26 / 68
抱っこしてほしい
しおりを挟む
一方、弦人はとりあえず、ハナの部屋へ、ポワポワに酔いながらイヤイヤしているハナを連れてきた。
部屋には市原が待機していたが、酔っ払ったハナを見て面倒臭そうな顔をした。
「この状況はなんでしょうか?ずいぶん出来上がってるようですが」
「どうしよう市原。ハナちゃん俺とセックスしたいみたい」
弦人がハナを優しく床に下ろしながら言った。
「違うもん。セックスしたいわけじゃないもん」
ハナはイヤイヤと首を振る。
「社長、違うそうですが」
「あれ?おかしいな」
弦人は首を傾げてハナにたずねた。
「ハナちゃん?教えて?なんでさっきあんな事言ったの?」
「あんな事?」
ハナはボンヤリと弦人を見つめた。
「そう、俺があの日以来抱いていないから怒ってると思ってたんでしょ?」
「怒ってるでしょ?」
ハナは小首を傾げて、弦人を上目遣いで睨んでくる。
「私が、あの日、『隼ならやめてくれた。隼の代わりなのに』って言ったから怒ったんでしょ?」
ハナの言葉に、弦人は思わず言葉を失った。
怒ってはないない。ただ、ショックはショックだった。しかし……
「ハナちゃん、気にしてくれてたんだ」
「さすがに酷かったと思って。ごめんなさい」
ハナは素直に深々と頭を下げた。
「怒ってはないよ。そりゃ少し気にはしちゃったけど。でも怒ってない」
弦人がキッパリ言うと、ハナは頬をプクッと膨らませた。
「じゃあ何で抱いてくれないの?」
「ねえハナちゃん、さっきから天然でやってる?可愛すぎて話が頭に入ってこないんだけど。やっぱり俺とセックスしたいんだよね?」
「違うもん、違うもん」
ハナはダダをこねた。
苛立った市原がハナに威嚇する。
「貴様、あんま社長困らせんじゃねえよ」
「うるさい!市原さんは関係ないでしょ!」
「なっ!?」
思いがけず反論されて、市原は思わず言葉を失った。弦人は苦笑いした。
「まあ、確かに市原は関係ないね。
ハナちゃん、セックスはしたくないけど、抱いてほしいの?」
弦人が優しく言うと、ハナは上目遣いで、「弦人さんは本当に怒ってない?」と言いながら恐る恐る近づいてきた。
そして、弦人に身体を寄せると、甘えるように言った。
「抱っこしてほしい」
「抱っこ?」
「今度は、弦人さんに触れさせてくれるって言ってたもん」
そう言いながら、ハナは弦人の胸に顔を寄せてた。
「ハナちゃん?」
見たことも無い、ハナの甘える姿に、弦人はもういっぱいいっぱいだった。
「そんなコトされたら、抱っこだけじゃすまないんだけど?」
「私最低だもん」
甘え口調だったハナが、急に暗い口調になる。
「完全に、酔っぱらい特有の、支離滅裂な会話になってきてやがるな」
市原が小馬鹿にするように言ったので、弦人は市原を睨んだ。
「ちょっと市原は静かにしてて。ねえハナちゃん?最低って何?」
弦人に促され、眠そうな目をしたままハナは拗ねるように言う。
「弦人さん、優しいじゃない?でも、私はいつも優しくされるたびに、隼の事を考えちゃうの」
「ま、まさかの逆効果だった……?」
弦人はあ然としてしまった。
ハナは泣きそうな顔のまま続けた。
「それのに、あの日弦人さんが優しく抱きしめてくれた事を思い出して、またしてほしいって思っちゃうことがあるの。私は最低な事しか考えれないのに、弦人さんに優しくされて、全部全部忘れちゃいたいって思うの。勝手なの私」
「ちょっと待ってね」
弦人は、妙にくっついてくるハナを少しだけ引き剥がして、落ちついて考えてみる。そして、そっとたずねた。
「えっと……。ハナちゃんは、優しくされると池田隼を、思い出しちゃう?」
「そう、だから困ってる」
ハナは口を尖らせた。
「でも、優しくされたい?」
「うん、前みたいに優しくぎゅってされたい。今度は弦人さんも裸になって欲しい」
「ハナちゃん俺の事好き?」
「わかんない」
ハナは小首を傾げてニッコリと笑っていた。
「市原、明日の俺の仕事の予定は?」
弦人はヘニャヘニャのハナを撫でながら市原にたずねた。すぐに市原はスケジュールをチェックする。
「明日は、午前は下っ端の組員達の指導が。午後は新しいクラブの内装工事の立ち会いがあります」
