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マナの分離
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火魔法と風魔法を組み合わせて、炎の渦を作る……とかいう簡単な話ではなかった。
複合された性質のマナは、人には扱いきれない。
勝手に発動してしまい、威力や形状、タイミングも全て制御下から外れてしまう。
その結果生み出されたのが、件の爆発であった。
翌日の放課後、フランはソーマから複合魔法の話を聞く。
「ケノン先生が魔法を見せてくれたの?!
しかも研究棟に招待されたとか、ソーマくんって何者なのよ……」
「何者って、いや別に普通に聞いただけなんだけど……」
どうやらソーマの知っているケノンと、学園のケノンは全くの別人のようである。
それは見た目や自堕落な様子だけではないらしい。
「複合魔法は危険だから、誰にも見せないし教えないようにしてるって聞いたのよ。
先輩も研究棟を覗こうとしたら、すっごく怒られたって聞いたよ」
「いや……でも昨日はめちゃくちゃ楽しそうに話をしてくれたし、冷めた鍋を火魔法で温め直したりしてたけど……」
ともあれ、放課後にはいつも研究棟に向かうケノンの姿があるようなので、フランと共に移動することにした。
教育棟から離れ、敷地の片隅に一際小さな建物があり、壁には所々崩れている部分もある。
ソーマは扉を叩き、ケノンを呼ぶ。
すぐに返事は聞こえてくるが、なかなか出てくる様子はない。
しばらくしてカチャリと扉が開くと、モノクルを付けたケノンが顔を出す。
「おぉ、ソーマくんじゃないか。
よく来た、さぁ入ってくれ入ってくれ」
扉は開かれて、ケノンが奥へ消えていくとソーマとフランもそれに続いて中へ入る。
ケノンは髪をかき乱して、落ちていた毛布を拾って隅に投げる。
それを見たフランは言葉を失っているようで、振り返ったケノンもまたフランの姿を見て固まっている。
「そ、その子は?」
もしかしたらケノンは、ダラけた姿を見られたくなかっただけなのかもしれない。
まさか研究棟が第二の自宅と化しているとは思わなく、ソーマも少々呆れてしまった。
「わ、私はフランといいます。
エーテル先生にもお世話になっていて、その師匠であるケノン先生にお話をお伺いしたくて……」
固まっていたケノンも、フランが挨拶をすると大きなため息を1つ。
「なんだ君もエーテルの弟子なのかい。
まぁゆっくりしていってくれよ」
……ゆっくりと言われても、まともに座る場所もないのだ。
ソーマもさすがに文句を言いたかった。
「いつもいつも片付けしない性格、どうにかしてくださいよっ!
家だけでも割と大変なのに、ここって学園のものなんでしょ?
なんで私物化しちゃってるんですか?」
文句を言いながら早速片付けを始めるソーマ。
フランもそれを真似て落ちている本を拾うが、どうして良いかわからずに困惑している。
フランには拾った本でも読んでいれば良いとソーマは伝え、ケノンは怒られて渋々片付けを始めている。
相変わらず魔石は落ちているし、杖も床に放置。
マナを感じない杖もあって、ケノン曰くそれは魔石の複合を試したものらしい。
おかげで複合魔法についてはほとんど話ができず、改めて知ったことは使用する際に必要なマナの扱い方。
身体の中で2種類のマナを作り出し、混ぜ合わせて杖の先から放出する。
「2種類って言われても、マナは1つだけだよねぇ……」
フランは混乱してしまっていた。
それぞれ別の魔法が発動し、それを組み合わせる必要があると説明をされたのだ。
簡単に言えば、体内に存在するマナでそれぞれ火魔法と水魔法を作る。
それらを意識したまま合わせるわけだが、片方を意識するともう片方が上手く作れない。
右手で四角を描きながら左手で星形を描くくらいには難しいことのようだ。
しかも、それができたとしても、勝手に発動してしまい、それはつまり魔力暴走となんら変わりないものなのだ。
ソーマは深夜まで考えていたが、自身のマナが存在しない以上、コツなどもわかりようがないのであった。
複合された性質のマナは、人には扱いきれない。
勝手に発動してしまい、威力や形状、タイミングも全て制御下から外れてしまう。
その結果生み出されたのが、件の爆発であった。
翌日の放課後、フランはソーマから複合魔法の話を聞く。
「ケノン先生が魔法を見せてくれたの?!
