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サンドイッチの袋なんかを公園のゴミ箱に捨てて移動しようとした時、新條‥‥チカが「いっ」と呟いて顔を顰め、少しよろめいた。
「チカ、どうした?」
驚いてチカの腰に手をかけ、支える。チカはへっと少し傲岸な顔で笑って俺を見上げた。
「‥シュウががんがん突くから、な」
俺は顔がかあっと熱くなるのを感じた。
「ごめん‥」
「ん、へーき。なあ、まだ腹減ってる。どっか食べる店行こう。あ、その前にちょっと家に連絡入れとくわ」
そう言ってチカはもう一度ベンチに座って携帯を取り出した。
「新條か」
ふと誰かの声がした。俺が振り向くと、前に食堂と教室でチカに絡んできた上級生が、四人ほどの仲間を連れて立っていた。
上級生たちは、いかにもな悪い感じの服装をしていて、一番後ろのやつは煙草をくわえていた。
チカは、じろっと上級生に目をやると携帯を鞄にしまって立ち上がった。
「なんか用?」
チカは、抑揚のない声でそう言った。上級生ではない仲間がじいっとチカを無遠慮に見つめてくる。
「大里、やっぱこいつはあれだ、『倉見のジョー』だよ。大里から話を聞いてそうじゃねえかと思ってたんだ」
仲間はそう言ってははっと笑い声をあげた。チカは何も言わずにそのグループを見ている。俺は思わずチカをかばって前に立った。
「何か用ですか?」
「なんだお前。新條のダチか?」
上級生・・大里、という名前なのだろうそいつが俺のことも睨んでくる。さっきチカを見つめていた仲間がへらへら笑いながら俺に話しかけてきた。
「オトモダチくんねえ、そいつめちゃめちゃ強いから君がかばう必要ないんだよ~?二年くらい前まで、この辺で知らないヤツはいないってくらい喧嘩強かったんだから!『倉見のジョー』って二つ名で呼ばれてたくらい!負けなしで来てて、急に姿を見せなくなったからどうしたのかと思ってたんだけど、こんな陰キャに偽装してたとはねえ~」
ぺらぺらと喋っているそいつに向けて、チカは低い声で答えた。
「うるせえな。好きで喧嘩してたわけじゃねえ。俺がチビだからって舐めてかかってくるヤツが多かっただけだ。俺から喧嘩売ったことはねえからな」
後ろで煙草をくわえていたやつが、チカの言葉を聞いてぷっと煙草を吐き捨てた。
「‥お前、秋吉ジムのオーナーの孫だろ。‥なんで試合に出なかったんだ」
チカはそいつの方に向き直った。
「じいさんの道楽にそこまでつき合えるか。しばらくジムに通ってやっただけじじい孝行した方だ」
俺から見ても、煙草のヤツは強そうに見えた。他の四人も、煙草のヤツには一線引いているように見えたからでもある。
煙草はずいっと身体を前に寄せ、チカの前に立った。
「俺の事を覚えてるか」
チカはまたさっきと同じような全く抑揚を感じさせない声で応えた。
「知らねえ。いちいち喧嘩吹っかけてくる馬鹿の顔なんて覚えてねえ」
煙草は無言のまま長い足でチカを蹴り上げた。ように見えたがすぐさまチカは後ろに飛びしさってそれを回避していた。
「チカ!」
思わず叫んだ俺の腕を、大里とかいう上級生が横からグイッと引いた。思わぬことをされて身体のバランスがとり切れず、俺はその場に膝をついた。そんな俺を見てチカが叫んだ。
「シュウ!」
大里は俺の後ろに回り込み、俺の右足の膝裏にぐりっと靴をのせて踏みつけた。柔らかい場所を容赦なく踏まれた痛みで俺は思わず「うあ!」と声を出した。
「やめろ、シュウには関係ねえだろ!」
煙草が蹴り上げようとした足をすっと下して俺を見た。
「あんまり痛い目に遭わせんな。‥俺とこいつが終わるまで捕まえとけ」
「おう」
