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【二章】『新技開発』
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ティアハントが終わり、街では冬に向けての準備が進められていた。
そのほとんどはティアアニマルが少なくなるために、順次備蓄を進めること。
気温が下がり農作物の育ちが悪くなるので、干し肉は貴重な食料になってくる。
「へぇ……魔石の買取も下がってくるんだ」
「そうなんスよ。
冒険者たちが生活のためにいつも以上に魔物を狩るもんで、毎年この時期が一番安く買い叩かれるっスね」
休みの日にソーマたちは街へと買い物にやってきていた。
少し歩いていると、商店の並ぶ通りのはずれに武道館と呼ばれる建物の横を通ったので中を覗いてみた。
「げっ……」
たまたま庭で素振りをしていたファットがソーマたちに気付いて嫌そうな表情をする。
その表情を見たオルトもまた一歩下がって隠れてしまった。
まぁそんな寄り道もしながら、ソーマとオルトは街の中心へ。
アイシャとフランが別行動をしていて、買い物を終えた2人と合流。
「何を買ったんスか?」
と聞くオルトに、アイシャは『そんなこと聞くな』と返す。
女性に買い物の内容を聞くのはタブーなのか聞かれたくない内容なのか。
フランも気まずそうにしていたため、おそらく衣服の類いか男にはわからない何かであろう。
「そういうオルトは何を買ったのよ?
どうせまた甘いものばかり買い込んだんでしょ?」
「そんなことねーよ!
ソーマ師匠も欲しいって言ってたから魔石の店に行ってたんだよ」
魔石も種類は様々で、安いスライムの魔石が2、3個で銅貨1枚。
ちなみに最低額が銅貨なだけで、あまり売れないスライムの魔石は値段交渉も簡単だったりする。
色付きのものが大体銅貨2枚程度。
大きいものや色の変わったものは、相応の相場がついている。
要するに強い魔物の魔石は高いということだ。
「そんなに魔石を買って何に使うのよ?
小さな魔石じゃ魔道具作りには向かないじゃないの」
不思議に思ったアイシャが問う。
魔道具や杖を作るには、確かに魔石が必要だ。
しかし、弱い魔石にはほとんど力もない。
当然出来上がったものを身に付けたとしても、それを持たない時とほとんど差異はないのだ。
「じゃあ幾つも使って魔道具を作ったら強くなるんじゃないの?」
今まで魔物と戦う機会がなかったため、ソーマは知らなかった。
魔石は複数を同時に使うことはできない。
エーテルも、自身のマナの使い方は教えてくれたが、魔石のマナに関しては魔法とあまり関係がなく伝えなかったのだ。
「魔石は、たとえ同じ魔物のものでも混ぜることはできないの。
溶けた鉱石に入れれる魔石は1つだけ」
アイシャは自身の弓を手に取る。
その弓もまた魔道具であり、魔石を入れて形を作りにくくなったものの中ではかなり貴重な部類になる。
フランも詳しくは知らないそうで、ソーマから受け取った魔石を触りながら聞いていた。
「そういえばエーテル先生も魔石は危険だからって言ってたよね?
ソーマくんは普通に渡されてたけど、私は触らせてもくれなかったもの」
「僕の場合は色々あったし……ね。
今のフランになら大丈夫じゃないの?」
「うん……触れてると強いマナを感じるし、あの時に触っちゃダメだって言われたのもなんとなくわかるよ」
フランは魔石をギュッと握っていた。
それだけで『自身のマナを見失いそうだ』と言うと、さすがにそれは無いだろうと皆が笑っていたのだ。
「まぁあの時のフランは、マナを感じるのにかなり苦労してたもんね。
それよりも魔石が1つまでってなんで?」
再びソーマはアイシャに訊ねる。
「本当にあんたって子供らしくないわよね。
まぁ魔石のことも知らないんだからお子様なんだろうけどさ。
詳しくはわからないけど、マナ同士がくっつく時に変化が起きるのよ」
変化というのは、簡単に言えば暴発のようなものらしい。
魔法が発動したような現象が起き、完成した魔道具には何の力も残らない。
砕けた魔石がそうであるように、魔道具の外にマナを出し切ってしまうようなのだ。
ソーマは難しい顔をして考え込む。
何かに使えないかと魔石を買ったが、どうにも問題は多そうである。
そんなソーマを見るとフランも気になる事があるようだ。
「そういえばケノン先生は重複魔法の研究者よね?
ソーマくんは一緒に生活してるって聞いたけど……」
エーテルの元で学んでいた時は、かなり貪欲にアレコレと聞いていたソーマなのだ。
ケノンの元であればその研究にも興味を持つはずなのだ。
「えっ?!
