21 / 29
ルルモア大学進学~二年生編
9
しおりを挟む
第一の計画失敗後、ジュリーは何事もなかったかのように次の講義を受けました。時折、アルベルトとメイを見てうっとりしたり、エイプリルを見て歯軋りしたりしますが、学業を疎かにすることはありません。ジュリーは真面目で、切り替えができる人なのです。そして何事にも全力です。それゆえに、次の計画を実行すると決めたら必ずやり遂げます。講義終了の鐘を耳にするなり、我先にと講義室を飛び出しました。
第二の計画は『貴族令嬢ですけど、使用人の真似事をしてお掃除してみましたの。でも慣れないことはするものじゃありませんわね。ごめんあそばせ』です。
これは、校内清掃を行った振りをして、死角となる曲がり角からバケツの水を浴びせ掛けるというものです。最初は、本当に掃除をして雑巾を絞った汚水をぶっ掛ける気でいたのですが、例の如く『それは、いくらなんでもやりすぎじゃろう』という人情で、とことん洗浄したバケツに、飲んでも平気なとても綺麗な水が入っています。
先程の講義は、午前中最後のものでした。よって、次にアルベルトたちが向かう場所は食堂です。ジュリーはアルベルトたちが食堂に向かうルートを知っています。
これまで、散々、後を追い回してきているので、三人がどのような経路を辿って食堂に向かうかという情報を得ているからです。決して褒められた行為ではありませんが、これもまた真面目であるがゆえの、努力の賜物と言えるでしょう。
(待っとけドラム缶! びしょ濡れにしたる!)
ジュリーは水の入ったバケツを手に、階段前の壁に隠れてエイプリルがやってくるのを今か今かと待ちました。三人が並んで歩くときは、必ずエイプリルがアルベルトとメイのやや後ろにいます。横並びになると幅を取り往来の邪魔になってしまうからです。
ジュリーは、もし自分なら、そういうことにもなっていないのにと思います。アルベルトを真ん中に、メイと自分がその左右に寄り添う姿を想像し、思わず軽くよだれを垂らす程にうっとりします。ですが、それがよくありませんでした。そんな幸せな白昼夢の中に身を置いてしまった為に、手の力が緩んでバケツを落としてしまったのです。
(あっ! いかん!)
我に返ったジュリーの目には、落下していくバケツがスローモーションになって映りました。中に入っている水が粘性を得たように緩やかに動き、縁を溢れて跳ねる飛沫がバケツに追い越されていきます。宙に留まった透明な球体が、踊り場の窓から差し込む陽射しでキラキラ光り、アルミ製のバケツの角が爪先にめり込みました。
第二の計画は『貴族令嬢ですけど、使用人の真似事をしてお掃除してみましたの。でも慣れないことはするものじゃありませんわね。ごめんあそばせ』です。
これは、校内清掃を行った振りをして、死角となる曲がり角からバケツの水を浴びせ掛けるというものです。最初は、本当に掃除をして雑巾を絞った汚水をぶっ掛ける気でいたのですが、例の如く『それは、いくらなんでもやりすぎじゃろう』という人情で、とことん洗浄したバケツに、飲んでも平気なとても綺麗な水が入っています。
先程の講義は、午前中最後のものでした。よって、次にアルベルトたちが向かう場所は食堂です。ジュリーはアルベルトたちが食堂に向かうルートを知っています。
これまで、散々、後を追い回してきているので、三人がどのような経路を辿って食堂に向かうかという情報を得ているからです。決して褒められた行為ではありませんが、これもまた真面目であるがゆえの、努力の賜物と言えるでしょう。
(待っとけドラム缶! びしょ濡れにしたる!)
ジュリーは水の入ったバケツを手に、階段前の壁に隠れてエイプリルがやってくるのを今か今かと待ちました。三人が並んで歩くときは、必ずエイプリルがアルベルトとメイのやや後ろにいます。横並びになると幅を取り往来の邪魔になってしまうからです。
ジュリーは、もし自分なら、そういうことにもなっていないのにと思います。アルベルトを真ん中に、メイと自分がその左右に寄り添う姿を想像し、思わず軽くよだれを垂らす程にうっとりします。ですが、それがよくありませんでした。そんな幸せな白昼夢の中に身を置いてしまった為に、手の力が緩んでバケツを落としてしまったのです。
(あっ! いかん!)
我に返ったジュリーの目には、落下していくバケツがスローモーションになって映りました。中に入っている水が粘性を得たように緩やかに動き、縁を溢れて跳ねる飛沫がバケツに追い越されていきます。宙に留まった透明な球体が、踊り場の窓から差し込む陽射しでキラキラ光り、アルミ製のバケツの角が爪先にめり込みました。
0
あなたにおすすめの小説
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。
水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。
王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。
しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。
ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。
今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。
ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。
焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。
それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。
※小説になろうでも投稿しています。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる