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第一章
ゴブリンに転生しました2
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白くて太いウニウニとしたイモムシがボトリと雑に床に落とされる。
口まで運んでくれるような親切さはない。
ドゥゼアは気合を入れて体を動かす。
まだまだ未成熟の体では動くことすら簡単ではない。
だが早く動かないと虫が逃げ出してしまって食事にありつけなくなる。
早く成長し、早く大きくなって、早く動き出さねばゴブ生はあっという間に終わってしまう。
最初ゴブリンに転生した時は気持ち悪くて食えなかった。
けれど食わねば体はいつまでも貧弱なままで狩りも出来ない。
生まれ落ちる地域によって虫の種類も違う。
ドゥゼアは這いずるようにして虫に近づいて1匹を掴んだ。
この虫は知っている。
硬い昆虫類の虫に比べると遥かに食べやすく味もまだマシな方である。
口に虫を放り込んで一気に噛みつぶす。
ブチュリと中味が全部飛び出してきて口いっぱいに広がる。
未だに頭の奥底では拒絶反応があるが生きるためには必要なことなので栄養のためだと飲み込む。
虫は早い者勝ちだ。
他のゴブリンたちはまだ動きが鈍いのでまだまだ虫は残っている。
虫がある限り食べる。
手を伸ばし口に放り込み、何回か咀嚼して飲み込む。
何匹かイモムシを食べてまたイモムシを掴んだけど何となく腹が満ちてしまった。
もったいなけど食べないイモムシをずっと確保しておくのも面倒だ。
ドゥゼアは近くにいた虫を食べられていないゴブリンに余ったイモムシを渡してやる。
笑顔になってイモムシを受け取るがゴブリンが笑ったところで可愛くもない。
そうして日々を過ごす。
他のゴブリンたちも食事のシステムを理解して、体も動けるようになってきたので日々争奪戦が繰り広げられる。
中でもドゥゼアは頭1つ飛び抜けて虫を確保するのが上手い。
中には虫を取れずに弱ってそのまま死んでしまう個体もいた。
「アリ……ガト」
「チッ……いい加減自分で取れよ?」
ドゥゼアが気まぐれにイモムシをあげたゴブリンは争奪戦に負けがちだった。
どうやらメスのゴブリンらしく争奪戦に勝てないこともあって体が貧弱でいつも虫を取れなかった。
最初に助けてしまったからだろうか。
ドゥゼアは毎回食べきれないほど虫を確保するので、気づけばなんかそのゴブリンに虫を分け与えてあげるようになってしまっていた。
一応自分でもなんとかしようとして確保している時もあるのだけど一度差がつき始めると成長の早いゴブリンの中では厳しいものがある。
だいぶ動けるようになってきて奥の部屋では手狭になってきた。
こうなると次の段階に移ることになる。
次の段階は自分での狩りにである。
ここまで来るともう大人のゴブリンと同じような扱いになる。
「好きなものを選べ……」
ここに来てこのゴブ生は当たりの方だとドゥゼアは思った。
ピークを過ぎて老ゴブリンに差しかかったゴブリンに連れ出されて初めて奥の部屋から出て別の部屋に向かった。
そこには武器が雑多に並べられている。
このゴブリンたちはそれなりに長いこと生き残って、その上こうした武器まで集めてある。
大人になったゴブリンたちに武器が支給されるゴブリンのコミュニティは多くない。
そんなに武器も多くはないのでサッと見回して確認する。
質の良い武器は望めない。
多少良いものは大人のゴブリンたちが持っていってしまっている。
ここにあるのはほとんど切れ味などなさそうな錆び付いた武器ばかり。
あるだけマシだが少し相手が強くなるとあっという間に役に立たなくなる。
「あれは……」
その中で見つけた。
一本のナイフに目をつけた。
乱雑に地面に転がっているがサビもなく綺麗な刃をしている。
うっすらと魔力を感じられ、この中にはふさわしくないほどの品質のナイフであることが分かった。
他のゴブリンたちは思い思いにロングソードや槍を手に取る。
ただこうした武器は罠である。
リーチも短いゴブリンがそれを補おうとすると悪くないように思えるのだが同時に非力であるために大きな武器はマトモに扱えないのだ。
槍はともかくロングソードなど振り回されることはあっても、振り回すことなどできやしないのである。
威力の高い武器はまだまだ扱えない。
だから取り回しのしやすいナイフは今の力で扱うのにも適している。
その中で質が良いものがあるなら他に選ぶものなどない。
「ギヒッ!」
ドゥゼアがナイフに手を伸ばした。
その瞬間横から手が伸びてきてドゥゼアが狙っていたナイフを奪い取った。
見るといやらしく笑うゴブリンがいる。
いつもドゥゼアと虫の取り合いをしているオスのゴブリンだ。
ドゥゼアに対抗心を燃やしてやる必要もないのにドゥゼアと競り合ってくる。
こいつは武器ではなくドゥゼアの行動を見ていた。
ドゥゼアがナイフに目をつけたのを察してそれを横取りしたのだ。
「おい……」
「ギヒッ、オレノダ!」
気持ち悪くケタケタと笑うゴブリン。
今すぐぶっ殺してやりたいところだけど一度だけ我慢して老ゴブリンの方を見る。
「欲しいなら取り合えばいい」
弱肉強食。
強い者が偉く、強い者が全てを手にできる魔物の世界。
