王都の魔法学園のいんちき魔法使い 〜魔法なんて使えなくても世界最強〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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いざとなると

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 ソーマが街の入り口に着いた頃、既にそこには数名の冒険者達がいた。
 正確には自警団やギルド職員が様子を見ていて、その中に冒険者らしき男が数名。
 お互いに手続きか何かで面倒臭そうにしている様子が窺える。

 緊急事態にも思えていたソーマだが、街の人たちにしてみれば魔物がわずかに街の近くに沸いて出た程度のこと。
 外出のための登録を済ませては、冒険者達はゴブリンを倒しに駆けていく。

 普段なら探さなくてはいけない魔物が向こうから来たのだから幸運でしかないのだろう。
 しかし、元凶である地中のことは誰も気付いてはいないようである……

「君は学生か……それにまだ小さいんだから1人で外出はやめておきなさい。
 それにちょうど魔物が近くに出てきてね。
 アイツらが魔物を始末するまでは悪いが通すわけにはいかんのだよ」
 その指差す方向には、何匹ものゴブリンがうろついている。
 もちろん、囲まれれば詠唱する間も無く取り囲まれてしまうだろう。

 だがソーマもそう言われたところで引き下がるわけにはいかなかった。
「で、でも向こうの方に……」
 と言ったところで『忙しいのだから』などとあしらわれてしまう。

 明らかに異常な量のマナが存在し、もしかしたら危険が迫っているのかもしれない。
 ただ、ソーマ自身もなぜそう思うのかはわかっていなかった。
 ハッキリした理由がわからない以上は、無理やり通るというわけにもいかなかったのだ。

 ソーマが口惜しい思いで突っ立っていると、近くに男がやってくる。
 麻や綿ではなく、上質な絹の様な光沢のある黒。
 ハイネックに口元を隠す仕草が妙に怖い雰囲気を出している。
 街では見たことのない様な装いに軽く驚いたソーマ。
 やはり何かあったのかとも思ったが、男は周囲を見回して遠ざかっていく。

 ゴブリンも次々と討伐されていき、それほど時間もかからずに冒険者達は街に戻ってきた。
 手には魔石を持って、随分と上機嫌。
 そして濃いマナの発生源であった地中からは、わずかにその残渣が感じられる程度であった……

 翌日、どうして急に出ていったのかと聞かれたソーマだが、その答えはありはしない。
 ただ何となく嫌なことが起きる気がしたとでも言うべきだろうか?
 
 その日から数日間、地中の確認に行きたくともギルドで受けられる依頼には制限がかかってしまっていた。
 低ランク冒険者の外出不可や、年齢制限。
 こちらも魔物が増えたという状況に対する一時的な措置だとされていたが、ソーマが何もできなかったのは事実である。

 異世界といっても、結局のところ何もできないまま世界は動いていき、そのまま自分自身も何もしない存在になってしまうのではないかと不安になるのであった……


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