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饗宴:復活祭

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 礼拝堂に嬌声が響き渡る。
 多くの修道士が兵士に腰を支えられ、或いは腕に抱かれたまま石造りの広間に集められていた。兵士たちは皆己の番いをしっかりと拘束して長椅子に腰を降ろす。数名正気を取り戻して暴れる修道士がいたが、項を再び噛まれてしまえばたちまち抵抗は弱くなる。強制的な集団ヒートをに巻き込まれたため、修道士は誰もが息を荒くし兵士にもたれて、発情の苦しみに耐えていた。
 「くる、し……っあん、さわんな!ぁ、ぅ~っ!」
 「ねえもっと……なんで、やめないで……‼︎もっといっぱいしよ……?」
 「ン……、は、ぅ……っ!はぁーっ!ひゅ、あぅ……」
 修道服の上から体をまさぐられて力無く抵抗する年嵩の修道士、色に溺れて行為の続きを強請る少年修道士、ぐったりと消耗した体を番いにもたれかける力自慢の修道士。
 累々と晒される信徒の醜態に、しかしエゼキエラの守護は与えられない。やがて全ての修道士が番いを伴って礼拝堂に入ると、広間の大扉は固く閉められてしまった。

 「やあ、集まったね。準備は整った。院長殿の快諾も得られたし、そろそろ始めるとしようか」
 修道士用の長椅子に集った配下を前にして、赤毛の男が前へ進み出た。王国の軍服に身を包み、貫禄のある声で場を支配する。先ほどまで性欲に目を血走らせていた兵士達は、一瞬にして赤毛の部隊長へと視線を集中させた。兵士の瞳が不気味に赤く光っている。
 部隊長であるルドルフの隣には息も絶え絶えのノイエ修道院長が身を寄せていた。
 「ノイエ院長様……っ‼︎」
 数名の修道士が体を起こそうとして拘束される。ふらふらと足下のおぼつかない修道院長は、赤毛の男に腰を抱かれてやっと立っている様子だ。庇うように部隊長がよく通る声を響かせた。
 「修道院長との話し合いは済んだ。私たちアルファ部隊は冬の間、この修道院で神託の通り番いを探す。その対価として修道士諸君には、発情期の負担を軽減して差し上げることになった」
 有無を言わさぬ宣誓が礼拝堂に響く。修道士たちの当惑した表情が壇上へと向けられた。どういうことだろう?この蛮族たちは噂に聞く特殊部隊なのか?神託とは一体何のことだ。
 「ぃヒぁあっ!ン、ァうっ、は、はぁう……!ぁああああんっ‼︎」
 場違いな嬌声が空気を裂いた。皆が目を向けると、巌のような体躯の老戦士が背面座位で修道士を犯している。部隊長が困った声で男を諫めた。
 「叔父上!話の途中ではありませんか。」
 「すまんな。しかし儂の新妻は我慢できない様子だ。すっかり魔羅の味を覚えたらしいわ」
 眼鏡をかけた長髪の修道士が膝の上で軽々と揺すぶられるたび、甘やかな嬌声が礼拝堂に響き渡る。呼応するように、周囲の修道士達も頬を染めて体を抱きしめ、煽られる欲に抗おうとしていた。
 「皆つらいだろう。発情期とは理不尽なものだ。オメガにもアルファにも、番いの不在は等しく苦しみでしかない……。ノイエ、前へ出なさい」
 「はい……」
 ルドルフに手を引かれ、ノイエ修道院長が皆の前へ進み出る。祭壇に手をついて、美貌の男は胸元から一つの装飾品を取りだした。
 祭壇に置かれた銀の装飾品は、エゼキエラの印章を模した鋳物である。中央に大粒のルビーが埋め込まれており、魔を退けるシンボルとして代々伝えられてきたものだ。ノイエの差し出した銀細工を指でなぞり、ルドルフは宣誓を要求する。
 「いい子だね……。エゼキエラ当代の長よ。神の前に宣誓を……。『私たちを受け入れる』と、ここで宣言しなさい
 「ぁ……、は、ぃ……」
 「神の家エゼキエラは。私たちを、」
 「あ、……貴方がたを……」
 「受け入れるか?」
 その時、ノイエの視界に赤い光がいくつも映った。
反射的に白い手がルドルフを打ち据えようとして、呆気なく受け止められる。正気に戻ったノイエはことの異常さに叫びだそうとしたが、部隊長に唇を奪われ執拗に言葉を奪われてしまった。
 「ン、んぐっ!ひゃめ、んぅっ‼︎ンゃ、ふ……っ!むぅ、~~~ッ‼︎」
 修道士を犯し続けていた副隊長が驚き、愉しげに笑う。
 「……驚いた。流石は院長の地位に就いておるというわけだ……。どうする我が甥ルドルフよ。もう一度仕込み直すか?」
 赤毛の甥御は面倒くさそうに、口を塞がれ藻掻くノイエを見た。しかしそれはすぐに、面白そうな玩具を見る目つきに変わる。
 「それには及びませんよ。……なあノイエ。私の目を見てごらん。お前の大好きなご主人様だ。ヘーゼルの瞳が美しかったろう?お前に捨てられたと勘違いして、一度は自害し損なった可哀想なルドルフさ。……今はもう俺の体だがね」
 ノイエの顎を掴みあげ、宙づりにした男は不気味に赤く染まった瞳を片方空いた手で塞ぐ。ぱ、と手が外されたそれは、泣き出しそうに歪んだヘーゼルイエローに変わっていた。悪魔に囚われた主人の一端を前にして、修道院長は宙づりのまま両足を暴れさせる。
 「ンゥウッ‼︎ぐっ、ぅうッ……‼︎」
 「お前が宣誓をしなければ、どのみち計画はご破算だ。精々オメガ共を貪り喰って、この体も用済みだなぁあ」
 最早本性を隠さない赤い目の悪魔が、ノイエを床に放り捨てて親指の爪で宿主の首を切り取りにかかった。ぶし、と勢い良く血が噴き出す。あと薄皮一枚で頸動脈に至るその時、ノイエの声が礼拝堂に響いた。
 「や……っやめろ‼︎やめてくれ……っ‼︎受け入れる!『貴様らを受け入れる』からっ‼︎」

