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それぞれの成長 元戦乙女隊編
1.ブートキャンプと言えば鬼教官(1)
しおりを挟む冒険者ギルドに到着後、俺はエリーゼに説明を任せて一旦別れ、領主館までひとっ飛び。イワンコフさんに事情を話し、今度はレノアを抱えてとんぼ返りした。
午前九時ともなると、人の往来も増えていたのでそれなりに目撃者は出たと思うが、そんなことより、レノアのうっとりした顔の方が気になった。
「秘書の仕事と英雄の妾でしたら、やはり後者ですわよね」
ウフフ、と柔らかい体でしがみつかれると弱った。打算のない誘惑には【魅惑無効】が効果を発揮しない。
打算的なことを口にしながらそうではない部分もしっかりあるというのが分かってしまうので、内面おっさんは鼓動が速まり着地後しばらく前のめりになってしまった。
若返りの弊害がこんなところにあると知る。
エリーゼのときとは大違いだ……! 失礼な話だけども……!
女性的なふっくらとした体型にやられた。今後は気をつけよう。
どうやってだよ。このバカチンが。
それはそうとして、イワンコフさんは秘書の連れ出しを二つ返事で了承した。
このクソ忙しいときにと怒られるかと思っていたので意外だったが、よくよく考えてみればイワンコフさんは生粋の脳筋。意外でも何でもなかったと思い直した。
「鍛練か! それは良い! わしも後で顔を出すぞ!」
そう言って顔を綻ばせていたが、好きにしてくれ、と思う。
訓練場に入ると、イザベラが片手を上げて「よっ」と笑顔で迎えてくれた。ニーナは「おはようございます」と丁寧にお辞儀。歓迎してもらえてなりよりだ。
「おはよう、ニーナ、イザベラ、久しぶり」
「久しぶりってほど日は空いてねぇけどな」
「会えて、嬉しい」
「あら、お二人さん、アタクシには何の挨拶もありませんの?」
「そうむくれるな。ユーゴと空の旅ができたんだから良いだろう?」
色こそ違うものの、全員エリーゼ同様の装い。四人揃うと某歌劇団の控え室に訪れたような気分になる。知ってはいたが、やはり美人揃いだ。
わいわいやっている四人を見ながら、ほのぼのした気持ちでサブロを呼ぶ。勾玉から光が放たれ訓練場にサブロが現れると、エリーゼを除く元戦乙女隊の三勇士が絶句。立派な竜になったサブロを見つめて硬直した。
「さっき説明した通り、あのダークドラゴンがサブロだ」
「は? あれがサブロ……?」
「ちょ、ちょっと理解に苦しむ成長速度だと思うのですけれど……?」
「大きい、強そう、可愛い!」
ニーナがトテトテと駆け寄っていき、サブロの前に立つ。イザベラとレノアも少し顔を見合わせた後でその背を追う。
サブロはニーナが怯えずにいてくれたことが嬉しかったのか、少しうるうるしながら顔を寄せた。ニーナは両手で「よしよし」とサブロの顔を撫でる。
「へぇ」
サブロを抵抗なく受け入れたニーナに驚き、思わず息が漏れる。何か理由があるのかもしれない。気になった俺は隣にいるエリーゼに顔を向けた。
「ニーナって物怖じしない性格?」
「昔はそうじゃなかったんだが、以前言っていたろ? 四女だから空気だと」
「うえ、あれって本当だったの?」
「ああ、五歳になるまでは末っ子で猫可愛がりされてたんだが、下に弟と妹が出来てからは傍目から見ても寂しいものだったよ。それで腹が据わったんだと思う」
兄や姉は自己主張が激しく存在感があったらしいのだが、ニーナにはそれが備わっていなかった。とエリーゼは言う。
「家族で旅行に行った際、一人だけ置いて帰られたこともあったらしい」
「うわー、それは相当だね。親はプロ野球の監督でもしてたのかね?」
「プロヤキュー?」
「いや、何でもない。忘れて」
エリーゼは僅かに首を傾げたが「よく分からないが、分かったよ」と言ってサブロと戯れる三勇士の方へと視線を戻した。
「ニーナは家族にないがしろにされる環境を受け入れることで自立したんだと思う。歳を重ねるごとに段々と感情が希薄になっていったのも、考えると寂しくなるからだろうって、レノアがね。私もそうだと思う。だから、あんなに楽しそうな姿を見るのは久しぶりで、凄く嬉しいんだ」
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