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【四】報告
しおりを挟む「――それで、視察はどうだった?」
翌日、宰相府に本日も予算のための書類を持参していったクレイヴは、扉を開けると同時にそう声をかけられて、宰相閣下を一瞥した。
「さすがは聖職者ですね。宰相閣下と違って、シスター・ロザンヌは類い稀なる人格者のようでした。馬車の中では、貴族達が『怖い』『怖い』と噂していましたが、配下のシスターにも慕われているようでした」
淡々とクレイヴが答えると、宰相閣下がひきつった顔で笑った。それから首を捻る。
「やはり見目麗しい青年には、シスター・ロザンヌも優しくなるのだろうか?」
宰相閣下のそんな呟きは、クレイヴの耳には入らなかった。
アリアには、五人中二位という評価を下されたクレイヴであるが、現在この王宮においては、クレイヴは女性にとても人気があるのは間違いないだろう。外見もさる事ながら、何より実力があり、家柄も良く……性格だけ、少し冷たそうだという見解と、そこがクールで素敵であるという意見があるが、全てが完璧な人間などいない。
「まぁ良い。来週も頼んだぞ」
一応念押ししておこうと、宰相閣下が述べた。半分程度は、断られるかと考えていたので、言いくるめる言葉を探しつつだった。
「ええ」
だが、宰相閣下の予想に反して、あっさりとクレイヴは頷いた。逆に、宰相閣下がそれに驚いた。するとクレイヴが、執務机の上に大量の書類を置きながら、非常に珍しい事に微笑した。
「確かに、宰相閣下が仰る通り、生の声を聞くというのも大切なのかもしれないと思いました」
「……ほう」
「それでは、こちらの書類ですが、ご確認よろしくお願いします」
クレイヴはそう続けてから、踵を返す。思い浮かべていたのは、アリアの事だった。
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