当然の理屈で先に手を出したからそいつのものというわけでもない。
奪い合う許可が出た。
そしてコイツはドゥゼアを怒らせた。
口まで運んでくれるような親切さはない。
ドゥゼアは気合を入れて体を動かす。
まだまだ未成熟の体では動くことすら簡単ではない。
だが早く動かないと虫が逃げ出してしまって食事にありつけなくなる。
早く成長し、早く大きくなって、早く動き出さねばゴブ生はあっという間に終わってしまう。
最初ゴブリンに転生した時は気持ち悪くて食えなかった。
けれど食わねば体はいつまでも貧弱なままで狩りも出来ない。
生まれ落ちる地域によって虫の種類も違う。
ドゥゼアは這いずるようにして虫に近づいて1匹を掴んだ。
この虫は知っている。
硬い昆虫類の虫に比べると遥かに食べやすく味もまだマシな方である。
口に虫を放り込んで一気に噛みつぶす。
ブチュリと中味が全部飛び出してきて口いっぱいに広がる。
未だに頭の奥底では拒絶反応があるが生きるためには必要なことなので栄養のためだと飲み込む。
虫は早い者勝ちだ。
他のゴブリンたちはまだ動きが鈍いのでまだまだ虫は残っている。
虫がある限り食べる。
手を伸ばし口に放り込み、何回か咀嚼して飲み込む。
何匹かイモムシを食べてまたイモムシを掴んだけど何となく腹が満ちてしまった。
もったいなけど食べないイモムシをずっと確保しておくのも面倒だ。
ドゥゼアは近くにいた虫を食べられていないゴブリンに余ったイモムシを渡してやる。
笑顔になってイモムシを受け取るがゴブリンが笑ったところで可愛くもない。
そうして日々を過ごす。
他のゴブリンたちも食事のシステムを理解して、体も動けるようになってきたので日々争奪戦が繰り広げられる。
中でもドゥゼアは頭1つ飛び抜けて虫を確保するのが上手い。
中には虫を取れずに弱ってそのまま死んでしまう個体もいた。
「アリ……ガト」
「チッ……いい加減自分で取れよ?」
ドゥゼアが気まぐれにイモムシをあげたゴブリンは争奪戦に負けがちだった。
どうやらメスのゴブリンらしく争奪戦に勝てないこともあって体が貧弱でいつも虫を取れなかった。
最初に助けてしまったからだろうか。
ドゥゼアは毎回食べきれないほど虫を確保するので、気づけばなんかそのゴブリンに虫を分け与えてあげるようになってしまっていた。
一応自分でもなんとかしようとして確保している時もあるのだけど一度差がつき始めると成長の早いゴブリンの中では厳しいものがある。
だいぶ動けるようになってきて奥の部屋では手狭になってきた。
こうなると次の段階に移ることになる。
次の段階は自分での狩りにである。
ここまで来るともう大人のゴブリンと同じような扱いになる。
「好きなものを選べ……」
ここに来てこのゴブ生は当たりの方だとドゥゼアは思った。
ピークを過ぎて老ゴブリンに差しかかったゴブリンに連れ出されて初めて奥の部屋から出て別の部屋に向かった。
そこには武器が雑多に並べられている。
このゴブリンたちはそれなりに長いこと生き残って、その上こうした武器まで集めてある。
大人になったゴブリンたちに武器が支給されるゴブリンのコミュニティは多くない。
そんなに武器も多くはないのでサッと見回して確認する。
質の良い武器は望めない。
多少良いものは大人のゴブリンたちが持っていってしまっている。
ここにあるのはほとんど切れ味などなさそうな錆び付いた武器ばかり。
あるだけマシだが少し相手が強くなるとあっという間に役に立たなくなる。
「あれは……」
その中で見つけた。
一本のナイフに目をつけた。
乱雑に地面に転がっているがサビもなく綺麗な刃をしている。
うっすらと魔力を感じられ、この中にはふさわしくないほどの品質のナイフであることが分かった。
他のゴブリンたちは思い思いにロングソードや槍を手に取る。
ただこうした武器は罠である。
リーチも短いゴブリンがそれを補おうとすると悪くないように思えるのだが同時に非力であるために大きな武器はマトモに扱えないのだ。
槍はともかくロングソードなど振り回されることはあっても、振り回すことなどできやしないのである。
威力の高い武器はまだまだ扱えない。
だから取り回しのしやすいナイフは今の力で扱うのにも適している。
その中で質が良いものがあるなら他に選ぶものなどない。
「ギヒッ!」
ドゥゼアがナイフに手を伸ばした。
その瞬間横から手が伸びてきてドゥゼアが狙っていたナイフを奪い取った。
見るといやらしく笑うゴブリンがいる。
いつもドゥゼアと虫の取り合いをしているオスのゴブリンだ。
ドゥゼアに対抗心を燃やしてやる必要もないのにドゥゼアと競り合ってくる。
こいつは武器ではなくドゥゼアの行動を見ていた。
ドゥゼアがナイフに目をつけたのを察してそれを横取りしたのだ。
「おい……」
「ギヒッ、オレノダ!」
気持ち悪くケタケタと笑うゴブリン。
今すぐぶっ殺してやりたいところだけど一度だけ我慢して老ゴブリンの方を見る。
「欲しいなら取り合えばいい」
弱肉強食。
強い者が偉く、強い者が全てを手にできる魔物の世界。
当然の理屈で先に手を出したからそいつのものというわけでもない。
奪い合う許可が出た。
そしてコイツはドゥゼアを怒らせた。
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