王都の魔法学園のいんちき魔法使い 〜魔法なんて使えなくても世界最強〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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スパルタ

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「じゃあ今日の授業はこれまでだ。
 入学式の時に行った通り、17時までは校内で自由にしてもらっても構わないが、それ以降は速やかに下校、わかったね?」
「はい!」

 エメラルドクラスの授業は座学が中心となる。
 オルトの場合は親が決めたらしいが、実技がしたければサファイアかルビーに行くべきだったのだ。
「じゃあ、今から毎日それを繰り返して。
 魔法を使えなくなっても、何度でも同じ詠唱を繰り返して身体に叩き込むんだ」

 喧嘩をすることはやめたが、ソーマは何度もオルトを叩きいじめ抜いた。
 校庭の隅で筋トレをしながら下級魔法をひたすら使わせる。
「ね、ねぇソーマ……
 私の時より、ずいぶん厳しくない?」
 見守っていたフランも、オルトの苦しそうな表情を見て心配になったらしい。
「いやだって、オルトはフランの何倍も強くなってもらうつもりだし」

 オルトもきっと納得してくれるだろうと思っていたが、意外なことに睨まれる場面もあった。
「い……一週間は我慢する。
 それで効果が無かったら、ぜってぇにぶん殴るからな……」

 ソーマは少々怯えてしまった。
 怖かったので、6日目の放課後にはオルトの杖をこっそりと弄ったくらいである。

 そして7日目、オルトにとっては都合が良い日とも言えた。
「では今日は、少しばかり魔法の実践も兼ねてみましょう。
 まだ使えない人もいますからまずは瞑想からですが、使える人は後ほど実際に使ってもらっても大丈夫ですよ」

 これまで学んだ理論を、実際に試してみようという授業であった。
 それに、いつまでも座りっぱなしでは面白くないだろうという粋な計らいでもある。

「さて、見たところ皆さん真面目に自習をしてくださっていたようですね。
 でも、まだマナを感じられなくても大丈夫です。
 私は初めてマナを感じるのに3週間はかかりましたから」
 なんて話をされて、落ち込む生徒もいれば安心する生徒もいた。
 そして広い中庭では、いくつかの的が設置されていて、今まさに魔法の試し打ちが始まろうとしていたのだ。

「クラフトくんは、地属性が得意だったね?」
「はいっ。アースバレットを毎日練習しています!」
「よぅし、じゃあみんなの前で見せてあげてくれ」

 1人目は無難な詠唱を行い、小さな石の礫が的のギリギリ端を掠めて飛んでいった。
「うん、素晴らしい。
 2年生でも的に当てるのは、なかなか難しいというのに」
 ペストリー先生は褒めるのがとても上手い。
 この分ならオルトのことも放っておいても大丈夫だろう。
「では次にフランさん。
 君はかなりレベルが高いからねぇ。
 他のみんなはお手本だと思って見ればいい。
 僕もきっとこの域に達したのは2年の終わりの頃だ」
 やはり煽てるのが上手すぎる。
 当の本人も、照れすぎて顔を伏せっているではないか。

「ウォーターバレット!」
 フランの放った3つの水弾は、それぞれの的へ向かい的を粉砕する。
 1つでも上出来なところを3つも出せるのは、エーテル先生の技術の真似である。

 『ヤバい』だの『マジかよ』だのと、生徒たちの語彙力が乏しいのは仕方のないことだろう。
 そしてもちろんソーマにもできないことなので、思いっきり拍手をしていたのであった。

「あと実際に魔法が使えるのはオルトだな。
 さぁ、やってみるといい」
 オルトの杖はまだまだ出来立てホヤホヤだった。
 マナが馴染むまでは杖としての効果はほとんど発揮しない。
 まぁ、それが少しばかり強化されたところで大した効果は無いのだろうけども。

「ファイアー……ボール!」
 下級魔法ではあるが、それでも魔法が使えるのは凄いことだ。
 杖の先に火の玉が出現し、そこそこのスピードで的に向かっていく魔法。

 次第に大きくなっていく火球は、術者の技量によってもっともっと大きくもなる。
 頭サイズになり、これでオルトも納得しただろうとソーマは思った。
 しかし、それが人よりも大きくなり、更には1メートル近い炎熱球となったのなら、それはどういうことかと問題になる。

「え……え?!」
「い、いかん!
 早く火球を消すんだ!」
 オルトは狼狽え、ペストリー先生も焦ってしまう。
 そして、的のあるだろう方向にオルトは火球を放つ。
 離れていてもその熱量は凄まじく、さすがのソーマもそれは想定外であった。

 的など瞬時に消え失せて、その火球は校舎へとぶつかった。
 ドン、という音と共に、さらに強い熱波が周囲に飛び散った。

「み……みんなはすぐに教室に戻りなさい。
 先生は後で戻りますから……」
 幸い校舎に穴が空いたりすることは無かったが、数枚の窓は割れて、教室の窓からは多くの生徒が中庭を覗いていたのであった。
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