ゼーレの御遣い

猫宮乾

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―― 本編 ――

8:傷つく?(★)

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 それから、平和な現実が戻ってきた。
 平和、一見平和――なんと言えば良いのだろう。
 下界へとラファエル達御遣いが戻り、狂霊獣がいなくなった現在。

 街は騎士団と御遣いを讃える歓喜の声に溢れていた。
 しかしラファエルは不機嫌だった。

 ――ゼーレに会うことができなかったからではない。

 魂ゼーレは、ラファエルが生を受け時には既に、〝いなかった〟のだから。
 何よりも不愉快なのは自身が守護するコールが襲われたことと、そして――……。

「ふ、ァ、や、やめ――……っ!!」

 目を見開きボロボロとルカが涙をこぼす。
 後ろから抱きかかえ、強制的に絶頂へと促しながら、ラフは溜息をついた。
 自分の――愛しい者が、命に関わる、血を吐くほどの戦いを強いられた。

 その事実がラフにとっては面白くなかった。

「ぁ、あ……っ」

 快楽を堪えるように、ルカが唇を噛みしめ、体を震わせる。

「コールを守ってくれたそうですね。まずは、礼を言います」
「ふ、ぁ」
「ですが貴方はご自身の実力を弁えるべきです」
「っ、ふ、ア!!」

 鈴口をぐりぐりと指で刺激され、ルカは背を撓らせた。

「や、やだ、やだやだやだ」
 その指先から、聖職者の体に強い快楽を与える形で聖光力を無理矢理注がれて、喉が震えた。聖光力は、人間の手で作りだした聖水からなどであれば、自然な形で摂取できて、聖職者の体を癒してくれる。しかし御遣いの手から直接与えられるとなれば、その強すぎる力に、体が快楽を訴えるのだ。

「以前、それこそ初めてお会いした時から考えていました。何故貴方は、ご自分の体を大切にしないのです?」
「ッ」

 根本をぎゅっと掴まれ、反射的にルカは左右の手を、ラフの指先へと伸ばした。

「貴方は皆を守って満足なのでしょうね」
「や、やだ、イっ」
「ですが貴方が傷つくことに傷つく者が居ると何故分からないのです?」
「うぁ、あ、嫌だ、イきたい」
「本当にこらえ性がありませんね」

 ラフはそう告げて苦笑した。

 しかしながら実際には、御遣い相手にここまで快楽に堪えることができて――率直に言うならば気が狂わないでいられるのは、ルカぐらいのものである。

「オルカ」
「っ、ぁ」
「……ルカ先生」
「止め――呼ぶな、ンあ」
「私に名を呼ばれるのがいやですか?」
「あ、あぁ、っ、ン――っ」
「私は貴方の名前を呼びたいのですが」
「うぁ、あッ――止め、ぁ」
「そして貴方にも、私の名を呼んで欲しいのですが」
「ん、ぁ……や、っ」

 舌を甘噛みされたルカは、息を飲んだ。
 耳朶を嬲られた後、耳の中へとラフの舌が押し入ってくる。
 ピチャピチャと粘着質な水音が響いた。

 現在は、生徒が皆寮に帰った夜である。10時半を回ったところだ。
 文字盤の時計の長針がもうす11をさそうとしている。

 平時の通りの授業に戻り、いつも通りが戻ってきたと言える一日を終えたルカの部屋に、突然ラファエルが訪れたのである。ルカが入浴を終え、浴室の扉を開けた瞬間、目の前にラフが立っていたのだ。紫色の瞳を見開いたルカは、そのままキスされ、なし崩しに寝台へと連行されて今に至る。
声を聴くだけでも、息づかいが肌に触れるだけでも辛いというのに、キスなどされてはひとたまりもない。

「あ……」

 意識が朦朧としていて、腰に感覚がない。
 その時、ラフがルカの体の位置を変えた。

 ぐったりとラフの肩に顎を預けて、ルカは荒い呼吸をする。ラフの綺麗な白金色の髪が、ルカの頬を擽る。快楽に溶けた紫色の瞳で、ルカは静かにラフを見た。ラフの瞳と視線が交錯する。

「貴方は今誰に何をされているのですか?」
「っ」
「教えて下さい。そうすればイかせて差し上げますよ」
「……ラファエルに」
「ええ」
「弄られて……っ、んフぁ」
「それで?」
「え、あ」
「それで貴方は、どうなっているのですか? どうされたいのですか? どうおもっているのですか?」
「ァ……イきた……」
「違います。『感じすぎておかしくなりそうで、射精以外考えられなくなっていて、イかせて欲しくて』――……御遣いラファエルを愛しているのでしょう?」

 一度言葉を句切ってから、ラフがそう言って曖昧に笑った。

「復唱しなさい。そうすれば、許しましょう」
「あ、あ」
「自分に素直になるべきです」

 余裕がにじみ出るような端正なラフの顔を眺めながら、ルカは静かに瞬いた。
 実際――感じすぎておかしくなりそうなのは間違いない。

 ラフの指先が肌を這う度、尋常ではない快楽が、びりびりと電流のように体をビクつかせる。正直なところ、達したくてしかたがない。だが――……。

「誰が、愛なんて……っ、ぁ……ンあ!!」
「聞こえませんでした。有難く思いなさい――先生。私の名前は?」
「っ、はッ、ラ、ラファエル……さ、様……んぅ」
「ラフで結構ですよ」
「ラフ……ぁ、あ、止め、も、もう」

 ルカの白い太股が小刻みに震える。内股をすりあわせようと無意識に動く彼の体を、しかし意地悪くラファエルが制した。

「イきたいですか?」
「イきた……」
「では、請い願いなさい。入れて欲しいと」
「嫌だ、ッ」

 ただ触れられるだけでも辛いというのに、内部への侵入を果たされれば、最早完全に意識を飛ばすことは目に見えていた。本来であれば、現時点で理性を保っているだけでも奇跡的だという事は、幸か不幸かルカ本人ですら知らない。

「そうですか。では貴方がそう言うまで、その気になるまで、〝お預けですね〟」

 ラフはそう告げ喉で笑ってから、ルカの右の胸に吸い付いた。

「ひッ、ぁ」
「なんです?」
「あ、あ……く、んぅ、やア」

 長い睫の上に、涙が溜まっていく。恍惚とした表情で、ルカが背筋を振るわせた。最早快楽以外の何も考えられなくなる。

「お願い、ねが、あ、ラフ、や、イれて」

 あっさりと理性をとばし陥落したルカの姿に、ラフが微笑する。
 ――しかし本当はどこかで分かっていた。
 いくら悦楽で支配しようとも、制御しようとも、その心を手に入れることはできてはいないのだと。

「んァ――!!」

 深く腰を打ち付け、慣らすこともなく内部へと押し入りながら、何処か一歩退いた理性のもとラフは考えていた。                   
 いやだいやだと言うように首を振るルカのことを抱きしめながら。

「この私が一人間ごときに恋をするなど……」
「や、やっ、ぁ、うあ、動いて、ねぇ、あ、あ、あァ!!」

 しかし涙をボロボロとこぼすルカの頬に口づけながら、ラフは満足していた。 

「〝ゼーレ〟も酷な試練を押し付けてくれたものです」
「や、やぁ!!」

 腰を揺らしながら、ラフは笑った。

「出会わせて下さったことを感謝しなければなりませんね」

 それから絶頂に達したルカが意識を飛ばすまでは、数十分のことだった。




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