大里はそう答えると、俺の背中をどんと押して地面に倒した。そしてそのまま俺の背中に座った。でかい図体の男子高生に乗っかられて息が詰まるのを感じた。
「終わるまでこうしとくよ」
「ふん」
煙草はまたチカの方を向いた。
チカは顔を真っ赤にしていた。そして眼鏡を取って横に放り投げた。ああ、眼鏡割れちゃうかもしんないだろ。チカ、チカ、俺のことに構うな。
そう言いたいのに、ちょうど肺の真裏辺りに乗っかられているせいか、うまく言葉が出てこない。
チカはすっと一歩前に踏み出した。チカの正面には煙草が立っているが、チカの視線は大里にしかなかった。
「‥シュウからどけ」
「お前が屋敷に勝ったらどいてやるよ」
大里は嬉しそうににやにやしながらチカを挑発するように言った。煙草‥‥屋敷はチカが自分の方に向いていないのが不満だったのか、身体を大きく振りかぶりチカに殴りかかった。
チカはふっとその身体を横にスライドさせて屋敷の拳を避けると、そのままくるっと身体を反転させて右足で回し蹴りを放った。屋敷はすんでのところでそれをよけ、その足を掴もうと手を伸ばした。
しかし、チカは足を掴まれることなく素早く着地した地点から斜め上向きに拳を突き出した。その拳は屋敷の胴にクリーンヒットした。
「グッ」
鳩尾くらいの急所に鋭くチカの拳が入って屋敷は呻いた。しかし呻きながらも屋敷は手を振り抜いてチカの横っ面を張り飛ばした。小柄なチカの身体はそのまま横に飛んで倒れた。
「‥‥ガッ!」
俺はチカ、と名前を呼ぼうとしたが上に乗っかられているせいでうまく声が出なかった。一度地面に倒れたチカは、すぐさま顔を上げて体勢を整えようとした。
しかしそこに一足でやってきた屋敷はチカの上から踵落としをくらわそうとした。チカは横に転がってそれをよけたが、「うぐ、」と声を上げてその場にうずくまった。
チカ、チカそういえば俺のせいで、腰が痛いんじゃないか?
俺は上に乗っかっている大里から逃れようと、必死に身体をよじった。
「チカ、どうした?」
驚いてチカの腰に手をかけ、支える。チカはへっと少し傲岸な顔で笑って俺を見上げた。
「‥シュウががんがん突くから、な」
俺は顔がかあっと熱くなるのを感じた。
「ごめん‥」
「ん、へーき。なあ、まだ腹減ってる。どっか食べる店行こう。あ、その前にちょっと家に連絡入れとくわ」
そう言ってチカはもう一度ベンチに座って携帯を取り出した。
「新條か」
ふと誰かの声がした。俺が振り向くと、前に食堂と教室でチカに絡んできた上級生が、四人ほどの仲間を連れて立っていた。
上級生たちは、いかにもな悪い感じの服装をしていて、一番後ろのやつは煙草をくわえていた。
チカは、じろっと上級生に目をやると携帯を鞄にしまって立ち上がった。
「なんか用?」
チカは、抑揚のない声でそう言った。上級生ではない仲間がじいっとチカを無遠慮に見つめてくる。
「大里、やっぱこいつはあれだ、『倉見のジョー』だよ。大里から話を聞いてそうじゃねえかと思ってたんだ」
仲間はそう言ってははっと笑い声をあげた。チカは何も言わずにそのグループを見ている。俺は思わずチカをかばって前に立った。
「何か用ですか?」
「なんだお前。新條のダチか?」
上級生・・大里、という名前なのだろうそいつが俺のことも睨んでくる。さっきチカを見つめていた仲間がへらへら笑いながら俺に話しかけてきた。
「オトモダチくんねえ、そいつめちゃめちゃ強いから君がかばう必要ないんだよ~?二年くらい前まで、この辺で知らないヤツはいないってくらい喧嘩強かったんだから!『倉見のジョー』って二つ名で呼ばれてたくらい!負けなしで来てて、急に姿を見せなくなったからどうしたのかと思ってたんだけど、こんな陰キャに偽装してたとはねえ~」
ぺらぺらと喋っているそいつに向けて、チカは低い声で答えた。