 宣言した瞬間、礼拝堂を満たす空気が変わった。
 清廉な冬の空気は酷く澱み、甘く煙る瘴気に喉が詰まる。薄暗い礼拝堂で兵士たちの瞳はいっそう赤々と燃え、蝋燭の火が不自然に大きく揺らめいた。
 霞む意識を必死にたぐり寄せ、這いつくばったノイエが赤い目の悪魔を睨み付ける。
 「か、必ずお前を……っ‼︎ルドルフ様の中から叩きだしてやる‼︎必ずだ‼︎」
 ルドルフの内側で赤目が嘲笑う。恍惚に逐情してしまいそうだ。なんと人間は愚かなのだろう。美しい愛を踏みにじるのはどうしてこう心地よいのだろう……!
 「聞いたか皆の者我が隊に栄光あれ‼︎神の意志の下、番い合うことが許されたのだ‼︎」
 赤毛の美丈夫が高らかに宣言した。発情期に苦しむ修道士達は、礼拝堂のあちこちで快哉に叫ぶ兵士と交わいだす。そこにあるのは苦しみではなく、堕落した欲が渦を巻くばかりであった。覆い被さるむくつけき兵士たちに縋って、修道士達の腰が揺らめく。
 「ぁぁあっ」
 「気持ちぃい……っ!これぇっ‼︎すげえっ」
 「奥が……っあちいよぉ……っ!」
 「ついて、奥かいてぇえッァん!あんっ‼︎」
 老いも若きも解禁された欲に酔い、精の熱さに溺れていた。静謐な礼拝堂は見る影もなく白濁にまみれ続ける。

