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二刀流
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それから毎日のように研究棟へと足を運ぶソーマとフラン。
常に綺麗にしておくことで、ようやくオルトも研究棟に呼べる状況となっていた。
その日は外で待ち合わせていたのだが、オルトと一緒にアイシャもまた研究棟を見てみたいそうだ。
「ソーマくん、この間はありがとうね。
大会の後、友達と一緒にお母さんにお願いしに行ったんだけど、今すぐにやめろとは言われなかったわ。
……結構呆れられちゃったけどね」
やはり親が反対をするというのは、相応の理由があってのことだろう。
危険だからなどという単純なものだけではないのかもしれない。
フランも久しぶりにアイシャを見たようで、弓の他に武器を持っているのに気付いて話しかけていた。
「それって剣……じゃないよね。
変わった形してるね」
「うん、手甲剣っていうのよ。
手首の動きはかなり制限されちゃうけど、弓だけじゃ接近時に危険だからって」
手首に固定した手甲に刃物が1つ。
どう考えても矢を射るのに邪魔だとは思うが、深くは考えないようにしたソーマであった。
「なんだなんだ、大勢でやってきて。
ここには滅多に生徒は寄ることがないというのに」
扉が開くとオラクルを付けたケノンが
顔を出す。
全員が中に入ると、小さな声で『休まらぬではないか……』などと呟いていたのだが、それを聞いたのはフランだけだった。
そうして集まった研究棟の中であるが、複合魔法の課外授業といっても、特に進展のない研究のお手伝いだけである。
それ以外の時間は複合魔法のために複数の魔法を同時に発動する練習。
ケノンですら長年かけても完成はしていないのだ。
当然なのだろう、誰もがコツを掴めないと言う。
ソーマは瞑想するフランに近づいて、勝手にマナを操作し始める。
それは他の人にはやったことのないことで、詳しくはオルトにも伝えていないこと。
「あ、あの……ソーマくん?」
突然のことでフランも驚くが、皆が瞑想していたので静かに瞑想に戻る。
「せっかくだから4つに分けちゃう?
複合魔法どころか全属性混ぜれちゃうかもしれないよ?」
ソーマは正直退屈だったのだ。
フランになら度々マナをいじっていたし、何の抵抗なくやってしまった。
女性の体内を掻き回すなどと表現すると、非常に危ないことにも聞こえてくる。
これをするのはフランだけにしておこう。
さて……ともかく、これに慣れてもらってからは何をしようか?
体内で混ぜたのでは、発動させた瞬間に魔法は暴発してしまう。
では発動せずに外で混ぜればいいのではないかと思うが、マナを体外で維持するのは極めて困難だとも聞いている。
「あ、あの……ソーマくん……
なんだか一個だけ変なところに行ってるんだけど……」
「もうちょっとで体外に出せると思うんだけど、なんか壁があるんだよね」
「壁って……待って待って!
おへそがムズムズするんだよぉ……んっ?!」
フランが変わった声を出すので、オルトやアイシャもそれに気付いてしまう。
「フランたち、何してるの?」
アイシャが訊ねると、ケノンもまた何があったのかと様子を見ていたのだ。
決してやましいことはしていないのだが、ソーマは少しやり過ぎたと反省する。
「肩に虫がいたから取ってあげたんだけど、首に触れちゃってフランが……」
我ながら素晴らしい言い訳だと思うソーマである。
フランもまた恥ずかしそうにしてその言い訳に口裏を合わせる。
「そ、そうなのよ。
なんかソワソワするなぁって思ってたらソーマくんが虫を取ってくれてたみたい」
まぁそんな事ならと、瞑想は再開されたわけだが、結局1日や2日で簡単にマナの分割が習得できるはずもないのであった。
常に綺麗にしておくことで、ようやくオルトも研究棟に呼べる状況となっていた。
その日は外で待ち合わせていたのだが、オルトと一緒にアイシャもまた研究棟を見てみたいそうだ。
「ソーマくん、この間はありがとうね。
大会の後、友達と一緒にお母さんにお願いしに行ったんだけど、今すぐにやめろとは言われなかったわ。
……結構呆れられちゃったけどね」
やはり親が反対をするというのは、相応の理由があってのことだろう。
危険だからなどという単純なものだけではないのかもしれない。
フランも久しぶりにアイシャを見たようで、弓の他に武器を持っているのに気付いて話しかけていた。
「それって剣……じゃないよね。
変わった形してるね」
「うん、手甲剣っていうのよ。
手首の動きはかなり制限されちゃうけど、弓だけじゃ接近時に危険だからって」
手首に固定した手甲に刃物が1つ。
どう考えても矢を射るのに邪魔だとは思うが、深くは考えないようにしたソーマであった。
「なんだなんだ、大勢でやってきて。
ここには滅多に生徒は寄ることがないというのに」
扉が開くとオラクルを付けたケノンが
顔を出す。
全員が中に入ると、小さな声で『休まらぬではないか……』などと呟いていたのだが、それを聞いたのはフランだけだった。
そうして集まった研究棟の中であるが、複合魔法の課外授業といっても、特に進展のない研究のお手伝いだけである。
それ以外の時間は複合魔法のために複数の魔法を同時に発動する練習。
ケノンですら長年かけても完成はしていないのだ。
当然なのだろう、誰もがコツを掴めないと言う。
ソーマは瞑想するフランに近づいて、勝手にマナを操作し始める。
それは他の人にはやったことのないことで、詳しくはオルトにも伝えていないこと。
「あ、あの……ソーマくん?」
突然のことでフランも驚くが、皆が瞑想していたので静かに瞑想に戻る。
「せっかくだから4つに分けちゃう?
複合魔法どころか全属性混ぜれちゃうかもしれないよ?」
ソーマは正直退屈だったのだ。
フランになら度々マナをいじっていたし、何の抵抗なくやってしまった。
女性の体内を掻き回すなどと表現すると、非常に危ないことにも聞こえてくる。
これをするのはフランだけにしておこう。
さて……ともかく、これに慣れてもらってからは何をしようか?
体内で混ぜたのでは、発動させた瞬間に魔法は暴発してしまう。
では発動せずに外で混ぜればいいのではないかと思うが、マナを体外で維持するのは極めて困難だとも聞いている。
「あ、あの……ソーマくん……
なんだか一個だけ変なところに行ってるんだけど……」
「もうちょっとで体外に出せると思うんだけど、なんか壁があるんだよね」
「壁って……待って待って!
おへそがムズムズするんだよぉ……んっ?!」
フランが変わった声を出すので、オルトやアイシャもそれに気付いてしまう。
「フランたち、何してるの?」
アイシャが訊ねると、ケノンもまた何があったのかと様子を見ていたのだ。
決してやましいことはしていないのだが、ソーマは少しやり過ぎたと反省する。
「肩に虫がいたから取ってあげたんだけど、首に触れちゃってフランが……」
我ながら素晴らしい言い訳だと思うソーマである。
フランもまた恥ずかしそうにしてその言い訳に口裏を合わせる。
「そ、そうなのよ。
なんかソワソワするなぁって思ってたらソーマくんが虫を取ってくれてたみたい」
まぁそんな事ならと、瞑想は再開されたわけだが、結局1日や2日で簡単にマナの分割が習得できるはずもないのであった。
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