10 / 16
―― 本編 ――
10:振り返る(★)
しおりを挟むここのところ過去のことを思い出すことが多いからなのか、一人きりになった教務室で、ぼんやりとルカは机の上に両手を置いていた。ゆるく握った両掌の合間には、十字架がある。
十字架には、様々な思い出がある。思い出なんてものがルカは嫌いだった。けれど問答無用で訪れた新しい季節ーーそれが巡り、おのれにはたくさんの生徒ができた。そんな新しい日々の中で、いつしか忘れそうになり、けれどーーああ、あの忌々しい出来事はそれでも色褪せない。忘却してくれた周囲の優しさに甘えることがためらわれてならない。
それでも〝明日〟はやってくる。
時折自分がどこに立っているのか見失いそうになる。
そんな時、助けてくれるのが生徒たちなのだとルカは思っている。
「今度こそ、僕は負けない」
御遣いの好きになんて、ラファエルの好きになんてさせない。
決意を新たに、ルカは回転椅子を回した。
「!」
そして立ち上がろうとして硬直した。
一体いつの間に入ってきていつからそこにいたのかーー笑みを浮かべたラファエルの姿があったからだ。
「どなたと勝負をしているのですか?」
「っ、ぁ」
「まさか私と勝てるはずもない勝負をするつもりではないでしょう?」
ラフはそう言うとルカの首に手を回し、顔を近づけた。覗き込まれ、唇と唇が触れ合いそうになる。その息遣いを感じるだけでもルカの体は熱くなった。
「ボタンを外しなさい」
「だ、誰が」
「脱がせて欲しいのですか?」
そう言った端正なラフの手が、ルカのローブをはだけ、シャツのボタンにかかる。
プチプチと外され、それからあらわになった鎖骨を撫でられた。
自分とは異なる体温が、ひんやりと首元をなぞって行く。
「止めろ!」
その手を振り払って突き飛ばし、ルカは後退した。椅子が倒れて軋んだ音を立てる。
「っ」
しかし唇を引き結んで息を飲んではいたが、すでにその頬は紅潮していた。
艶を宿した瞳が、悩ましげに歪められている。
じかに肌と肌が触れ合ったせいで、すでに体の中心には熱が灯っていた。
「ーー冗談です、冗談ですよ、今日に限ってはね」
そんなルカの様子に、ラフが苦笑交じりに吐息した。
「え?」
「もうじき、全学科共通の、学年単位の校外学習があるではありませんか」
「え、あ、う、うん」
今だ早鐘を打つ駆動を諌めるように両手を胸に当てながら、垂れてくる汗を実感しつつルカは頷いた。
「次は一学年のみ、最低単位が四人だと人間が決定したと行きいていますが」
「ーー生徒と教員で二、最低二名以上の生徒で構成される班になるから、四人だと決まっているけど……」
「あまり多人数がいて足手まといになっても困るので、お誘いに上がったのです。コールは照れているのか直接エルを誘えないそうで」
「……どういう意味?」
「私とコール、エルと貴方で、班を組みましょう。私がいる限り襲撃など何の問題にもなりませんが、万が一に備えるならばこの学園においては貴方より頼りになる〝人間〟はいない」
「どうして僕があなたなんかとーー」
「それは私情ですね。では返しますが、魔術科の生徒と他の一体誰が班を組むというのですか? それも、時期教皇のコールの誘いを断った相手と」
「それは……」
「私のことが嫌いなのであればそれはそれで結構ですが、職務に私情を挟むのですか?」
いつになく真摯なラファエルの言葉に、俯きながらきつく唇をルカが噛んだ。
「ーー分かりました」
このようにして第一学年の校外学習の班わけの一つが決定した。
「それにしても、本当に生徒には甘いのですね」
「え?」
瞬間、気がつくとルカは、強く腕をひかれ抱きしめられていた。
「あ、あ、あ」
その体温だけで、背筋を快楽が這い上がって行く。
びくりとした後弛緩した様子のルカの、はだけた首元に、ラフが唇を落として強く吸う。
「うン、っ」
白い肌には真っ赤な花びらが散った。その甘い衝撃にくずおれたルカを両腕でだき、ラフもまた座る。そのままするりと下衣の中へと手を差し入れた。
「ひゃッ」
緩慢に陰茎を撫でられた瞬間、ルカの理性は溶けた。
焦点が合わなくなった瞳で、ラフを見ている。
「余程私にさわられたかったようですね」
「……っ、そんなはずが」
「では抵抗なさい。今日は、"仕事"の話し合いに来ただけなのですから」
その言葉にルカは、目に力を込め眉間にシワをよせた。眦からは涙がこぼれる。
「どいて」
「本当に、離れて良いのですか?」
「いいから」
するとあっさりとラフが体を起こした。そして静かにルカを座らせる。
「我慢、できるのですか?」
「っ、うるさい」
「自分で手淫なさるのですか?」
「う、うるさ……」
「前だけで満足できるのですか?」
「……」
「それとも後ろもご自分で?」
そう言うとラフが、ルカの腕を引き正面から抱きしめた。それからら耳元へ唇を落とす。
「手伝って差し上げましょうか?」
「う、あ」
プツン、と。音を立てて、ルカの理性が途切れた。
「や、やぁあ……」
涙が双眸からこぼれ落ちてくる。
「挿れ……う、ッ」
「いいでしょう」
その言葉とほぼ同時にルカの体をうつ伏せにし、下衣を強引に取り去る。
「ああああーー! ぅあああ!」
そしてならすでもなく、ラフが腰を進めた。
その衝撃がどうしようもないほどに気持ちよすぎて、ルカは背をしならせる。
「あ、ああっ、あああ」
それでも無意識に逃れようとするかのようにルカが腰を引く。
ラフはそれを許さないというように、体重をかけてルカの背に顎を置いた。
水音が響くほど、何度も何度も腰をうちつける。
その音に羞恥を煽られるというのに、もう真っ白になったルカの思考には、ただの悦楽しか浮かんでは来ないのだった。
目を覚ますと、仮眠室のベッドの上に横になっていた。
気だるい体で周囲を一瞥すると、サイドテーブルにラファエルが座っていた。
「おや、お目覚めですか」
「……帰って」
「言われるまでもなくそのつもりでしたよ。ですが起きてそうそう、それほど冷たい言葉をかけなくてもいいのではありませんか?」
「……」
「私も傷つくのです、こう見えて」
「傷つく?」
「戯言です。忘れてください」
それだけ言うとラフは部屋を出て行った。
残されたルカはただそれをぼんやりと見送ったのだった。
1
あなたにおすすめの小説
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。
しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです…
本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる