王都の魔法学園のいんちき魔法使い 〜魔法なんて使えなくても世界最強〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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リダクション

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「終節の一文だけで魔法が発動できるなんて、ありえないわよっ!」
 中庭へと急ぐタリアが、不満を漏らし、それをソーマたちが追いかけ後ろを走る。

 話を聞いてフランも不思議そうにする。
「終節って、魔法の名前を叫ぶところだよね?
 そこまでリダクションできるなら、無詠唱ノーワードでいけるんじゃないの?」
「さ……さぁ? ちょっとわからないけど」
 無詠唱の使い手フランの当たり前は、タリアには通じないようだ。
 
 詠唱には決まったパターンがある。
 まず初めに序節として、どのような属性の力が必要になるのか。
 精霊はこの序節を聞いて、次の節に耳を傾けるのだ。

 逆に言えば、この序節が無い場合は基本的には魔法は発動しない。
 簡単な『火の精霊よ』とだけでも言えばいいだけであり、これは『私は今から火魔法を使うよ』と言っていることになるのだ。

 ここを破棄したい場合、自身のマナの質を火の精霊に近づけて同族に成り代わることが必要だと考えられている。
 要するにフランが最初に行う、イメージによるマナの変質だ。
 これが割と難しいので、余計にマナを失うし、威力も乏しくなってしまう。

 さすがに威力自体はそこまで大きくはないのだとタリアは言う。
「でも、エーテル先生でもまともな威力を出すには2節の破棄が限界だって言ってたのに……」
 いや、フランがそれを言ってはエーテル先生が当て馬にしかかんじられないじゃないか。

 次の起節が対象を指す。
 正面に向かってなのか、その場に留まるのか。
 難易度は上がるが、複雑な軌道を描くことも可能である。
 問題は、思っている軌道と詠唱により出来上がった軌道には、かなり差異が生じてしまう点である。
 なので、多くの場合は『かの者』『仇なす者』といった、対象物に真っ直ぐ向かうように使われる。
 消費する魔力もそこそこで、狙いを定める必要が無くなるからだ。

 これは割と楽に破棄できて、エーテル先生もここから削るのが良いとまで言っていたくらいだ。
 何せ、多くの場合は進むか止まるの2パターンになるのだ。
 体内で行なっていたマナの移動訓練の延長。
 難易度はかなり上がるが、魔法を使える者であれば基本はわかっている。
 それを体外でも行えるように訓練するだけである。

「使うのはファイアーバレットだけなんだけど、フラッグにギリギリ届く距離まで飛ばせるみたい。
 私なんて、全詠唱してもせいぜい20メートルよ……」
 そんな話を聞いているうちに中庭へ到着し、そこでは多くの生徒に混ざって3人の男子生徒と女性教師がファイアーバレットの練習をしていた。

「ほら、イエローのカーナ先生よ」
 黒髪に黒い衣装の女性教師。
 首にかかった担当クラスを象徴する黄色い宝石のネックレスが、唯一の色味であろうか。

「次……」
「ファイアーバレット!」
 発動した火の弾は、確かに小さく威力も心許ないが、それが詠唱破棄でできたものならば十分すぎるほどである。
 大会のルール上、フラッグに近づくことのできる限界ラインは15メートル。
 さすがに限界まで近づくと、防衛側に丸見えなので基本は手前の20メートルラインで攻撃が行われる。

 そして一般生徒の魔法では、この20メートルがギリギリのラインなのだ。
 つまり、最初から優秀な生徒しか参加ができないとも言われている。

「真っ直ぐ打つ練習中だってさ……
 あんな魔法を本番でバンバン撃たれたら、私たちのフラッグなんてすぐに全滅しちゃうわよ」
 まるで苦虫を噛み潰したようなタリアの表情。

 そこに杖を抱えたポーラもやってくる。
「私もあれ見ちゃったら、参加するの嫌になっちゃったよ」
 しばらく間を置いて、再びファイアーバレットが放たれる。
 さすがのフランも、その完成度の高さには脱帽のようだ。

「本当ね、イエローってすごく魔法が上手な子が多いのね」
「違うわよ、カーナ先生があの3人だけ自分の管理棟で特訓させてたらしいのよ。
 他のイエローの子が言ってたんだから、多分本当なんだと思う」
 そう言って指差すタリアのその先には、同じイエローだというのに3人を睨む様子の生徒たち。

 残り2節が、発節と終節で、終節はつまり魔法の名前。
 ファイアーバレットと叫ぶことで、精霊には『魔法の詠唱はここでおしまい』と伝えるのだ。
 このタイミングをわざと遅らせる人もいるが、その分時間がかかり余計な魔力を消費することにも繋がる。

 発節には力の大きさと具体性が盛り込まれるが、ここが一筋縄ではいかない。
 フランが詠唱文字を覚えられないと言っていた多くは、この発節だった。
 『燃え盛る』のか『猛る』のか『轟々と』か、ただ『明滅せし』なのか。
 どこの日本の厨二言葉かと思ったが、確かにこの言葉の意味を正確に捉えるのは難しいだろう。
 ソーマですら理解は難しいし、そもそも声にして発することもしたいとは思っていなかった。


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