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尾行の尾行
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「へへん、また俺たちの方が早かったな。
なんだ? まだ1匹しか狩れてないのか、ダッセーなぁ」
ファットたちが気持ちよく狩りをしている間に、ソーマはアイシャに合図を出していた。
『左の木の影に1匹、そこから見える岩の下にも1匹隠れたよ』
というのを手の形だけでアイシャに伝えていく。
当然アイシャたちの存在はファットたちには気付かれないように。
まず最初に魔石を砕き、大気中に大量のマナを撒いておいた。
ついでに大きな音とオルトの声で賑やかしくしていれば、それを聞きつけたファットたちがソーマたちに絡んでくる。
優勝するためには、他の優勝候補の得点を把握しておく方が確実だったのだ。
あえて1匹のティアラビットをファットたちに教えて、その間に2、3匹のファットラビットをアイシャたちが狩る。
魔法と弓を組み合わせて使うというアイシャたちの戦い方は、この大会にはピッタリであった。
「フランとアイシャたちがマナを使いまくってくれるお陰で助かるよ。
それにしても今ので35匹かぁ。さすがにもう追いつかないだろうし、ファットたちにはティアバイソンとでも戦っててもらう?」
「いいっスね。
ティアバイソン見当たらないっスけど、どこかにいるんスか?」
「多分だけど、すぐそこにいるよ。
大人の人も近くで待機してるし間違いないと思う」
「それにしても師匠……えげつない能力っスね。
俺、まだ全然マナを感じれないっスよ」
自分の中にあるマナはわかっても、周囲のマナを感じる人は珍しい。
ソーマ自身も前世で似たような事をしていたからできるだけであった。
そしてティアバイソンは、あえてファットたちに発見させる。
どうするかと見ていたが、まさかの押しつけ行為。
「ねぇ、こっち向かってきてるよ……」
フランも状況を理解はしているが、恐怖心はそう簡単には消せやしなかった。
そしてティアバイソンは怒りながらソーマたちに突進してきたのだ。
だが、ソーマもオルトも平然と会話を続けていた。
「せっかくのポイントなのに、勿体ないことするっスねぇ」
「本当だね。あっ……そういえば40点がどうのって前に言ってなかったっけ?」
「不可能って言われてるポイントのことっスか?
過去最高が38点って話っス。
それも結構裏で動いてたって噂っすよ」
「へぇ……じゃあアイシャたちどうなるんだろう?」
「もしかして、ティアバイソンも狩ってもらうつもりっスか?」
そのまさかであった。
ティアラビットしか狩れないと言っていたアイシャたちだったが、それはあくまでも3人だけならである。
ひとまず魔石を砕いてティアバイソンの足を止めてやった。
すぐに合図を出すと、アイシャたちは魔法の詠唱を邪魔されることなく終えて、渾身の力で放たれた矢に魔法の力が加わる。
魔力付与がレッドクラスの担任の得意とする魔法。
一撃必殺とはこのことである。
木の影から大人の冒険者が出てきて拍手をしている。
「おめでとう。心配なさそうな表情だったから気にはなっていたが、まさかこれほどの連携プレイを見せられるとはね。
それに、まさか女の子たちのチームがかなりのポイントをとっているだなんて」
ティアバイソンは大人の冒険者が運んでくれることになっているそうだ。
ソーマたちは一足先に会場へ戻り、アイシャたちも続いて後を追う。
そして得点は発表されたのだ。
「最後にーーチームファット!!
体力地力も申し分なく、多彩な剣技を駆使する優勝候補だぁ!
さぁ、チームアイシャのとんでもない記録を超えることはできたのか??!」
すでに真っ赤な顔をして震えているファットが見えた。
今から発表されるのは、圧倒的な差をつけられた自分達のポイントなのだ。
悔しくて恥ずかしくて仕方がないのだろう。
「なんと、これまたとんでもない記録だぁ!!
チームファット、なんと39点!
惜しくも1点差でチームアイシャの勝利が決まったぁぁ!!」
そしてすぐにソーマは謝罪した。
アイシャたちを勝たせたい理由があったこと。
ファットたちが開幕にティアバイソンと戦う事を知っていたこと。
それを利用して会場を盛り上げる話を大人たちとしていたこと。
なお、大会の最中は不正はせず、もしも1位と2位の点差が開いてしまったなら1点差にしてはどうだと提案していたこと。
「うぉぉ、惜しいじゃねーかファット!
ナックとレザもよくやったぞ!
