魔王の求める白い冬

猫宮乾

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*** 過去:Ⅱ ***

【042】過去――魔王三日目②

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 そこまで言われると、逆に照れくさくなってしまう。だから僕もカップを傾けて誤魔化した。それから、本題を切り出すことにした。

「あの、ワース」
「はい。私めに何か御用でしょうか?」
「ワースは今、《ソドム》の仕事を全部やってるの?」
「ええ。何せ、貴族連中は、自分本位で、自分が楽しめれば良いという者が圧倒的に多いので、下級の魔族の相手などは、一切致しませんので」
「具体的にワースは、どんなことをしているの?」

 僕が聞くと、ワースが唸った。

「一つは、《ソドム》と人間の土地の境界に、結界を構築しております。現在では狂気に身を堕とし、人間を喰う者もおりますので。現在は兎も角、魔王様が不在の状況で、人間共から勇者を送り込まれるのは、大変な痛手なのです。そのため、なるべくいざこざは減らしたいと考えています。無論、魔王様がお望みとあらば、いつでも食料とすべく捕らえて参りますが」
「結構です。僕は人間を食べたりしない。ええと、他には?」
「二つ目は、共食いの防止をしております。魔王様がいらして下さった以上、じきに落ち着くとは思うので、これはもうすぐ無くなる仕事です」
「……どうして共食いなんて?」
「魔族は、自然に漂う魔力のおかげで、食事や睡眠を取らなくても生きながらえられる体なのです。魔王様が世界の何処にもいないと、その魔力が霧散してしまい、大変少なくなるのです。貴族連中以上の高位の魔族は、自分自身で魔力をそれなりに蓄えておくことが出来るので、問題はございません。私やロビン、シモン、また城に使える者は皆、自我を保っております」
「それって、僕はただ此処にいればいいの?」
「ええ。此処に限らずこの世界にいて頂ければ、魔族は安定いたします」
「なるほど。他には?」

 よく分からなかったが、僕は頷いておくことにして、質問を続けた。

「各地の魔族人数の把握と、街の所在地の確認、店舗の確認、道路の確認、災害箇所の確認などを行っております。私は主に書類で、確認することが多いのですが」

 まさしく僕が聞きたかったのは、その辺りのことである。

「僕に手伝えることはないかな?」
「そんな、陛下のお手を煩わせるなどと……!」
「お手伝いしたいんです」
「陛下……! なんという心の優しさ……私目は、感動いたしました」

 するとワースが泣き出した。なんだか、心苦しい。

「でしたら、バルバトス侯爵・ハレント侯爵・ユーテリー侯爵・ヒルナンド侯爵・アリステッド侯爵の各領地の視察と脱税の指摘及び領民への適切な魔力供給を早急に保証させて下さい。次いで、貴族により整理されていない、一般街五十二カ所の視察を行い、必要な建造物及び、災害による破損箇所、被害人数をご調査願います。特に、先の集中豪雨で被害を受けた一般店舗の経営者と土木作業工事をする魔族の保護や、労働をする魔族の生活必需品の確保もお願いいたします。次いで、低俗な魔族が住む街へ行き、魔力を最大限供給し、衣食住を一時的に保証して下さい。特に食事は、低俗な魔術であれば、体力の回復効果に繋がります。その後、下層の魔族の住む街3つへ向かい、同様のことをお願いいたします。戻られましたら、結果を全て書類に纏め、私目にご提出下さい。私の確認が済みましたら、陛下ご自身の手で、判子を――」

 一気に話したワースさんに、僕はあいた口が塞がらなかった。
 やることが多すぎると思うのだが、気のせいだろうか?
 絶対気のせいではない。

 ただ……ワースさんは、宰相として、今までこれを一人でこなしてきたのだろう。
 そう考えると、手伝わないという選択肢を選ぶことが、躊躇われた。

「分かりました」

 こうして僕は、魔王業を頑張ることにしたのだった。


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