302 / 550
第四章
次の旅へ3
しおりを挟む
「ラスト、お前は真っ直ぐに育ってくれた。だから今度はそのまま大きく育って欲しいのだ。リュード君とルフォン君、君たちは強く、柔軟でありながら成長の途中にいる。ラストにもきっと良い刺激になる。どうか、我が娘の成長に一役買ってくれないか」
ベギーオはあまりにも視野が狭くなってしまった。
王座に固執して周りが見えなくなった結果、暗い考えも平気で持つようになってしまった。
ラストにはもっと世界を見て、自由に物事を考えてもらいたい。
その過程で王への自覚や心構えが出来てくればよいなとは思うが、そうではない道を選ぶこともヴァンはよいのではないかと考えていた。
「……大領主としての仕事はどうするんですか?」
一瞬ニヤつきかけた顔を引き締めてラストが問う。
現在もラストに与えられていた領地は緊急措置として直轄地になっている。
けれどラストは大領主の座を剥奪されたわけでもなく、未だに大領主である。
「こたびバロワも大領主の座から退くことになった。ラストが持つ領地以外は大領主の座が空席となってしまう。しかし次から次へと任せられるほど大領主の座も軽くはないし、未だにベギーオやプジャンの領地では混乱が続いている。
そしてさらに事の真相が混乱を避けるために伏せられているためにベギーオの母方の一族が口を出してきていてな。このままでは何をしでかすか分からない」
この期に及んでラストに手を出すことはないと思うけれど、ベギーオの復讐だとラストに手を出してる可能性は排除できない。
領地問題もベギーオの一族についても時間が必要となる。
ラストが国内で大領主として仕事をするより一度国を離れた方がさまざまな事でいいだろうとヴァンは考えていた。
「大領主は剥奪はしないがしばらくは大領主としての仕事は休んでもらう。その間に今一度制度も見直すつもりだ」
バロワの出自についても公表せねばならない。
モノランの件にも手をつけなきゃいけなくてやることはまだまだ山のようにある。
ラストには世界を見てもらういい機会だし、ヴァンとしてはラストのために国内の色々なところを見直すいい機会なのである。
外の世界が安全とは言えないが、経験が積める分外の世界にいる方がよっぽどいい。
「正直男の側に置いておくことは気が進まないが……」
リュードは実力もあって、大人の試練で非常に多くのことに貢献してきたので信頼もしていい。
しかしながら男女的なことを考えてしまうと果たして信頼してもよいものかとヴァンは悩む。
滅多に人を褒めない堅物のコルトンが誉めていた人物を疑いたくはないのだけど、やはり男親としての心配はある。
「これは国としての頼みではなく、私個人の頼みだ」
立ち上がってゆっくりとリュードに頭を下げるヴァン。
こんな風に頭を下げるのは子供の頃に母に怒られた時ぐらいのものだった
「俺はこのお願い聞き受けても大丈夫だ。二人はどう思う?」
一緒に旅することについてはよほど変なやつでもないなら旅してもいいと思う
ただしそれはちゃんと本人が希望していることが前提だ。
ヴァンからのお願いではあるがラストにとっては寝耳に水な話であったようだし意思確認は必要である。
「私は……二人と旅したい! ……かな?」
まず答えたのはラストだった。
ヴァンの話を聞きながら思わずニヤニヤとしてしまっていた。
大領主の仕事も大切であるけれどリュードとルフォンと旅ができたらどれだけ幸せなことかと思うのだ。
行けるなら、行きたいというのがラストの本音である。
「……うん、私もラストならいいかな」
「ほ、本当!?」
「でも言っておくよ」
「な、何でしょうか!」
「第一夫人は、私だよ?」
「へっ?」
これは暗にルフォンがラストのことを認めたと言ってもよかった。
ラストの顔が真っ赤になっていく。
第一夫人は私ということは第二夫人ならいいともとらえられる。
つまりはラストがリュードのそばにいることをルフォンは許容するということなのだ。
「べ、別にそんなんじゃないって!」
「もう! 分かってるよ!」
「うぅ~!」
リュードには言ってなくてもルフォンにはもう知られてしまっている思いがある。
旅を共にするということはそうしたちょっと男女的なこともやるのだろうかなんてラストは少しだけ考えてしまった。
「お父さんは認めませんからね!」
ラストのリュードを見る目がどうにもおかしい。
頼んだ手前撤回することも出来ないけれどヴァンの中にある不安がより一層大きくなってしまった。
ということで、ドワーフの国であるドワガルにはリュードとルフォン、そしてラストの三人で向かうことになったのであった。
ベギーオはあまりにも視野が狭くなってしまった。
王座に固執して周りが見えなくなった結果、暗い考えも平気で持つようになってしまった。
ラストにはもっと世界を見て、自由に物事を考えてもらいたい。
その過程で王への自覚や心構えが出来てくればよいなとは思うが、そうではない道を選ぶこともヴァンはよいのではないかと考えていた。
「……大領主としての仕事はどうするんですか?」
一瞬ニヤつきかけた顔を引き締めてラストが問う。
現在もラストに与えられていた領地は緊急措置として直轄地になっている。
けれどラストは大領主の座を剥奪されたわけでもなく、未だに大領主である。
「こたびバロワも大領主の座から退くことになった。ラストが持つ領地以外は大領主の座が空席となってしまう。しかし次から次へと任せられるほど大領主の座も軽くはないし、未だにベギーオやプジャンの領地では混乱が続いている。