「うるせえな。好きで喧嘩してたわけじゃねえ。俺がチビだからって舐めてかかってくるヤツが多かっただけだ。俺から喧嘩売ったことはねえからな」
後ろで煙草をくわえていたやつが、チカの言葉を聞いてぷっと煙草を吐き捨てた。
「‥お前、秋吉ジムのオーナーの孫だろ。‥なんで試合に出なかったんだ」
チカはそいつの方に向き直った。
「じいさんの道楽にそこまでつき合えるか。しばらくジムに通ってやっただけじじい孝行した方だ」
俺から見ても、煙草のヤツは強そうに見えた。他の四人も、煙草のヤツには一線引いているように見えたからでもある。
煙草はずいっと身体を前に寄せ、チカの前に立った。
「俺の事を覚えてるか」
チカはまたさっきと同じような全く抑揚を感じさせない声で応えた。
「知らねえ。いちいち喧嘩吹っかけてくる馬鹿の顔なんて覚えてねえ」
煙草は無言のまま長い足でチカを蹴り上げた。ように見えたがすぐさまチカは後ろに飛びしさってそれを回避していた。
「チカ!」
思わず叫んだ俺の腕を、大里とかいう上級生が横からグイッと引いた。思わぬことをされて身体のバランスがとり切れず、俺はその場に膝をついた。そんな俺を見てチカが叫んだ。
「シュウ!」
大里は俺の後ろに回り込み、俺の右足の膝裏にぐりっと靴をのせて踏みつけた。柔らかい場所を容赦なく踏まれた痛みで俺は思わず「うあ!」と声を出した。
「やめろ、シュウには関係ねえだろ!」
煙草が蹴り上げようとした足をすっと下して俺を見た。
「あんまり痛い目に遭わせんな。‥俺とこいつが終わるまで捕まえとけ」
「おう」
大里はそう答えると、俺の背中をどんと押して地面に倒した。そしてそのまま俺の背中に座った。でかい図体の男子高生に乗っかられて息が詰まるのを感じた。
「終わるまでこうしとくよ」
「ふん」
煙草はまたチカの方を向いた。
チカは顔を真っ赤にしていた。そして眼鏡を取って横に放り投げた。ああ、眼鏡割れちゃうかもしんないだろ。チカ、チカ、俺のことに構うな。
そう言いたいのに、ちょうど肺の真裏辺りに乗っかられているせいか、うまく言葉が出てこない。
チカはすっと一歩前に踏み出した。チカの正面には煙草が立っているが、チカの視線は大里にしかなかった。
「‥シュウからどけ」
「お前が屋敷に勝ったらどいてやるよ」
大里は嬉しそうににやにやしながらチカを挑発するように言った。煙草‥‥屋敷はチカが自分の方に向いていないのが不満だったのか、身体を大きく振りかぶりチカに殴りかかった。
チカはふっとその身体を横にスライドさせて屋敷の拳を避けると、そのままくるっと身体を反転させて右足で回し蹴りを放った。屋敷はすんでのところでそれをよけ、その足を掴もうと手を伸ばした。
しかし、チカは足を掴まれることなく素早く着地した地点から斜め上向きに拳を突き出した。その拳は屋敷の胴にクリーンヒットした。
「グッ」
鳩尾くらいの急所に鋭くチカの拳が入って屋敷は呻いた。しかし呻きながらも屋敷は手を振り抜いてチカの横っ面を張り飛ばした。小柄なチカの身体はそのまま横に飛んで倒れた。
「‥‥ガッ!」
俺はチカ、と名前を呼ぼうとしたが上に乗っかられているせいでうまく声が出なかった。一度地面に倒れたチカは、すぐさま顔を上げて体勢を整えようとした。
しかしそこに一足でやってきた屋敷はチカの上から踵落としをくらわそうとした。チカは横に転がってそれをよけたが、「うぐ、」と声を上げてその場にうずくまった。
チカ、チカそういえば俺のせいで、腰が痛いんじゃないか?
俺は上に乗っかっている大里から逃れようと、必死に身体をよじった。
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