王都の魔法学園のいんちき魔法使い 〜魔法なんて使えなくても世界最強〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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去って

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 スルトが学園を去って3日後の放課後、いつものように研究棟に集まっていた。
 本当に謎の多い教師だったとソーマは考えてしまう。

「またスルト先生のこと考えてるの?」
 うんうん唸っているソーマに対し、フランは不満そうに問いかけてくる。

 あれ以来、フランの放つ魔法はみるみる威力を増していったのだ。
 正確には、スルトの話す内容をソーマが噛み砕いてわかりやすくフランに教えてからである。

 水を生み出すための理屈は、魔法だからではなく現実的に考えさせられた。
 大気中の水素と酸素を結合したところで、得られる量は大したことはない。
 この世界ではアスファルトは見たことがないし、だったら湿った地中から吸い出した方が早いのだとか。

 あるいは火というものは無から生み出すのではなく可燃物と酸素を必要とする。
 風は気圧の差異が生み出すものだとか、地魔法はそもそも物質の持つ元素の配列などに関わるものなのだとか。

 さて、もしそれが魔法の出来に関わるのだとして、どこまでフランが理解できるのだろうか?

「原子と中性子って言ってたけど、それって誰が見つけたのかな?」
 そんな素朴な疑問だって当然出てくる。
 そこに加えて音や波なんて話が交われば、もうちんぷんかんぷんである。

 素粒子や光粒子の話など、実際にどこまで本当なのかもわからないというのに、まるで地球で習ったかのように話をしていたのだ。
 まぁ……地球ですら、そこまで細かい話を聞いた記憶も無いのだけども……

「スルト先生の言ってることって、すっごく難しいのにソーマくんはよくわかるね」
 聞いたことがあるからだとは、とてもいえないでいた。
 それなのに魔法は使えないのだとオルトが言うものだから、少々ムッとしたが、ソーマにも少しは希望が見えていたのだ。

 確かに魔法を使う際に前世で学んだ知識は大いに役に立つらしい。
 事実、フランは無詠唱でも詠唱時の半分程度の威力は出せるようになっていたのだ。
 それに、魔法のことが理解できるに比例して、魔力の総量と回復速度も早まっていくようであった。

 ならば自分はなぜ魔力がゼロなのだと苛々も募ったが、イメージが役立つのは自身のマナだけではなかったのだ。

『魔石にも有効である』

 ただし、自分自身のマナを操る数倍は難しく、魔石を割った瞬間にしか手応えは感じなかった。
 ギルドで下水道の掃除や、外周の草むしりの依頼を受けながら時々それを試すソーマ。
 
 起きる現象など結果でしかない。
 火魔法だろうと水魔法だろうと、やり方次第では風を巻き起こすことは可能である。
 魔法という不思議な力は、なんらかの力が世界に影響して起こした現象。

 ふと、ソーマはスルトの一言を思い出す。
 それは最後の授業の時間。
『まだ、これだけでは魔法の全ては理由がつかない。
 なにか、では思いつかず、観測できない事象があるはずなのだろう』

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