「それは俺が必ず行かなくてもいいやつだよね?悪いけどキャンセルして、他の手の空いてる幹部探してもらえる?」
「かしこまりました」
「今から出掛けたいんだけど、運転手手配できるかな?」
「どちらへですか?この女と出掛けるなら、私が運転手を務めさせていただきます」
「相変わらずだなぁ」
弦人は苦笑いをする。そして、スマホを操作して、あるページを市原に見せた。
「ハナちゃんとここに行きたい。どれくらい時間かかるかと、近くに泊まれる所無いか探して」
「かしこまりました」
市原はすぐに調べ始めた。
「悪いね。身勝手な事を言うハナちゃんをね、ちょっと懲らしめてやろうかと思ってるんだ」
そう言って、弦人は眠そうに身体を預けるハナを優しく撫で続けた。
部屋には市原が待機していたが、酔っ払ったハナを見て面倒臭そうな顔をした。
「この状況はなんでしょうか?ずいぶん出来上がってるようですが」
「どうしよう市原。ハナちゃん俺とセックスしたいみたい」
弦人がハナを優しく床に下ろしながら言った。
「違うもん。セックスしたいわけじゃないもん」
ハナはイヤイヤと首を振る。
「社長、違うそうですが」
「あれ?おかしいな」
弦人は首を傾げてハナにたずねた。
「ハナちゃん?教えて?なんでさっきあんな事言ったの?」
「あんな事?」
ハナはボンヤリと弦人を見つめた。
「そう、俺があの日以来抱いていないから怒ってると思ってたんでしょ?」
「怒ってるでしょ?」
ハナは小首を傾げて、弦人を上目遣いで睨んでくる。
「私が、あの日、『隼ならやめてくれた。隼の代わりなのに』って言ったから怒ったんでしょ?」
ハナの言葉に、弦人は思わず言葉を失った。
怒ってはないない。ただ、ショックはショックだった。しかし……
「ハナちゃん、気にしてくれてたんだ」
「さすがに酷かったと思って。ごめんなさい」
ハナは素直に深々と頭を下げた。
「怒ってはないよ。そりゃ少し気にはしちゃったけど。でも怒ってない」
弦人がキッパリ言うと、ハナは頬をプクッと膨らませた。
「じゃあ何で抱いてくれないの?」
「ねえハナちゃん、さっきから天然でやってる?可愛すぎて話が頭に入ってこないんだけど。やっぱり俺とセックスしたいんだよね?」
「違うもん、違うもん」
ハナはダダをこねた。
苛立った市原がハナに威嚇する。
「貴様、あんま社長困らせんじゃねえよ」
「うるさい!市原さんは関係ないでしょ!」
「なっ!?」
思いがけず反論されて、市原は思わず言葉を失った。弦人は苦笑いした。
「まあ、確かに市原は関係ないね。
ハナちゃん、セックスはしたくないけど、抱いてほしいの?」
弦人が優しく言うと、ハナは上目遣いで、「弦人さんは本当に怒ってない?」と言いながら恐る恐る近づいてきた。
そして、弦人に身体を寄せると、甘えるように言った。
「抱っこしてほしい」
「抱っこ?」
「今度は、弦人さんに触れさせてくれるって言ってたもん」
そう言いながら、ハナは弦人の胸に顔を寄せてた。
「ハナちゃん?」
見たことも無い、ハナの甘える姿に、弦人はもういっぱいいっぱいだった。
「そんなコトされたら、抱っこだけじゃすまないんだけど?」
「私最低だもん」
甘え口調だったハナが、急に暗い口調になる。
「完全に、酔っぱらい特有の、支離滅裂な会話になってきてやがるな」
市原が小馬鹿にするように言ったので、弦人は市原を睨んだ。
「ちょっと市原は静かにしてて。ねえハナちゃん?最低って何?」
弦人に促され、眠そうな目をしたままハナは拗ねるように言う。
「弦人さん、優しいじゃない?でも、私はいつも優しくされるたびに、隼の事を考えちゃうの」
「ま、まさかの逆効果だった……?」
弦人はあ然としてしまった。
ハナは泣きそうな顔のまま続けた。
「それのに、あの日弦人さんが優しく抱きしめてくれた事を思い出して、またしてほしいって思っちゃうことがあるの。私は最低な事しか考えれないのに、弦人さんに優しくされて、全部全部忘れちゃいたいって思うの。勝手なの私」
「ちょっと待ってね」
弦人は、妙にくっついてくるハナを少しだけ引き剥がして、落ちついて考えてみる。そして、そっとたずねた。
