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眠り姫の目覚め編

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 目覚めてから一週間が過ぎて、私はようやく一人で動けるようになった。
 七年も眠り続けていた体は、随分と痩せ細り、足も萎えていた。
 最初は一人でベッドから降りるのも難しくて、もどかしい思いをした。
 でも、苦労だとは思わなかった。
 むしろ、この程度で済んでいることに驚いた。

 だって、床擦れも関節の強張りもなかったんだもの。
 そんなの、驚かない方がおかしいわよね。

 私が貧弱になった程度で済んでいるのは、アリーシャの甲斐甲斐しい世話のお陰だ。目覚めるまでの間、ずっと世話をしてくれていたそうだ。
 アリーシャが妊娠出産、子育てなんかで世話をできなくなった期間は、シクレアとディーヴァが代わりにやってくれていたらしい。もう男のロディに任せる年齢じゃないからって、アリーシャに世話の仕方を訊いて率先してやってくれたのだとか。

 私が目覚めると信じて、根気強く世話をしてくれた女性陣三人には、本当に感謝してる。いえ、みんなに感謝ね。男性陣も、城にいる間は毎日お見舞いに来てくれてたって話だし、本当に私は恵まれてると思う。

 エルモアによれば、話し掛けたり手を握ったりしてもらえたことも、私の意識を呼び覚ます力になったってことだから、七年もの間、諦めずに私に接し続けてくれたみんなには感謝しても仕切れない思いでいる。

 そしてそれは、身内に対してだけじゃない。

 近衛や一緒に訓練した兵たちも、ノルギスお父様とアデル先生に願い出てまで、連日部屋の前に祈りに来てくれていたらしい。
 城下の国民も、城の前まで訪れて祈りを捧げてくれていたって聞いてる。
 わざわざ祈りを捧げる為だけに、王都にまで足を運んでくれた国民もいたそうで、私はもう感謝感激雨霰といった状態だ。

 なので今は、一刻も早く元気になって、感謝の気持ちを伝えたいとリハビリに奮起しているところ。とはいえ、まだまだ無理はできないんだけどもね。

 それにしても……慣れないわ。

 ただ虚弱を改善するってだけなら、ここまで時間は掛からなかったと思うのだけど、いまだにタイムスリップ感覚が抜け切らず、戸惑いが続いている。
 みんなの外見や雰囲気が変わったこともそうだけど、一番はやっぱり自分の体。

 なんだか車を買い替えたような感じがするのよね……。

 例えるなら、スポーツからワンボックスへの乗り換え。要するに視界が違う。
 それはそう。だって、八歳が目を開けたら十五歳なんだもの。
 今は一六五センチくらいだから、四十センチほど高くなったってことになる。

 初めて立って俯いたとき、思わず「高っ」て言っちゃったからね。

 それに共感してくれたのがシクレアとディーヴァだった。二人は……いえ、私の大事な仲間たちは、みんな進化を果たしていた。その一点に関してだけは、私が意識を失うタイミングが良かったように思う。
 というのも、シクレア、アスラ、ディーヴァの三人は人と話せるようになっていたから。みんな、私の代わりにこの国を守るために頑張ってくれていたのである。

 現在は、全員が最終進化を済ませ、人語を話せるようになっている。進化選択は、私の代わりにエルモアがやってくれていたのだと本人から直接聞かされた。
 
 
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