂原くんを恋人だと思ってる。砂原くんもそう思ってくれてると思っていたよ」
「……」
「一番最初に誘った夜、僕は本気できみにそばにいて欲しいと思った。思って、ああ、好きみたいだと思ったから、誘ったんだよ。その夜だって、僕はきみをきちんと愛していた」
「……」
「だけどさっき、きみだって僕を好きだと言ってくれたんだから、もしまだ恋人じゃなかったんだとすれば、僕らは両想いなんだから、今から恋人になって問題は無いよね? お願いだ、出て行くなんて言わないでほしい。僕は、きみがいないとダメだ」
……。
果たしてこの言葉は、信じていいのだろうか?
俺は自分の気持ちには正直だから、確かに告白をした。だが、遊び歩いていた行永の言葉には信憑性がない。信じる根拠もない。
「ねぇ、砂原くん……っ、あのさ、本当に僕は、今、きみ一筋だし、きみと寝て以来きみ以外と寝たこともない。どうしたら信じてくれる?」
俺の不安が伝わっていたのか、切実そうな目をして、ギュッとより強く行永が俺を抱きしめた。
「弱ったな、どうすれば伝わるんだ? とにかく、僕はきみが好きだ。言葉ではなんとでも言えるかもしれないと言われたらそれまでだけど――なんだろうな。ああ、どうしよう。そうだ。じゃあ、こうしよう」
「?」
「砂原くんが信じてくれるまで、僕はきみを抱かない。その代わり、恋人らしいことをいっぱいする」
「へ? たとえば?」
「そうだな、花火大会にでも行こうか」
俺の目を見て、行永が困ったように笑った。果たして花火が恋人らしいのか、俺には分からなかったが、俺は小さく頷いた。
こうして出て行くこともなく、俺は花火大会の日を迎えた。
「ほら、砂原くん。浴衣」
「えっ、これ……買ったのか?」
「うん。きみの浴衣姿が見てみたくてね」
俺を後ろから抱きしめて、優しく行永がいう。近い距離に、俺の心臓は高鳴る。
その後、俺は黄緑色、行永は紺色の浴衣を着て、男二人というのもどうかと思うが、近くの花火大会へと出かけた。曲にあわせて花火が上がる。俺はお好み焼きのパックを手にしながら、空を見上げた。
「綺麗だな」
「そうだね。砂原くんと見られて僕は幸せだよ」
「……そ、そうか」
なんだか擽ったい。そもそも俺はデートといったものをしたことがないので、こういうのが恋人同士の普通なのかは分からないが、ただ一つ分かるのは、決して嫌ではないと言うことで――この夜の花火大会は、とても楽しかった。
車で帰宅し、俺は浴衣のまま部屋でベッドに座った。すると同じく浴衣の行永が、苦笑した。
「似合うだろうと思ってはいたんだけど、似合いすぎて困るな」
「へ?」
「押し倒したくなる。あ、いいや、なんでもないよ」
「……」
きちんと聞こえていた俺は、羞恥に駆られて瞳を揺らす。
すると行永が歩み寄ってきて、俺の頬に触れた。
「今日、楽しんでもらえたかい?」
「ああ」
それから行永は、指で俺の首の筋をなぞった。背中がゾクリとした。正直毎夜繋がっていたから、それが消失したここ数日で、俺は溜まっていた。だが、シないことになったのだから……そもそも俺が肉体関係を止めようと言ったのだから、行永にシたいなんて言えない。しゃがんだ行永が、上目遣いに俺を見る。
「まだ、僕の気持ちは信じてもらえないかな?」
「……悪い、信じられないけど……でも……な、なぁ、その触り方やめ……ッッッ」
行永が、俺の浴衣の合わせ目から手を入れ、乳首を弾いた。俺は息を詰めつつ仰け反る。すると押し倒された。
「最後まではしないから」
「!」
行永の目は獰猛だった。そしてきっと、俺の目には情欲が宿っていただろう。
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