【思案中】物見の塔の小少女パテマ 〜魔道具師パティのギルド生活〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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【第4話】 ダンジョン探索

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 ギルドに世話になって数日。
 シンはスライム以外の魔物と戦うことを考えていた。
 主な目的は金策である。
 それも仕方ないことで、町にやってきて数日、今のところ全く仕送りできるような状況ではないのだ。

 パティからいつでも来いと言われつつ、シンは近くに発生したダンジョンへと向かうことを決意する。
「とにかく、危なくなったら逃げろ。
 優先順位は命、金、一番要らないのがプライドだからな」
「はいっ。早くあの剣も使ってみたいですし、精一杯頑張ります!」
「言っておくが、戦いの最中は他のことをあまり考えるんじゃないぞ。
 まぁ発生したばかりのダンジョンだから、それほど魔物は危険ではないだろうが……
 ……あぁっ! もう、心配だから私も一緒に行ってやろうじゃないか!」
 パティにしては珍しく素直であった。
 心配などと口にしたのはいつ以来だろうか?
 ともかく、こうして二人は近くに発生したダンジョンへ向かうことにした。
 出かける際にヴァルから『お土産よろしくー』などと軽く言われるわけなのだが、実際には下手をすれば命を落とすのがダンジョン探索なのだ。
 そうなると装備をしっかりと整える必要がある。
「それはわかるが、私はこのままでいいぞ。
 今日は金など持ってはきていないからな」
「あっははは……僕も銅貨2枚と銭貨がちょっと」
 二人とも手持ちはほとんどないので、最低限だけ買おうかなどと言ってみたシンだったが、気休めくらいなら身軽な方が良いと返されてしまう。

 町から出て、二人は極力魔物と戦わないようにダンジョンへと向かう。
 つい最近できたばかりのダンジョンで、そう遠くはない場所に出来ていたのだ。
「そういえば、3人か4人くらいで行くのが普通だって聞きました。
 僕も酒場かどこかで声をかけてみようかと思っていたけど、すっかり忘れてましたよ」
「あー、構わん構わん。
 何人もで行くのは、魔物を持ち帰るのに人手が必要だからだ。
 そもそもダンジョン内はそう広くはない。むしろ武器を振るうのに邪魔になるだけだ」
「へぇ……そういえば、結構大きな魔物を担いでいる姿を見ますもんね」
「見た目ほど重くはないけどな。
 所詮魔物なんてマナが引き寄せた少量の成分が形を保つ程度に存在しているだけだ」
 そういえばスライムすら持ち上げたことはなかったと思うシン。
 試してみたいとは思うものの、何故か近くに魔物の姿はない。
 そりゃあ戦わずに済むのなら、それに越したことはないのだが。
「1匹も出てきませんね……」
 周囲を見回しながらシンはつぶやく。
「魔物はマナの質が近いもの同士で引き合う性質を持っているからな。
 強い魔物がいる近くには雑魚は集まってこないのさ」
 町の近くは比較的弱い魔物しか出てこない。
 しかし、稀に山や谷から強い魔物がやってくることもある。
 そんな時は弱い魔物がどこかに散ってしまうのだそうだ。
 いわゆる『異変』というやつで、冒険者たちはこの異変を感じると必ずギルドに報告を行うそうだ。
「それって……」
「あぁ、もしかしたらとんでもなく強いのがいるかもしれんぞ」
 心配するシンに対し、ケラケラと笑いながら答えるパティ。
 結局ダンジョンまでの道のりで魔物は1匹も出てはこない。
 ホッとするシンと呑気なパティ。
 ギルドへの報告はパティがしてくれるのだと言われ、シンは遂にダンジョンへと一歩足を踏み入れたのだった。
 
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