王都の魔法学園のいんちき魔法使い 〜魔法なんて使えなくても世界最強〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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国の名は

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 5歳になって、約束通り相馬は記憶を取り戻す。
 逆に産まれてからこれまでの5年間の記憶が無かったことには驚いたが、しっかりと前世の超能力者だった時の記憶は持っている。

「しかし……さすがにこんな場所からのスタートだとは聞いていないぞ……」
 五体満足、そして記憶もなければ過去の不幸など気にもならない。

 理由はわからないが、相馬には家族がいなかった。
 暗い洞窟に一人で住んでおり、近くには果物の芯や乾燥させた肉が落ちている。
 自分の他に誰かが住んでいる可能性も考えられなくもないが、藁の寝床はどう見ても子供一人分である。

 洞窟から外に出た瞬間、熊が襲ってくるかもしれないし、満潮で洞窟内に水が入ってくる可能性だってあるかもしれない。
 とにかく慎重になって、相馬は洞窟の周辺を調べることにしたのだった。

「とりあえず……すぐに危険になりそうなものは無い……かな。
 果物が落ちていたくらいだし、近くにコンビニでもあるとは思うが……」

 この時の相馬はまだ気づいていなかった。
 この世界にコンビニエンスストアなどという店は一軒も無い。
 そして、熊よりももっともっと危険な生物が、たくさん存在しているという事実を。

 とにかく民家を探して、林を歩いた。
 獣道を歩いていると、脇道にゼリー状の物体があり、これはなにかと考えた時もあった。
 湿布が水を含んでブヨブヨになったものなんかは、近い見た目をしている。
 だが、そんなことは焦る相馬にとっては大したことでもなく今は先を目指していた。

 それほど迷うこともなく丘の上に出る。
 眼下には荒野が広がっていて、遠くには塀に囲まれた一つの街を見ることができた。
 徒歩で20分もあれば辿り着けるであろうその街は、どう見ても日本にあるような建築物には見えない。
「なんだ……このゲームの序盤に出てきそうな小さな街は……
 石造で平屋ばかりって、どこかの国の未開の地か??」

 何はともあれ街へ向かうことは決定事項だが、そうと決まれば身体を洗いたい。
 街の近くに一本の川が流れていて、そこで着ているものも全て洗ってから向かってみよう。

「まぁ……こんな泥だらけなら、濡れてる方が100倍はマシだろうしな」

 こうして僕は、見知らぬ地で見知らぬ街へと目標を定め、歩き始めたのだった。
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