負けちまったが、最高の大会だったぜ!」
大人たちの歓声はなりやまない。
「ちっ……俺たちは点数を誤魔化さなくても立派な点数を取ったんだよ。
……まぁ、恥ずかしいとは思ってたから、少しは感謝してやるけどよ……」
冒険者志望の子は気の短い者も多い。
だが、それもまた楽しいものだと感じるソーマであった。
なんだ? まだ1匹しか狩れてないのか、ダッセーなぁ」
ファットたちが気持ちよく狩りをしている間に、ソーマはアイシャに合図を出していた。
『左の木の影に1匹、そこから見える岩の下にも1匹隠れたよ』
というのを手の形だけでアイシャに伝えていく。
当然アイシャたちの存在はファットたちには気付かれないように。
まず最初に魔石を砕き、大気中に大量のマナを撒いておいた。
ついでに大きな音とオルトの声で賑やかしくしていれば、それを聞きつけたファットたちがソーマたちに絡んでくる。
優勝するためには、他の優勝候補の得点を把握しておく方が確実だったのだ。
あえて1匹のティアラビットをファットたちに教えて、その間に2、3匹のファットラビットをアイシャたちが狩る。
魔法と弓を組み合わせて使うというアイシャたちの戦い方は、この大会にはピッタリであった。
「フランとアイシャたちがマナを使いまくってくれるお陰で助かるよ。
それにしても今ので35匹かぁ。さすがにもう追いつかないだろうし、ファットたちにはティアバイソンとでも戦っててもらう?」
「いいっスね。
ティアバイソン見当たらないっスけど、どこかにいるんスか?」
「多分だけど、すぐそこにいるよ。
大人の人も近くで待機してるし間違いないと思う」
「それにしても師匠……えげつない能力っスね。
俺、まだ全然マナを感じれないっスよ」
自分の中にあるマナはわかっても、周囲のマナを感じる人は珍しい。
ソーマ自身も前世で似たような事をしていたからできるだけであった。
そしてティアバイソンは、あえてファットたちに発見させる。
どうするかと見ていたが、まさかの押しつけ行為。
「ねぇ、こっち向かってきてるよ……」
フランも状況を理解はしているが、恐怖心はそう簡単には消せやしなかった。
そしてティアバイソンは怒りながらソーマたちに突進してきたのだ。
だが、ソーマもオルトも平然と会話を続けていた。
「せっかくのポイントなのに、勿体ないことするっスねぇ」
「本当だね。あっ……そういえば40点がどうのって前に言ってなかったっけ?」
「不可能って言われてるポイントのことっスか?
過去最高が38点って話っス。
それも結構裏で動いてたって噂っすよ」
「へぇ……じゃあアイシャたちどうなるんだろう?」
「もしかして、ティアバイソンも狩ってもらうつもりっスか?」
そのまさかであった。
ティアラビットしか狩れないと言っていたアイシャたちだったが、それはあくまでも3人だけならである。
ひとまず魔石を砕いてティアバイソンの足を止めてやった。
すぐに合図を出すと、アイシャたちは魔法の詠唱を邪魔されることなく終えて、渾身の力で放たれた矢に魔法の力が加わる。
魔力付与がレッドクラスの担任の得意とする魔法。
一撃必殺とはこのことである。
木の影から大人の冒険者が出てきて拍手をしている。
「おめでとう。心配なさそうな表情だったから気にはなっていたが、まさかこれほどの連携プレイを見せられるとはね。
それに、まさか女の子たちのチームがかなりのポイントをとっているだなんて」
ティアバイソンは大人の冒険者が運んでくれることになっているそうだ。
ソーマたちは一足先に会場へ戻り、アイシャたちも続いて後を追う。
そして得点は発表されたのだ。
「最後にーーチームファット!!
体力地力も申し分なく、多彩な剣技を駆使する優勝候補だぁ!
さぁ、チームアイシャのとんでもない記録を超えることはできたのか??!」
すでに真っ赤な顔をして震えているファットが見えた。
今から発表されるのは、圧倒的な差をつけられた自分達のポイントなのだ。
悔しくて恥ずかしくて仕方がないのだろう。
「なんと、これまたとんでもない記録だぁ!!
チームファット、なんと39点!
惜しくも1点差でチームアイシャの勝利が決まったぁぁ!!」
そしてすぐにソーマは謝罪した。
アイシャたちを勝たせたい理由があったこと。
ファットたちが開幕にティアバイソンと戦う事を知っていたこと。
それを利用して会場を盛り上げる話を大人たちとしていたこと。
なお、大会の最中は不正はせず、もしも1位と2位の点差が開いてしまったなら1点差にしてはどうだと提案していたこと。
「うぉぉ、惜しいじゃねーかファット!
ナックとレザもよくやったぞ!
負けちまったが、最高の大会だったぜ!」
大人たちの歓声はなりやまない。
「ちっ……俺たちは点数を誤魔化さなくても立派な点数を取ったんだよ。
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