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6歳児の仕事
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エーテルは、しばらくは王都の宿で生活をすると言っていた。
どうせ帰る資金のことも考えずに来たのだろうが、せっかくならばとソーマも一緒に行くことにする。
「私なんかについてこなくても、ケノン師匠といればいいのに」
「えー……嫌ですよ。
掃除も洗濯も、炊事だって僕がやらされてるんですよ?
加えて研究棟の片付けまでしなきゃいけないんだから、いい加減ウンザリです」
『あぁそういうことか』とエーテルも納得して、どんなものかとケノンの家を覗きに行くエーテル。
いくらソーマが片付けているとはいえ、きっと杖は床に転がり本は無造作に積まれているだろう。
あの人はそういう人なのだ。
しかし、そんな思いとは裏腹に、部屋の中はスッキリ整頓されていてケノンが住んでいるなどとは到底想像がつかない。
いや、研究棟がそうであったように、こちらもまたソーマが綺麗に保っているのだとすれば……
「うん……ケノン師匠を紹介したのは失敗だったわ。
反面教師ってやつになるかと思ったけど、まさか6歳の子にここまでやらせてるだなんてね」
ソーマとしては、狭くて寝る場所も無かったため仕方なく掃除しただけだが、エーテルにとってはかなり想定外のことだったようだ。
普通の子供ならば、箱に押し込む程度のことはできても整頓は難しい。
子供が来れば、嫌でもケノンは片付けをせざるを得ないだろうと考えていたのだ。
「まぁ、ここに帰ってくるのは週に2回くらいだから、そこまで汚されませんけどね」
「あの馬鹿師匠……
やめた方がいいって言ってるのに、相変わらず学園で寝泊まりしてるわけ?
そのくせ外面だけはいいんだから……」
エーテルは棚から数冊の本と手作りのポーションを一つ手に取り、家を出る。
主に歴史書と世界に住む種族の資料。
精霊戦争以前のことは、ソーマもほとんど知らなかったのだが、もしかしたら魔法が使えない理由がわかるかもしれないと思い調べてみるそうだ。
王都の宿は、片田舎のそれよりも一際大きい。
食事もついて湯浴みもできる。
しかもギルドで受注するはずの依頼も、一部は宿の受付で対応してくれるという便利さ。
「へぇー……同じ宿でも全然違うんですね」
入るなりソーマの視線はあちらこちらへと。
気になる物が多すぎて、目が眩むようだった。
壁には大きな地図が貼られており、薬草を煮出す釜や、離れには鍛冶場も揃っている。
木材は大量に積まれ、暖炉の横にはいくつかの楽器らしきもの。
多種多様な人々が利用できる施設でもあり、全て有償ではあるものの便利さには事欠かないのだとか。
「ついでに、お金が無くても掃除と薪割りと皿洗いで素泊まりできるよってプランもあるからね。
まぁソーマくんならお金に困ることは無いだろうけど」
エーテルは棚にあったポーションを店主に渡すと、本来なら宿泊のためにお金を払わなくてはいけないところが、逆に銅貨4枚を受け取ることに。
「ここって高いんですよね?
ポーション一本くらいで泊まれるようには見えないんだけど……」
「そりゃあソーマくんが作ったポーションなんだから、高く買ってくれるわよ。
ここの宿は鑑定具持ちの人が経営してるからね。
現物払いも全然オッケーなのよ」
鍛冶場や釜を借りてアイテムを作り、それで宿代を稼ぐ。
そんな冒険者もいたりするので、見ていて飽きないらしい。
買取価格は若干渋いとはいえ、鑑定具のお陰でとてもスピーディー且つ正確な金額を提示してくれる。
腕のいい職人を囲うためだったり、気前良く練習する場を与えてくれているだとか言われるのだが、実際のところは単に儲かるからだとエーテルは言っていた。
そして、その日からしばらくは、また違った意味でこき使われてしまうソーマの姿が、そこにはあったのだった……
どうせ帰る資金のことも考えずに来たのだろうが、せっかくならばとソーマも一緒に行くことにする。
「私なんかについてこなくても、ケノン師匠といればいいのに」
「えー……嫌ですよ。
掃除も洗濯も、炊事だって僕がやらされてるんですよ?
加えて研究棟の片付けまでしなきゃいけないんだから、いい加減ウンザリです」
『あぁそういうことか』とエーテルも納得して、どんなものかとケノンの家を覗きに行くエーテル。
いくらソーマが片付けているとはいえ、きっと杖は床に転がり本は無造作に積まれているだろう。
あの人はそういう人なのだ。
しかし、そんな思いとは裏腹に、部屋の中はスッキリ整頓されていてケノンが住んでいるなどとは到底想像がつかない。
いや、研究棟がそうであったように、こちらもまたソーマが綺麗に保っているのだとすれば……
「うん……ケノン師匠を紹介したのは失敗だったわ。
反面教師ってやつになるかと思ったけど、まさか6歳の子にここまでやらせてるだなんてね」
ソーマとしては、狭くて寝る場所も無かったため仕方なく掃除しただけだが、エーテルにとってはかなり想定外のことだったようだ。
普通の子供ならば、箱に押し込む程度のことはできても整頓は難しい。
子供が来れば、嫌でもケノンは片付けをせざるを得ないだろうと考えていたのだ。
「まぁ、ここに帰ってくるのは週に2回くらいだから、そこまで汚されませんけどね」
「あの馬鹿師匠……
やめた方がいいって言ってるのに、相変わらず学園で寝泊まりしてるわけ?
そのくせ外面だけはいいんだから……」
エーテルは棚から数冊の本と手作りのポーションを一つ手に取り、家を出る。
主に歴史書と世界に住む種族の資料。
精霊戦争以前のことは、ソーマもほとんど知らなかったのだが、もしかしたら魔法が使えない理由がわかるかもしれないと思い調べてみるそうだ。
王都の宿は、片田舎のそれよりも一際大きい。
食事もついて湯浴みもできる。
しかもギルドで受注するはずの依頼も、一部は宿の受付で対応してくれるという便利さ。
「へぇー……同じ宿でも全然違うんですね」
入るなりソーマの視線はあちらこちらへと。
気になる物が多すぎて、目が眩むようだった。
壁には大きな地図が貼られており、薬草を煮出す釜や、離れには鍛冶場も揃っている。
木材は大量に積まれ、暖炉の横にはいくつかの楽器らしきもの。
多種多様な人々が利用できる施設でもあり、全て有償ではあるものの便利さには事欠かないのだとか。
「ついでに、お金が無くても掃除と薪割りと皿洗いで素泊まりできるよってプランもあるからね。
まぁソーマくんならお金に困ることは無いだろうけど」
エーテルは棚にあったポーションを店主に渡すと、本来なら宿泊のためにお金を払わなくてはいけないところが、逆に銅貨4枚を受け取ることに。
「ここって高いんですよね?
ポーション一本くらいで泊まれるようには見えないんだけど……」
「そりゃあソーマくんが作ったポーションなんだから、高く買ってくれるわよ。
ここの宿は鑑定具持ちの人が経営してるからね。
現物払いも全然オッケーなのよ」
鍛冶場や釜を借りてアイテムを作り、それで宿代を稼ぐ。
そんな冒険者もいたりするので、見ていて飽きないらしい。
買取価格は若干渋いとはいえ、鑑定具のお陰でとてもスピーディー且つ正確な金額を提示してくれる。
腕のいい職人を囲うためだったり、気前良く練習する場を与えてくれているだとか言われるのだが、実際のところは単に儲かるからだとエーテルは言っていた。
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