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それぞれの成長 元戦乙女隊編
2.ブートキャンプと言えば鬼教官(2)
しおりを挟むサブロの顔に抱きついて微笑むニーナを、エリーゼは切なげに眉を下げて見ていた。俺はその肩に手を遣り、顔を向けたエリーゼと見つめ合う。
「エリーゼ、よく聞いてくれ」
エリーゼは「な、何?」と顔を赤くして目を泳がす。俺は深く息を吸い込む。
「これから地獄の鍛練が始まるってのに何を感傷に浸っとるんだこのバカタレが! それに何の脈絡もなく桃色な展開を期待してるんじゃないよ!」
俺はサブロと三勇士の方へ顔を向けて「整列!」と厳しい声を張り上げる。女子たちとサブロがビクリと肩を跳ね上げて動きを止める。
「聞こえなかったのか⁉ 整列しろ! エリーゼもだ!」
サブロを含めて全員が俺の前に整列し姿勢を正す。
「良いか諸君! あと数日のうちにラグナス帝国が戦争を仕掛けてくる可能性がある! 諸君らの能力値では生き残ることは難しい! それは理解しているか⁉」
沈黙したので、俺は【疾駆】を使ってイザベラの背後に移動。手首を掴んで捻り上げる。それとほぼ同時に膝裏を軽く蹴って背を押さえ地面に這いつくばらせる。
一瞬で組み伏せられ、苦悶の呻きを上げるイザベラを見て皆息を飲む。俺も自分でやって、えぇ……? となるくらいには驚いた。
最近、鍛練ばかりで模擬戦をしていなかったから、こんなに円滑に体が動かせるとは思っていなかった。振り返ってみれば、ダンジョンで戦っているのは俺の頼れる仲間たちばかり。俺の戦闘での貢献はほぼない。ドゴン一味と戦ったときも、歩いてちょっと避けて術を使っただけ。チエ戦にしたところで、戦ったとは言い難い。
不意の思いつきで、でっかい【過冷却水球】を作っただけだ。まさかこんなことになるなんて、という結末を招いただけ。線路に石を置いて電車を脱線させてしまった悪戯小僧と内容的には変わらない。ただアワアワしただけだ。
その事実に愕然としたが、動揺は顔には出さない。今は出してはいけないときだ。俺は心をしっかりと持って声を張り上げた。
「諸君らの中で最も強いイザベラですらこのザマだ! もし俺がラグナス帝国の兵だったらこの後どうなる⁉ ただ殺されるだけで済むと思うか⁉」
言い終えてから、イザベラを解放して肩から手首まで回復術を掛ける。イザベラは立ち上がると素早く列に戻って直立し、表情を引き締めた。
「悪い。回復術は掛けたが、痛いところはないか?」
「はっ、ありません!」
「よし! 良い返事だ!」
俺は皆に今日一日徹底的に模擬戦を行うように指示をする。エリーゼとレノアは回復術を使えるとのことなので、怪我をしたときは二人に任せることにした。
「サブロはスキルと爪と牙の使用を禁止! 戦乙女隊は術使用を禁止! 使用武器はそれぞれ木製の物を使うこと! 疲労が出たら無理せず休憩を取れ!」
女子四人が声を揃えて「はっ!」と返事をする。そこにサブロの「グァ!」という声が重なる。全員、顔つきは真剣そのもの。頑張ってくれそうだ。
「昼にまた様子を見に来る! 諸君らの成長に期待する!」
俺が敬礼すると、全員から敬礼を返された。鍛練と言えば鬼教官。なんとなくやってみたら受け入れられたので真面目に演じてしまった。
俺にはそんなのいなかったけども。いたらもっと強くなれてたかもな。
少しばかり羨ましく思いつつ、併設してある冒険者ギルドの裏口の扉を開けたところで突然の違和感。自然に体が動きを止めた。
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