「えっと……。ハナちゃんは、優しくされると池田隼を、思い出しちゃう?」
「そう、だから困ってる」
ハナは口を尖らせた。
「でも、優しくされたい?」
「うん、前みたいに優しくぎゅってされたい。今度は弦人さんも裸になって欲しい」
「ハナちゃん俺の事好き?」
「わかんない」
ハナは小首を傾げてニッコリと笑っていた。
「市原、明日の俺の仕事の予定は?」
弦人はヘニャヘニャのハナを撫でながら市原にたずねた。すぐに市原はスケジュールをチェックする。
「明日は、午前は下っ端の組員達の指導が。午後は新しいクラブの内装工事の立ち会いがあります」
「それは俺が必ず行かなくてもいいやつだよね?悪いけどキャンセルして、他の手の空いてる幹部探してもらえる?」
「かしこまりました」
「今から出掛けたいんだけど、運転手手配できるかな?」
「どちらへですか?この女と出掛けるなら、私が運転手を務めさせていただきます」
「相変わらずだなぁ」
弦人は苦笑いをする。そして、スマホを操作して、あるページを市原に見せた。
「ハナちゃんとここに行きたい。どれくらい時間かかるかと、近くに泊まれる所無いか探して」
「かしこまりました」
市原はすぐに調べ始めた。
「悪いね。身勝手な事を言うハナちゃんをね、ちょっと懲らしめてやろうかと思ってるんだ」
そう言って、弦人は眠そうに身体を預けるハナを優しく撫で続けた。
10
あなたにおすすめの小説
虚弱なヤクザの駆け込み寺
菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。
「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」
「脅してる場合ですか?」
ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。
※なろう、カクヨムでも投稿
お客様はヤの付くご職業・裏
古亜
恋愛
お客様はヤの付くご職業のIf小説です。
もしヒロイン、山野楓が途中でヤンデレに屈していたら、という短編。
今後次第ではビターエンドなエンドと誰得エンドです。気が向いたらまた追加します。
分岐は
若頭の助けが間に合わなかった場合(1章34話周辺)
美香による救出が失敗した場合
ヒーロー?はただのヤンデレ。
作者による2次創作的なものです。短いです。閲覧はお好みで。
愛し愛され愛を知る。【完】
夏目萌
恋愛
訳あって住む場所も仕事も無い神宮寺 真彩に救いの手を差し伸べたのは、国内で知らない者はいない程の大企業を経営しているインテリヤクザで鬼龍組組長でもある鬼龍 理仁。
住み込み家政婦として高額な月収で雇われた真彩には四歳になる息子の悠真がいる。
悠真と二人で鬼龍組の屋敷に身を置く事になった真彩は毎日懸命に家事をこなし、理仁は勿論、組員たちとの距離を縮めていく。
特に危険もなく、落ち着いた日々を過ごしていた真彩の前に一人の男が現れた事で、真彩は勿論、理仁の生活も一変する。
そして、その男の存在があくまでも雇い主と家政婦という二人の関係を大きく変えていく――。
これは、常に危険と隣り合わせで悲しませる相手を作りたくないと人を愛する事を避けてきた男と、大切なモノを守る為に自らの幸せを後回しにしてきた女が『生涯を共にしたい』と思える相手に出逢い、恋に落ちる物語。
※ あくまでもフィクションですので、その事を踏まえてお読みいただければと思います。設定等合わない場合はごめんなさい。また、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
堅物上司の不埒な激愛
結城由真《ガジュマル》
恋愛
望月かなめは、皆からオカンと呼ばれ慕われている人当たりが良い会社員。
恋愛は奥手で興味もなかったが、同じ部署の上司、鎌田課長のさり気ない優しさに一目ぼれ。
次第に鎌田課長に熱中するようになったかなめは、自分でも知らぬうちに小悪魔女子へと変貌していく。
しかし鎌田課長は堅物で、アプローチに全く動じなくて……
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる