王都の魔法学園のいんちき魔法使い 〜魔法なんて使えなくても世界最強〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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フランの意地

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 驚くことにフランは負けず嫌いである。
 入学当時こそマナの量はクラス1と言っても過言ではなかったが、そもそもの量が少なかったフランは簡単にオルトに追い越されてしまう。

 それだけではなく、魔法理論についても成績は平均程度。
 特に詠唱言語は苦手で、言葉の意味も理解が乏しい状況である。
 ただ、本来ならば歳も9つとまだ若い方なので、悲観するようなものでもないのだが。

「もう一回お願い、ソーマくん」
「じゃあ指先からいくよ」
 マナが身体から離れていくと、その距離に応じてどんどん希薄に感じられていくらしい。
 ソーマ自身ではマナを外へ出すことはできないが、フラン自身で指先から出したマナは以下様いかようにも操作が可能である。
 何度も何度も自分自身から遠ざかっていくマナを感じて動かそうとするフランだが、当然すぐにはうまくいくものではなかった。

 片やオルトは既に諦めていたりもする。
 手甲が珍しくて、放課後はアイシャ達と武器の扱いを学んでいるようだ。
「僕も剣の練習でもした方がいいのかなぁ……」
 マナを動かしながら、これが何の役に立つのかとも考えた。
 学生は魔物と戦うことを許されておらず、ギルドで受けられる依頼は草むしりか掃除ばかり。
 あとはケノンの手伝いをするばかりである。

 ダラダラしていても体力は落ちてしまうし、どうして転生など望んでしまったのかとさえ感じてしまう。
 せめて大人になれば好きなこともできるのかもしれないが、そう思っているのは今だけで、実際には大人になっても大したことはしないのだろう……

 毎日こうしてダラダラ過ごして、きっと適当な仕事をして適当に人生を終えてしまうのだろうと思っていた。
 そして深いため息を吐いたソーマだったが、その瞬間とんでもないマナの力を感じて目を見開いてしまった。

「え……な、なに? ソーマくん……」
 急にソーマがマナ操作をやめたものだから、フランは驚く。
 面白がって遊ばれることはあるが、訓練はいつも真剣にやっていたので余計である。

「い……いや、かなり遠いのにマナの力を感じるから……
 街の外……?」
 普段ソーマが感じることのできるマナは、せいぜい20メートル程度。
 それでも十分チート級の能力だったが、遂に500メートル先でも感じられる様になったのか。

 ……否。それだけ遠くでも感じるほどに強力なマナが街の外に発生したのだ。
 マナの濃い中に幾つかの隙間も感じられるし、中心には地中深くへ繋がる道も感じられる。

 まるで地面が崩落して地中にあった空洞が外に繋がったかのようだ。
 となると、マナの発生源はその空洞の中にあるということだろうか?

「ちょっと様子を見てくる!」
「えっ? ど、どうしたのよソーマくん。
 そろそろみんな戻ってくるよっ?」
 呼び止めるフランを置き去りにして、ソーマは街の入り口へと駆けていくのであった。
 
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