 胸ぐらを掴みあげられたノイエは、背中をしたたかに祭壇へと押しつけられた。腹は空腹に啼いているが、番った男は思い人の皮を被った悪魔だ。悔し涙を流して眦を吊り上げた。
 「いい目だ。美人な堅物をいただくのは毎度たまらないねえ」
 「ふ、ふざけるな……っ‼︎ぜったひに、きさま、など……‼︎」
 ルドルフの鋭利な指先が、なぞるだけで高貴な修道服を切り裂いていく。白磁の肌に朱色の線がにじみ、祭壇の上に体毛の薄い肉体が浮かび上がった。嗜虐心をそそる光景に、ルドルフは軍服をくつろげていきり立つ肉棒をしごき出した。
 「くそっ‼︎やめろ‼︎ここをどこだと心得ている⁉︎」
 「礼拝堂だよなあ。今し方お前が招いてくれたじゃないか」
 「や、ゃめっ‼︎ぃやだ、そんなぁ」
 ぐつ、と亀頭を後孔に押し当てると、バターを裂くように抵抗なく肉棒が収まった。否応ない抽挿が始まり、必死に胸板を押し返す力は弱まっていく。えげつないかり首にこそがれる腸壁へ、気が可笑しくなるほどの快楽が刷り込まれる。
ずっちゅぐちゅんっ‼︎
 「ひや、ぁあ~~ッ‼︎くそ、くそぉ放れろ、放れろよぉ……っ」
 「悲しいこと言うなってニーエちゃん。ホラ、愛しのルディが泣いてるぜ?」
 「ひ、ひっぐ……っぅ‼︎ぅう……」
 ずんずんと腰を送り込まれながら、ノイエは自らを犯す相手を見た。ルドルフの赤目が片方ヘーゼルに戻り、滔々と涙を流している。
 「ぁ、……るど、るふ様……?ンぁんっ」
 醜悪に邪淫を貪る嗤い顔の中で、片目だけが記憶の通りだった。険の抜けたノイエの目からも、一筋の涙が零れ落ちる。呆けた隙を突いて、赤目は後ろ手で体を支えていたノイエを抱き上げた。駅弁の姿勢で力強く腸の奥を嬲っていく。
 「ゃんっ、ぁ、ぁあっ……。るでぃ、すみません、るでぃっ……っ‼︎」
 網膜越しに話しかけるように、ノイエはルドルフの首へ腕を巻き付けた。切り刻まれて半裸の修道院長は、深々と犯す突きに合わせて喘ぎを漏らす。男の頭を胸にかき抱いて、懺悔に似た愛を囁いた。
 「ルディ、愛してます……‼︎地獄の果てまでお供しますから……!」
 「熱烈だねえ、嬉しいなあ!」
 「ひぁっ、違う、貴様じゃないぃっ!……い、いつか……貴様を……っ!ァう、ぁあっ‼︎」
 「そろそろまとめてイっちまえ!お前らは永遠に俺のものだ……っ‼︎」
 容赦無い突き上げに甘く震える腸壁が余さず捏ねあげられる。昂ぶる性感に気が遠くなった。どくんどくんと、血管の脈動まで伝わってきて、竿を丁寧に締め付けてしまう。
 放埒は無慈悲にも結腸奥で行われた。
 「ぃぁあっゃぅっ‼︎ァ、ひぃいいやぁ、やーっ!」
 「ぐ……っふぅーっ……!ふっ……‼︎」
 「はなし…はなひて……っぁ、ぁ……」
 アルファの射精は幾度にも分けて奥を焦がす。精液の奔流を腸壁が甘んじて受けるたび、ノイエは身を捩らせてオメガの悦びに震えた。亀頭球が嵌め込まれたアナルリングは、健気に広がって番いの雄をしゃぶり続けている。淫らがましい腸液が双丘を伝って床に滴り落ちた。
 小さく喘ぎを漏らす頬に、ルドルフが口づける。
 「まだまだ冬は長いんだ。暫く楽しませてもらおうな」
 通ってきた地下道には、王都から寄越した食料を山と積んだ荷車がいくつも置いてある。追って必要なものは届けさせる手筈となっているので、飢えを心配せず修道士たちを犯しぬくことが可能だ。
 性欲旺盛な兵士たちが己の番いを念入りに種付けする光景を眺め、赤い目の悪魔が笑う。

 喘ぎ狂う熱狂は扉にせき止められ、そこには白濁とした地獄が釜を開いていた。
 ひどい吹雪は、まだ止まない。
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