王都の魔法学園のいんちき魔法使い 〜魔法なんて使えなくても世界最強〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

文字の大きさ
33 / 51

総合得点

しおりを挟む
 夕焼け雲が空に広がり、大会は終了を告げられた。
 各地にいる冒険者たちも会場に戻ってきて、運ぶのが大変なティアバイソンを担いでいたり、片や退屈そうであくびをしたりと状況は様々なようであった。

 そんな中、参加者であるファットたちが戻ると、会場は大いなる歓声が沸き起こっていた。
 帰り道でティアサーバルを3匹、ティアラビットは合計19匹に大会開始時のティアバイソン。
 30点は、大会史上稀に見る高得点だったのだ。

「アイツら、うまい具合に獲物を見つけてくれたんで結果オーライでしたね」
「あぁ、まさか15匹も見つけるとはな。
 まぁどれだけ見つけても俺たちがいたんじゃ運もへったくれも無いがな」
「去年なんて最高得点が17点だったし、もう優勝は決まりっしょ」

 歓声に気持ちを良くしたファットたちは、係から受け取ったジュースを片手にすでに祝杯をあげている。

 そして少し遅れてソーマたちも歩いて戻ってきたのだ。
 手には最初に倒したティアラビットが1匹だけであり、ティアバイソンの姿は見受けられなかった。

「なんだ、アイツら結局ティアバイソンからは逃げられたのかよ。
 もう1匹くらい見つけて押しつけてくりゃあ良かったぜ」
 怪我もなく歩いて戻ってくるソーマたちに不満を洩らすファット。

「なんかアイツら笑ってません?」
「本当だ、何考えてんだか……」
 他の二人もソーマたちを見てそれぞれ呟いている。

 さらに後ろには別の参加者たちもいて、ティアバイソンを担いだ冒険者も現れる。
 偶然別の参加者が発見して助けに入ったか横取りをしたか。
 まぁそんなところだろうとファットは考えた。

「さぁ皆さん!
 素晴らしい狩りのお時間は、あっと言う間に終わってしまいました!」
 全ての参加者が戻り、司会の男性は再び会場を盛り上げる。

 集計の終わったチームから、どんどんと成績を発表していき、会場に設置された大きなボードに書き加えられていく。

『チームアクトーー6点』
『チームベリルーー11点』
『チームソーマーー1点』
『チームロンドーー12点』

「1点のチームがあるじゃねーか」
「あれだろ? 魔法学園のちびっ子たち」
「あぁ、そういやいたな」

『チームパーロットーー18点』

「おぉ! 高得点じゃねーか!
 よくやったパーロット!」
 知り合いからの歓声だろう。
 そんな声も次々と飛んでくる。

 そんな場で、ファットたちはソーマの近くへやってくる。
「この分だと、俺たちの優勝は決定だな。
 どこかのガキどもが獲物を見つけてくれるおかげで楽勝だったぜ」
 嫌味なのはわかっていたが、ソーマもオルトも平然を装っている。
「おめでとうございます。
 僕たちが役に立ったのなら良かったです」
 そんなセリフを嫌味を言った相手から聞かされるのだから、苛立ちもするだろう。

 まぁ今回は許す。
 何故なら24点という高得点が今から発表されて、まだまだ良い気分になれるはずなのだから。
 そうファットは思い、笑いながらその場を去ろうとしたのだった。

「おぉっと?!!
 この得点は本当なのかぁ??
 ティアバイソンを倒したチームの得点が、前代未聞だぞぉぉ!!」
 司会は盛り上げるのがとても上手い。
 前代未聞は言い過ぎだろうと思いながら、ファットは笑いを堪えられないのであった。

「俺たちのことじゃね?」
「あぁ、せっかくだからアイツらの前で笑ってから帰ってやるか」
 ファットたちが立ち止まってニヤニヤとしている。
 そして司会は続きを読み上げたのだ。

「チームアイシャ!
 ティアラビット35匹にティアバイソン1匹!!
 なんと誰もがなし得なかった40点の壁をぶち破ったーーー?!!」

 そしてその瞬間、会場はかつて無いほどに沸き上がったのだった。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...