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元凶:侵すもの

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 エゼキエラ修道院は生まれ変わった。北端に位置する隠れ里は、ある冬を越えて愛欲の坩堝へと禍々しい花を咲かせる。
 「あ、あっ……!そこ、奥……っ」
 「孕めっ……‼︎今年こそ君を領地に連れて帰る‼︎受け止めろ‼︎」
 「ひンッ!ひぅうっ……‼︎」
 美しい自然に囲まれた禁欲の城を内から嬲るように、毎年冬になると王都からアルファの兵士が訪れる。厳寒の季節を通して修道士は番った相手と行為に耽るのだ。
 信徒が子を授かることを祝福と呼ぶ。
 経典は地獄の炎で塵とされ、聖像は悉く打ち壊された。祀るものがすげ替わったのだから当然だ。
 内装は黒を基調としたものに変えられ、修道士の宿舎には薄暗く透けた天蓋の装飾が為された。清らかさの欠片もない、まるで娼館のような寝台中心の間取り。
 石造の回廊を、黒衣を纏った修道院長が練り歩く。
「今年祝福を受けるのはどの番いかな?神に祝福された者たちには十月の休暇を与える。子を増やし、またこの城で愛し合い、信徒を増やすのだ」
 大広間の壁面には祝福を授かった修道士の名が天使の絵とともに彫り込まれている。腹を大きくした愛らしい顔の器たち。マルゴ、アレク、ファティナ。ロイ、フランク、ダグ、キーリ……。節くれだった戦士の指が金の装飾文字をなぞった。出産を番いの自治領で過ごした彼らは、またこの城へ呼び戻される手筈となっている。修道士は貴重な生き餌だ。絶やしてはならない。子供を連れて戻らせ、またその子もここで番わせなければ。清らかな魂を労せずに確保することができて、実に素晴らしい仕組みだ。破戒の城は栄えるだろう。
 ルドルフは現在、尖塔に監禁した前修道院長の代理を兼務している。ノイエの強情にも困ったものだ。未だ信仰を捨てきれないらしい。

 エゼキエラの守護は既にない。
 凶悪な淫魔による支配は餌の絶えない限り、数百年間続くだろう。うまくやれば永遠の根城を築くことだってできる。

 「……ここはもう魔物の城。愛しているよ、奴僕たち」

 人間の甘い悲鳴に恍惚としながら、それは静かに頬を緩めた。
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