しかも研究棟に招待されたとか、ソーマくんって何者なのよ……」
「何者って、いや別に普通に聞いただけなんだけど……」
どうやらソーマの知っているケノンと、学園のケノンは全くの別人のようである。
それは見た目や自堕落な様子だけではないらしい。
「複合魔法は危険だから、誰にも見せないし教えないようにしてるって聞いたのよ。
先輩も研究棟を覗こうとしたら、すっごく怒られたって聞いたよ」
「いや……でも昨日はめちゃくちゃ楽しそうに話をしてくれたし、冷めた鍋を火魔法で温め直したりしてたけど……」
ともあれ、放課後にはいつも研究棟に向かうケノンの姿があるようなので、フランと共に移動することにした。
教育棟から離れ、敷地の片隅に一際小さな建物があり、壁には所々崩れている部分もある。
ソーマは扉を叩き、ケノンを呼ぶ。
すぐに返事は聞こえてくるが、なかなか出てくる様子はない。
しばらくしてカチャリと扉が開くと、モノクルを付けたケノンが顔を出す。
「おぉ、ソーマくんじゃないか。
よく来た、さぁ入ってくれ入ってくれ」
扉は開かれて、ケノンが奥へ消えていくとソーマとフランもそれに続いて中へ入る。
ケノンは髪をかき乱して、落ちていた毛布を拾って隅に投げる。
それを見たフランは言葉を失っているようで、振り返ったケノンもまたフランの姿を見て固まっている。
「そ、その子は?」
もしかしたらケノンは、ダラけた姿を見られたくなかっただけなのかもしれない。
まさか研究棟が第二の自宅と化しているとは思わなく、ソーマも少々呆れてしまった。
「わ、私はフランといいます。
エーテル先生にもお世話になっていて、その師匠であるケノン先生にお話をお伺いしたくて……」
固まっていたケノンも、フランが挨拶をすると大きなため息を1つ。
「なんだ君もエーテルの弟子なのかい。
まぁゆっくりしていってくれよ」
……ゆっくりと言われても、まともに座る場所もないのだ。
ソーマもさすがに文句を言いたかった。
「いつもいつも片付けしない性格、どうにかしてくださいよっ!
家だけでも割と大変なのに、ここって学園のものなんでしょ?
なんで私物化しちゃってるんですか?」
文句を言いながら早速片付けを始めるソーマ。
フランもそれを真似て落ちている本を拾うが、どうして良いかわからずに困惑している。
フランには拾った本でも読んでいれば良いとソーマは伝え、ケノンは怒られて渋々片付けを始めている。
相変わらず魔石は落ちているし、杖も床に放置。
マナを感じない杖もあって、ケノン曰くそれは魔石の複合を試したものらしい。
おかげで複合魔法についてはほとんど話ができず、改めて知ったことは使用する際に必要なマナの扱い方。
身体の中で2種類のマナを作り出し、混ぜ合わせて杖の先から放出する。
「2種類って言われても、マナは1つだけだよねぇ……」
フランは混乱してしまっていた。
それぞれ別の魔法が発動し、それを組み合わせる必要があると説明をされたのだ。
簡単に言えば、体内に存在するマナでそれぞれ火魔法と水魔法を作る。
それらを意識したまま合わせるわけだが、片方を意識するともう片方が上手く作れない。
右手で四角を描きながら左手で星形を描くくらいには難しいことのようだ。
しかも、それができたとしても、勝手に発動してしまい、それはつまり魔力暴走となんら変わりないものなのだ。
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