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「辛い感じにしちまってごめんな、笹井」
そう言って新條は離れてくれた。俺の愚息はまだわーいって感じで臨戦態勢だ。頭の中にヒーリングミュージックをかけ大海原を思い浮かべる。平常心だ、平常心を取り戻せ、俺‥。
深呼吸を繰り返す俺を、少し離れたところで新條は見つめている。できればあまり見ないでほしい。何が悲しくて愚息をどうどうとおさめているところを、好きなやつにガン見されなきゃいけないのか。
しかし新條に何か言うこともできず、とにかく俺は深呼吸を繰り返した。五分ほど経ってようやくおさまった俺に、新條が話しかけてきた。
「笹井、俺とセックスしてみる?」
ぴーぴーぴぴっぴぴーぴーぴー!ズンドコズンドコズンドコドコ!
再び愚息がサンバカーニバル状態になってしまった。新條は何を言ってるんだ。アレ新條って宇宙人だったかな‥。
「新條おれの事、別に好きじゃないだろ」
自分を落ち着けるために俺は基本的な情報の確認をした。
「いや、好きだけど。ただ、セックスしてもいいくらい好きなのかはわからないからさ。してみたらなんかわかるかなって」
だから!
新條、お前は!
なんでそういう思考回路なんだ!?
『してみたら』って二言目にはお前!
「調べてみたらさ、突っ込まれる方は結構いろいろ準備がいるんだよな。もしやるなら、笹井に確認取ってからやってみようかなって」
「へ‥?あの、面倒でメンタルちょっとやられそうな作業を‥?」
俺は自分で調べた時に思ったことをそのまま口に出してしまった。‥あれを、新條が、俺のためにやってもいい、と‥?
新條はこくんと頷いた。
愚息はぴーぴーぴぴっぴぴー!と浮かれまわしてガッチガチだ。
だが、待て愚息。またの名をちんこよ。
大事なことを、忘れてはいないか。
「新條、俺は、お互いの気持ちがある中でそういう事をすべきだと思っている」
いや正直なところで言えば、めっちゃお願いしたい。突っ込みたい。セックスしたい。
だが、セックスはただ快楽を得る手段として取るものではない筈だ。
俺が、新條で抜いてしまったときだって、妄想の中でお互い愛を囁いていた。決して新條の気持ちがない状態で無体を働くような妄想はしていない。妄想でさえもしていなかったのだ。
新條は俺の言葉を聞いて、「ふうん?」と小首をかしげた。やめろかわいいから。
「だから、俺は笹井が好きだって。でもその好きが恋愛か友情かわかんねえからセックスしてみようつってんの。それもダメ?」
「‥‥‥」
セックスは愛があってこその行為だ。
俺は固くそう信じている。
だが俺は、健康な高校生男子だ。
「わ。わかった‥」
しかし俺にも良心は残っている。
「‥でも、それでやってみて、やっぱり違ったわ、ってなったら‥新條のダメージがでかくないか?精神的にも、その、身体的にもさ‥」
そう言われても、新條はあまり顔色を変えずにさらりと答えた。
「それは、そうすると決断した俺の問題であって笹井が心配することじゃねえだろ」
‥新條、お前、男前すぎないか。
そんなちっさいなりで、ぱっと見いかにもな陰キャのくせに、なんでそんな中身は思い切りがよくて好奇心旺盛で男前なんだ。
俺は、新條のきっぱりとした言い方に全く反論できなかった。
新條は続けて言った。
「最初は、笹井を変なやつだと思ったけど、話してみたらいいやつだったし楽しいしさ。‥でも音ちゃんと話してる時とはまた違った感じで楽しいから。確かめたいんだ」
そう言って、またにっと笑った。
俺は、何だか茫然として新條の顔を見つめていた。
その後、「すげえやつ引いてもらったから昼飯は俺が奢る」と言ってきかない新條にファミレスに連れ込まれて。
ミックスグリルのランチセットにデカいパフェまで奢ってもらって。
自分もデカいパフェを豪快に食べて、機嫌よく漫画の話とかしながら笑っている新條を見つめて。
絶対当たらない宝くじに当たってしまったんだと思った。
楽しい。すっげえ楽しかった。
普段、ほとんど話したりしない俺なのに、新條が話すことを聞いて返事をするだけでどんどん会話が進む。それが楽しい。
黒縁眼鏡の奥の新條の小さめな目がきらきら光っている。
ずっとその顔を見ていたい、と思った。
気がつけば夕方まで俺たちは話し込んでいた。少し外が薄暗くなったのを見てそれに気づく。そろそろ帰るか、となった時に新條が言った。
「笹井ってラブホテルとか行ったことある?」
「へっ!?ねえよ?!」
うーんと新條は腕組みをして考え込んだ。
「じゃあどうしようか、頑張って二人で入ってみる?徒歩で行けるそういうところって調べればわかるかな?」
「‥新條、なんでラブホなんだ‥?」
「え、だってお前とセックスするとき場所ないじゃん。俺んちいつも誰かいるしさ。笹井んちだって家族がいるだろ?」
新條の中で俺とセックスするのはもう決定事項なんだな‥。
俺は、ちょっと脱力感を覚えながら返事をした。
「‥俺も探しとくよ‥」
新條は、俺の返事を聞いてもう一度言った。
「じゃあ、そうだな‥。二週間とりあえず時間をくれ。ネットとかで調べて準備を頑張ってみる」
相変わらず思いきりがいいな新條。
全然ためらいなんかないように見えるが‥本当は色々悩んでたりしてないよな。
俺が、新條にエロいことしたいと思ってるって言っちまったから、無理して言ってくれてるわけじゃないよな。
心の中でそういう疑問がいくつもわいてきたが、俺はそれを新條には言えなかった。
そう言って新條は離れてくれた。俺の愚息はまだわーいって感じで臨戦態勢だ。頭の中にヒーリングミュージックをかけ大海原を思い浮かべる。平常心だ、平常心を取り戻せ、俺‥。
深呼吸を繰り返す俺を、少し離れたところで新條は見つめている。できればあまり見ないでほしい。何が悲しくて愚息をどうどうとおさめているところを、好きなやつにガン見されなきゃいけないのか。
しかし新條に何か言うこともできず、とにかく俺は深呼吸を繰り返した。五分ほど経ってようやくおさまった俺に、新條が話しかけてきた。
「笹井、俺とセックスしてみる?」
ぴーぴーぴぴっぴぴーぴーぴー!ズンドコズンドコズンドコドコ!
