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出会ったころはツンツンしてたのに
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それから数日後のある日の夜だった。
カンナがアフターが入ったので、ハナは一人で夜の帰り道を歩いていた。
ふ、と誰かの視線を感じた。
振り返っても誰もいない。何となくハナはマンションに急いだ。
部屋に入って洗面所で手を洗っていると、玄関がガチャリと開く音がした。
弦人でも来たのだろうか。ハナは玄関に向かったが誰も来た様子はない。
何かの物音だったのだろうか、と思ったが、気味が悪くなってとりあえず急いで玄関の鍵を締めた。
シャワーを浴びて寝る準備をしていると、今度は明らかにガチャガチャと鍵が開く音がした。
「こんばんは~もう寝るとこ?」
「弦人さん」
ハナはホッとして玄関に駆け寄った。
「お、どうしたの?」
「なんだか、帰り道に人の目線感じてたから少し緊張してたんです」
ハナが言うと、弦人は慌てて玄関の外をキョロキョロと、見回した。
「それ、怖いね」
なぜか弦人の方が怯えている。
とりあえずハナは弦人を部屋に上げた。
「美味しいリンゴもらったからおすそ分けしに来たついでにハナちゃん不足を解消しようと思って来たんだけど。怖かったら今夜一緒にいてあげようか?」
弦人の言葉に、ハナはリンゴの皮を剥きながら少し考えた。
「うーん、でもよく考えたら気のせいだったかも。弦人さんも明日仕事ですよね?大丈夫ですよ」
「遠慮しないでいいんだよ」
「でも多分市原さん車で待ってるのでは?」
「大丈夫だよ。なんなら一旦帰すし」
弦人は、ハナの剥いたリンゴを食べ、ハナにも、あーん、と言いながら差し出した。
「本当だ、美味しい」
「マーメイドの店長なら、これで美味しいアップルパイ作ってくれるよ。食べきれなかったらお店に持っていけばいいよ」
「なるほど。今度、店長にレシピ聞きます。私が作れたら食べてくれます?」
「えー、作ってくれるの?」
弦人はへニャリと満面の笑みを浮かべた。
「やっぱり、今夜一緒にいてもらえますか?」
リンゴを食べたあと、ハナは恥ずかしそうに言った。
「やっぱり怖くなっちゃった?今度見回りとかさせようか?」
弦人が心配そうに言うと、ハナは首を振った。
「ちょっと怖いのもあるんですが……もう少し弦人さんと一緒にいたい、ので」
ハナの言葉に、弦人は嬉しそうに笑って、ハナに擦り寄った。
「えへへ。会った頃はツンツンしてたのに可愛くなったもんだなぁ。いいよいいよー。俺ハナちゃんのおねだりなんでも聞いちゃうからねー。怖がり同士一緒にいようね」
「同士にされるのは何か納得出来ない」
ハナは照れ隠しに文句を言った。
しかしその後、弦人のスマホがけたたましく鳴り、緊急の喧嘩の仲裁の要請が出てしまった。
「怖かったらすぐ連絡してねー。怪しい奴が来ないように戸締まりちゃんとするんだよー」
そう言い残して、大変に不貞腐れた弦人は市原に引きずられるようにハナの部屋を出る羽目になったのだった。
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