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ルルモア大学進学~二年生編
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(ここや! すっ転びさらせ! ドラム缶!)
ジュリーはドレスの裾を掴んで片足を高く上げると、思い切りエイプリルのスカートの裾を踏んづけました。この日の為に、用意したのは特注の鋼鉄ハイヒールです。
ドゴッ──。
鋼鉄のヒールが、エイプリルのドレスを廊下に縫い止めます。
その直後のことでした。
「ん? 今なんか音がしなかったか?」
「ええ、私も聞こえました。エイプリル様は?」
そう言って、アルベルトとメイが立ち止まったのです。
そしてエイプリルも二人に合わせて立ち止まります。ただ、エイプリルは鼓膜が片方破れていたので音には気づきませんでした。最近、ペットのオークがオークジェネラルに進化し、思わぬ苦戦を強いられ鍛練の際に負傷したのです。
ゆえに、エイプリルはメイの問い掛けに肩を竦めようとします。
「アタクシは何も……あら?」
エイプリルは違和感を覚えました。肩が上がりません。
言わずもがな、スカートの裾が踏まれているからです。
「どうした?」
「いえ、なんだか肩が重いぬぅううおおですわああっ!」
エイプリルは力任せに肩を前方に押し出しました。
(なんちゅう馬鹿力や! こなくそおおお!)
ジュリーは顔を真っ赤にして踏ん張りましたが、エイプリルのドレスもまたオークとの戦闘に耐えうるだけの特注品です。善戦こそしましたが、思い切り足元をすくわれて空中で一回転し、ビターンと地べたに体を打ちつける羽目になりました。
アルベルト、メイ、エイプリルの三人が振り返ります。
「またなんか聞こえたよな?」
「ええ、私も聞こえましたけど……」
「アタクシも今度は聞こえましたわ。でも何も見当たりませんわね。あら?」
エイプリルがドレスのスカートに窪みが出来ていることに気づきます。
「これは……ルルモア魔法大学に伝わる最強の怨霊、ピンヒールの魔女の亡霊の仕業かもしれませんわね……。封印が解けたのかもしれませんわ」
「ピンヒールの魔女の亡霊……⁉」
アルベルトとメイが顔を青くします。エイプリルは神妙な顔で頷きます。
「遠い昔、このルルモア魔法学園に、鋼鉄のピンヒールで他人のスカートの裾を踏んづけて転ばせる魔女がいたのです。犠牲者が多すぎた為に、アタクシの先祖が討伐して、その怨霊を封印したのですわ。全部嘘ですけどね。オホホホホ」
「な、なんだよ、脅かすなよ」
「そ、そうですわ」
怯えてくっつくアルベルトとメイを見て、エイプリルは指を指して笑います。三人はわいわいやりながら、ジュリーを置いて次の講義室へと向かいます。
ジュリーは俯せでグスグス泣いていました。
(こんなんなっとっても、誰一人として声掛けよらんて、どうなっとるんじゃ?)
こうして第一の計画は、失敗しました。ですがジュリーはめげません。第二の計画に移るため、涙を拭いて立ち上がり、三人の後を追うのでした。
ジュリーはドレスの裾を掴んで片足を高く上げると、思い切りエイプリルのスカートの裾を踏んづけました。この日の為に、用意したのは特注の鋼鉄ハイヒールです。
ドゴッ──。
鋼鉄のヒールが、エイプリルのドレスを廊下に縫い止めます。
その直後のことでした。
「ん? 今なんか音がしなかったか?」
「ええ、私も聞こえました。エイプリル様は?」
そう言って、アルベルトとメイが立ち止まったのです。
そしてエイプリルも二人に合わせて立ち止まります。ただ、エイプリルは鼓膜が片方破れていたので音には気づきませんでした。最近、ペットのオークがオークジェネラルに進化し、思わぬ苦戦を強いられ鍛練の際に負傷したのです。
ゆえに、エイプリルはメイの問い掛けに肩を竦めようとします。
「アタクシは何も……あら?」
エイプリルは違和感を覚えました。肩が上がりません。
言わずもがな、スカートの裾が踏まれているからです。
「どうした?」
「いえ、なんだか肩が重いぬぅううおおですわああっ!」
エイプリルは力任せに肩を前方に押し出しました。
(なんちゅう馬鹿力や! こなくそおおお!)
ジュリーは顔を真っ赤にして踏ん張りましたが、エイプリルのドレスもまたオークとの戦闘に耐えうるだけの特注品です。善戦こそしましたが、思い切り足元をすくわれて空中で一回転し、ビターンと地べたに体を打ちつける羽目になりました。
アルベルト、メイ、エイプリルの三人が振り返ります。
「またなんか聞こえたよな?」
「ええ、私も聞こえましたけど……」
「アタクシも今度は聞こえましたわ。でも何も見当たりませんわね。あら?」
エイプリルがドレスのスカートに窪みが出来ていることに気づきます。
「これは……ルルモア魔法大学に伝わる最強の怨霊、ピンヒールの魔女の亡霊の仕業かもしれませんわね……。封印が解けたのかもしれませんわ」
「ピンヒールの魔女の亡霊……⁉」
アルベルトとメイが顔を青くします。エイプリルは神妙な顔で頷きます。
「遠い昔、このルルモア魔法学園に、鋼鉄のピンヒールで他人のスカートの裾を踏んづけて転ばせる魔女がいたのです。犠牲者が多すぎた為に、アタクシの先祖が討伐して、その怨霊を封印したのですわ。全部嘘ですけどね。オホホホホ」
「な、なんだよ、脅かすなよ」
「そ、そうですわ」
怯えてくっつくアルベルトとメイを見て、エイプリルは指を指して笑います。三人はわいわいやりながら、ジュリーを置いて次の講義室へと向かいます。
ジュリーは俯せでグスグス泣いていました。
(こんなんなっとっても、誰一人として声掛けよらんて、どうなっとるんじゃ?)
こうして第一の計画は、失敗しました。ですがジュリーはめげません。第二の計画に移るため、涙を拭いて立ち上がり、三人の後を追うのでした。
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