再び愚息がサンバカーニバル状態になってしまった。新條は何を言ってるんだ。アレ新條って宇宙人だったかな‥。
「新條おれの事、別に好きじゃないだろ」
自分を落ち着けるために俺は基本的な情報の確認をした。
「いや、好きだけど。ただ、セックスしてもいいくらい好きなのかはわからないからさ。してみたらなんかわかるかなって」
だから!
新條、お前は!
なんでそういう思考回路なんだ!?
『してみたら』って二言目にはお前!
「調べてみたらさ、突っ込まれる方は結構いろいろ準備がいるんだよな。もしやるなら、笹井に確認取ってからやってみようかなって」
「へ‥?あの、面倒でメンタルちょっとやられそうな作業を‥?」
俺は自分で調べた時に思ったことをそのまま口に出してしまった。‥あれを、新條が、俺のためにやってもいい、と‥?
新條はこくんと頷いた。
愚息はぴーぴーぴぴっぴぴー!と浮かれまわしてガッチガチだ。
だが、待て愚息。またの名をちんこよ。
大事なことを、忘れてはいないか。
「新條、俺は、お互いの気持ちがある中でそういう事をすべきだと思っている」
いや正直なところで言えば、めっちゃお願いしたい。突っ込みたい。セックスしたい。
だが、セックスはただ快楽を得る手段として取るものではない筈だ。
俺が、新條で抜いてしまったときだって、妄想の中でお互い愛を囁いていた。決して新條の気持ちがない状態で無体を働くような妄想はしていない。妄想でさえもしていなかったのだ。
新條は俺の言葉を聞いて、「ふうん?」と小首をかしげた。やめろかわいいから。
「だから、俺は笹井が好きだって。でもその好きが恋愛か友情かわかんねえからセックスしてみようつってんの。それもダメ?」
「‥‥‥」
セックスは愛があってこその行為だ。
俺は固くそう信じている。
だが俺は、健康な高校生男子だ。
「わ。わかった‥」
しかし俺にも良心は残っている。
「‥でも、それでやってみて、やっぱり違ったわ、ってなったら‥新條のダメージがでかくないか?精神的にも、その、身体的にもさ‥」
そう言われても、新條はあまり顔色を変えずにさらりと答えた。
「それは、そうすると決断した俺の問題であって笹井が心配することじゃねえだろ」
‥新條、お前、男前すぎないか。
そんなちっさいなりで、ぱっと見いかにもな陰キャのくせに、なんでそんな中身は思い切りがよくて好奇心旺盛で男前なんだ。
俺は、新條のきっぱりとした言い方に全く反論できなかった。
新條は続けて言った。
「最初は、笹井を変なやつだと思ったけど、話してみたらいいやつだったし楽しいしさ。‥でも音ちゃんと話してる時とはまた違った感じで楽しいから。確かめたいんだ」
そう言って、またにっと笑った。
俺は、何だか茫然として新條の顔を見つめていた。
その後、「すげえやつ引いてもらったから昼飯は俺が奢る」と言ってきかない新條にファミレスに連れ込まれて。
ミックスグリルのランチセットにデカいパフェまで奢ってもらって。
自分もデカいパフェを豪快に食べて、機嫌よく漫画の話とかしながら笑っている新條を見つめて。
絶対当たらない宝くじに当たってしまったんだと思った。
楽しい。すっげえ楽しかった。
普段、ほとんど話したりしない俺なのに、新條が話すことを聞いて返事をするだけでどんどん会話が進む。それが楽しい。
黒縁眼鏡の奥の新條の小さめな目がきらきら光っている。
ずっとその顔を見ていたい、と思った。
気がつけば夕方まで俺たちは話し込んでいた。少し外が薄暗くなったのを見てそれに気づく。そろそろ帰るか、となった時に新條が言った。
「笹井ってラブホテルとか行ったことある?」
「へっ!?ねえよ?!」
うーんと新條は腕組みをして考え込んだ。
「じゃあどうしようか、頑張って二人で入ってみる?徒歩で行けるそういうところって調べればわかるかな?」
「‥新條、なんでラブホなんだ‥?」
「え、だってお前とセックスするとき場所ないじゃん。俺んちいつも誰かいるしさ。笹井んちだって家族がいるだろ?」
新條の中で俺とセックスするのはもう決定事項なんだな‥。
俺は、ちょっと脱力感を覚えながら返事をした。
「‥俺も探しとくよ‥」
新條は、俺の返事を聞いてもう一度言った。
「じゃあ、そうだな‥。二週間とりあえず時間をくれ。ネットとかで調べて準備を頑張ってみる」
相変わらず思いきりがいいな新條。
全然ためらいなんかないように見えるが‥本当は色々悩んでたりしてないよな。
俺が、新條にエロいことしたいと思ってるって言っちまったから、無理して言ってくれてるわけじゃないよな。
心の中でそういう疑問がいくつもわいてきたが、俺はそれを新條には言えなかった。
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