いや、エーテル先生からは危険な研究って聞いてるけど……」
(家じゃ自堕落なだけの男だしなぁ……)
複合魔法……それはいくつかの魔法を組み合わせた新しい魔法のことらしい。
ただ魔法が使えないソーマにはあまり関係のない事だろう。
しかしそれをあの男がだなんて……
さすがにそこまでは言葉にできなかったソーマであった。
そのほとんどはティアアニマルが少なくなるために、順次備蓄を進めること。
気温が下がり農作物の育ちが悪くなるので、干し肉は貴重な食料になってくる。
「へぇ……魔石の買取も下がってくるんだ」
「そうなんスよ。
冒険者たちが生活のためにいつも以上に魔物を狩るもんで、毎年この時期が一番安く買い叩かれるっスね」
休みの日にソーマたちは街へと買い物にやってきていた。
少し歩いていると、商店の並ぶ通りのはずれに武道館と呼ばれる建物の横を通ったので中を覗いてみた。
「げっ……」
たまたま庭で素振りをしていたファットがソーマたちに気付いて嫌そうな表情をする。
その表情を見たオルトもまた一歩下がって隠れてしまった。
まぁそんな寄り道もしながら、ソーマとオルトは街の中心へ。
アイシャとフランが別行動をしていて、買い物を終えた2人と合流。
「何を買ったんスか?」
と聞くオルトに、アイシャは『そんなこと聞くな』と返す。
女性に買い物の内容を聞くのはタブーなのか聞かれたくない内容なのか。
フランも気まずそうにしていたため、おそらく衣服の類いか男にはわからない何かであろう。
「そういうオルトは何を買ったのよ?
どうせまた甘いものばかり買い込んだんでしょ?」
「そんなことねーよ!
ソーマ師匠も欲しいって言ってたから魔石の店に行ってたんだよ」
魔石も種類は様々で、安いスライムの魔石が2、3個で銅貨1枚。
ちなみに最低額が銅貨なだけで、あまり売れないスライムの魔石は値段交渉も簡単だったりする。
色付きのものが大体銅貨2枚程度。
大きいものや色の変わったものは、相応の相場がついている。
要するに強い魔物の魔石は高いということだ。
「そんなに魔石を買って何に使うのよ?
小さな魔石じゃ魔道具作りには向かないじゃないの」
不思議に思ったアイシャが問う。
魔道具や杖を作るには、確かに魔石が必要だ。
しかし、弱い魔石にはほとんど力もない。
当然出来上がったものを身に付けたとしても、それを持たない時とほとんど差異はないのだ。
「じゃあ幾つも使って魔道具を作ったら強くなるんじゃないの?」
今まで魔物と戦う機会がなかったため、ソーマは知らなかった。
魔石は複数を同時に使うことはできない。
エーテルも、自身のマナの使い方は教えてくれたが、魔石のマナに関しては魔法とあまり関係がなく伝えなかったのだ。
「魔石は、たとえ同じ魔物のものでも混ぜることはできないの。
溶けた鉱石に入れれる魔石は1つだけ」
アイシャは自身の弓を手に取る。
その弓もまた魔道具であり、魔石を入れて形を作りにくくなったものの中ではかなり貴重な部類になる。
フランも詳しくは知らないそうで、ソーマから受け取った魔石を触りながら聞いていた。
「そういえばエーテル先生も魔石は危険だからって言ってたよね?
ソーマくんは普通に渡されてたけど、私は触らせてもくれなかったもの」
「僕の場合は色々あったし……ね。
今のフランになら大丈夫じゃないの?」
「うん……触れてると強いマナを感じるし、あの時に触っちゃダメだって言われたのもなんとなくわかるよ」
フランは魔石をギュッと握っていた。
それだけで『自身のマナを見失いそうだ』と言うと、さすがにそれは無いだろうと皆が笑っていたのだ。
「まぁあの時のフランは、マナを感じるのにかなり苦労してたもんね。
それよりも魔石が1つまでってなんで?」
再びソーマはアイシャに訊ねる。
「本当にあんたって子供らしくないわよね。
まぁ魔石のことも知らないんだからお子様なんだろうけどさ。
詳しくはわからないけど、マナ同士がくっつく時に変化が起きるのよ」
変化というのは、簡単に言えば暴発のようなものらしい。
魔法が発動したような現象が起き、完成した魔道具には何の力も残らない。
砕けた魔石がそうであるように、魔道具の外にマナを出し切ってしまうようなのだ。
ソーマは難しい顔をして考え込む。
何かに使えないかと魔石を買ったが、どうにも問題は多そうである。
そんなソーマを見るとフランも気になる事があるようだ。
「そういえばケノン先生は重複魔法の研究者よね?
ソーマくんは一緒に生活してるって聞いたけど……」
エーテルの元で学んでいた時は、かなり貪欲にアレコレと聞いていたソーマなのだ。
ケノンの元であればその研究にも興味を持つはずなのだ。
「えっ?!
いや、エーテル先生からは危険な研究って聞いてるけど……」
(家じゃ自堕落なだけの男だしなぁ……)
複合魔法……それはいくつかの魔法を組み合わせた新しい魔法のことらしい。
ただ魔法が使えないソーマにはあまり関係のない事だろう。
しかしそれをあの男がだなんて……
さすがにそこまでは言葉にできなかったソーマであった。
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