そしてさらに事の真相が混乱を避けるために伏せられているためにベギーオの母方の一族が口を出してきていてな。このままでは何をしでかすか分からない」
この期に及んでラストに手を出すことはないと思うけれど、ベギーオの復讐だとラストに手を出してる可能性は排除できない。
領地問題もベギーオの一族についても時間が必要となる。
ラストが国内で大領主として仕事をするより一度国を離れた方がさまざまな事でいいだろうとヴァンは考えていた。
「大領主は剥奪はしないがしばらくは大領主としての仕事は休んでもらう。その間に今一度制度も見直すつもりだ」
バロワの出自についても公表せねばならない。
モノランの件にも手をつけなきゃいけなくてやることはまだまだ山のようにある。
ラストには世界を見てもらういい機会だし、ヴァンとしてはラストのために国内の色々なところを見直すいい機会なのである。
外の世界が安全とは言えないが、経験が積める分外の世界にいる方がよっぽどいい。
「正直男の側に置いておくことは気が進まないが……」
リュードは実力もあって、大人の試練で非常に多くのことに貢献してきたので信頼もしていい。
しかしながら男女的なことを考えてしまうと果たして信頼してもよいものかとヴァンは悩む。
滅多に人を褒めない堅物のコルトンが誉めていた人物を疑いたくはないのだけど、やはり男親としての心配はある。
「これは国としての頼みではなく、私個人の頼みだ」
立ち上がってゆっくりとリュードに頭を下げるヴァン。
こんな風に頭を下げるのは子供の頃に母に怒られた時ぐらいのものだった
「俺はこのお願い聞き受けても大丈夫だ。二人はどう思う?」
一緒に旅することについてはよほど変なやつでもないなら旅してもいいと思う
ただしそれはちゃんと本人が希望していることが前提だ。
ヴァンからのお願いではあるがラストにとっては寝耳に水な話であったようだし意思確認は必要である。
「私は……二人と旅したい! ……かな?」
まず答えたのはラストだった。
ヴァンの話を聞きながら思わずニヤニヤとしてしまっていた。
大領主の仕事も大切であるけれどリュードとルフォンと旅ができたらどれだけ幸せなことかと思うのだ。
行けるなら、行きたいというのがラストの本音である。
「……うん、私もラストならいいかな」
「ほ、本当!?」
「でも言っておくよ」
「な、何でしょうか!」
「第一夫人は、私だよ?」
「へっ?」
これは暗にルフォンがラストのことを認めたと言ってもよかった。
ラストの顔が真っ赤になっていく。
第一夫人は私ということは第二夫人ならいいともとらえられる。
つまりはラストがリュードのそばにいることをルフォンは許容するということなのだ。
「べ、別にそんなんじゃないって!」
「もう! 分かってるよ!」
「うぅ~!」
リュードには言ってなくてもルフォンにはもう知られてしまっている思いがある。
旅を共にするということはそうしたちょっと男女的なこともやるのだろうかなんてラストは少しだけ考えてしまった。
「お父さんは認めませんからね!」
ラストのリュードを見る目がどうにもおかしい。
頼んだ手前撤回することも出来ないけれどヴァンの中にある不安がより一層大きくなってしまった。
ということで、ドワーフの国であるドワガルにはリュードとルフォン、そしてラストの三人で向かうことになったのであった。
11
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
国を追放された魔導士の俺。他国の王女から軍師になってくれと頼まれたから、伝説級の女暗殺者と女騎士を仲間にして国を救います。
グミ食べたい
ファンタジー
かつて「緑の公国」で英雄と称された若き魔導士キッド。しかし、権謀術数渦巻く宮廷の陰謀により、彼はすべてを奪われ、国を追放されることとなる。それから二年――彼は山奥に身を潜め、己の才を封じて静かに生きていた。
だが、その平穏は、一人の少女の訪れによって破られる。
「キッド様、どうかそのお力で我が国を救ってください!」
現れたのは、「紺の王国」の若き王女ルルー。迫りくる滅亡の危機に抗うため、彼女は最後の希望としてキッドを頼り、軍師としての助力を求めてきたのだった。
かつて忠誠を誓った国に裏切られ、すべてを失ったキッドは、王族や貴族の争いに関わることを拒む。しかし、何度断られても諦めず、必死に懇願するルルーの純粋な信念と覚悟が、彼の凍りついた時間を再び動かしていく。
――俺にはまだ、戦う理由があるのかもしれない。
やがてキッドは決意する。軍師として戦場に舞い戻り、知略と魔法を尽くして、この小さな王女を救うことを。
だが、「紺の王国」は周囲を強大な国家に囲まれた小国。隣国「紫の王国」は侵略の機をうかがい、かつてキッドを追放した「緑の公国」は彼を取り戻そうと画策する。そして、最大の脅威は、圧倒的な軍事力を誇る「黒の帝国」。その影はすでに、紺の王国の目前に迫っていた。
絶望的な状況の中、キッドはかつて敵として刃を交えた伝説の女暗殺者、共に戦った誇り高き女騎士、そして王女ルルーの力を借りて、立ち向かう。
兵力差は歴然、それでも彼は諦めない。知力と魔法を武器に、わずかな希望を手繰り寄せていく。
これは、戦場を駆ける軍師と、彼を支える三人の女性たちが織りなす壮絶な戦記。
覇権を争う群雄割拠の世界で、仲間と共に生き抜く物語。
命を賭けた戦いの果てに、キッドが選ぶ未来とは――?
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる