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*** 過去:Ⅲ ***
【059】過去――初めての勇者②
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「そんなのおかしいよ。魔族だろうが人間だろうが、悪は悪だし、正義は正義なのに」
「――魔王様は、死ぬのが恐ろしいですか?」
その時ロビンが言った。
だから僕は率直に頷いた。
「怖いよ」
「ですが此処にいる皆は、魔王様のためにであれば、死ねるのです」
ロビンの言葉に僕は目を瞠った。
「嘘――だよね?」
掠れた僕の声に、だけど誰も答えてくれはしなかった。
玉座の間の扉が開かれたのは、丁度その時の事だった。
「此処まで来るのは、長かったぜ! 魔王! 人間を苦しめた責任、絶対とってもらうからな」
入ってきたのは、勇者パーティだった。
僕はただ、目を見開くしかない。
椅子に座ったまま、僕は、剣を抜いた勇者が斬りかかってくる様を眺めていた。
すると、正面にいたシモンがたち、剣から庇ってくれた。
僕の顔まで、血が跳んでくる。
「死ね」
勇者の言葉に、動けないまま、僕はシモンの体を受け止めた。
シモンの体は徐々に砂へと代わり、宙に溶けるように舞い始める。
「死ぬのはお前だ」
バルがそう言うと、手を振りかぶった。
僕は反射的に声を上げる。
「待って、そんなの駄目だよ! 殺さないで」
するとバルの手が、勇者の首から逸れた。肩口だけを切り裂く。
「優しいフリをするのか? お前のせいでどれだけの人が亡くなったのか、知らないのか!?」
勇者はそう言うと、僕の喉へと、剣を突きつけた。
左右から、バルとロビンが駆け寄ろうとする。
消えゆくシモンの事は、リクスが支えていた。
「お前が、お前さえいなければ――……!」
勇者はそう言うと、僕の心臓を剣で貫いた。
「魔王様!!」
ロビンの叫び声が聞こえた。
僕は傷口に熱を感じながらも、ただぼんやりとしていた。
僕は、人に何かをした事など無いのに。なのに、どうしてこんなに恨まれているんだろう?
次に僕が目を覚ました時、僕は寝台に横たわっていた。
「お目覚めですか?」
どうやらずっと隣の椅子に座っていたらしいロビンに声をかけられた。
「――僕は、不老不死だからね」
「心配いたしました」
「有難うね」
「シモン様の弔いに出て参ります。何かございましたら、早急にお呼び下さい」
「待って。僕にも行かせて」
僕は、重い体を叱咤して、起き上がった。
「ですがまだご静養された方が……」
「だって、僕を庇ってくれたんだよ」
こうして僕は、玉座の間へと戻った。
そこには青緑色の砂がら、宙に浮いていた。
「魔族は、死ぬと砂になるのです」
ロビンの解説に頷きながら、僕はその砂を手で集めた。
「瓶とか、ある?」
僕が尋ねると、すぐにロビンが、コルクで蓋のされた小瓶を持ってきてくれた。
その中に砂を入れてから、僕は振り返った。
「お墓って何処にあるの?」
「ハカですか?」
ロビンは、訳が分からないといった顔で、首を傾げた。
だから僕は、小瓶を大切に抱えてから、外に出る事を決意した。
「この前連れて行ってくれた丘に、また連れて行って」
そしてその丘に、最初の墓標が出来た。
瓶をおさめた石の扉のすぐ側に、木製の十字架を立てる。
「これはなんですか?」
「お墓だよ」
「ハカ?」
「生き残った人達が、故人を偲んだり、自分自身に決着をつける場かな」
そんなやりとりをしてから、僕ら戻ったのだった。
「――魔王様は、死ぬのが恐ろしいですか?」
その時ロビンが言った。
だから僕は率直に頷いた。
「怖いよ」
「ですが此処にいる皆は、魔王様のためにであれば、死ねるのです」
ロビンの言葉に僕は目を瞠った。
「嘘――だよね?」
掠れた僕の声に、だけど誰も答えてくれはしなかった。
玉座の間の扉が開かれたのは、丁度その時の事だった。
「此処まで来るのは、長かったぜ! 魔王! 人間を苦しめた責任、絶対とってもらうからな」
入ってきたのは、勇者パーティだった。
僕はただ、目を見開くしかない。
椅子に座ったまま、僕は、剣を抜いた勇者が斬りかかってくる様を眺めていた。
すると、正面にいたシモンがたち、剣から庇ってくれた。
僕の顔まで、血が跳んでくる。
「死ね」
勇者の言葉に、動けないまま、僕はシモンの体を受け止めた。
シモンの体は徐々に砂へと代わり、宙に溶けるように舞い始める。
「死ぬのはお前だ」
バルがそう言うと、手を振りかぶった。
僕は反射的に声を上げる。
「待って、そんなの駄目だよ! 殺さないで」
するとバルの手が、勇者の首から逸れた。肩口だけを切り裂く。
「優しいフリをするのか? お前のせいでどれだけの人が亡くなったのか、知らないのか!?」
勇者はそう言うと、僕の喉へと、剣を突きつけた。
左右から、バルとロビンが駆け寄ろうとする。
消えゆくシモンの事は、リクスが支えていた。
「お前が、お前さえいなければ――……!」
勇者はそう言うと、僕の心臓を剣で貫いた。
「魔王様!!」
ロビンの叫び声が聞こえた。
僕は傷口に熱を感じながらも、ただぼんやりとしていた。
僕は、人に何かをした事など無いのに。なのに、どうしてこんなに恨まれているんだろう?
次に僕が目を覚ました時、僕は寝台に横たわっていた。
「お目覚めですか?」
どうやらずっと隣の椅子に座っていたらしいロビンに声をかけられた。
「――僕は、不老不死だからね」
「心配いたしました」
「有難うね」
「シモン様の弔いに出て参ります。何かございましたら、早急にお呼び下さい」
「待って。僕にも行かせて」
僕は、重い体を叱咤して、起き上がった。
「ですがまだご静養された方が……」
「だって、僕を庇ってくれたんだよ」
こうして僕は、玉座の間へと戻った。
そこには青緑色の砂がら、宙に浮いていた。
「魔族は、死ぬと砂になるのです」
ロビンの解説に頷きながら、僕はその砂を手で集めた。
「瓶とか、ある?」
僕が尋ねると、すぐにロビンが、コルクで蓋のされた小瓶を持ってきてくれた。
その中に砂を入れてから、僕は振り返った。
「お墓って何処にあるの?」
「ハカですか?」
ロビンは、訳が分からないといった顔で、首を傾げた。
だから僕は、小瓶を大切に抱えてから、外に出る事を決意した。
「この前連れて行ってくれた丘に、また連れて行って」
そしてその丘に、最初の墓標が出来た。
瓶をおさめた石の扉のすぐ側に、木製の十字架を立てる。
「これはなんですか?」
「お墓だよ」
「ハカ?」
「生き残った人達が、故人を偲んだり、自分自身に決着をつける場かな」
そんなやりとりをしてから、僕ら戻ったのだった。
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