理想とは違うけど魔法の収納庫は稼げるから良しとします

水野(仮)

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商談

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貴族子女と富裕層の子達が通う建物に入る。
学校よりも大きく学校よりも飾った城に何度か入った後なのでこれといった感動もない。
近くの子は見上げたり凄いねとか言ってたりするので城より先に見たかったかなと少し思う。

「久しぶりだね」
「ああ。そっちは落ち着いた?」
「まだかな、叔父さんが捕まらなくて」

彼女や御婦人と初めて会った馬車襲撃事件は、彼女の叔父が仕掛けたものらしい。
次期当主にと考えていた御婦人の実の兄が事故死して、御婦人の妹と結婚した男性が夢を見てしまったようだ。

御婦人の産んだ子の父親が竜騎士さんなのは公然の秘密と言うものらしく、竜騎士さんが次期当主に選ばれる可能性を消す為に2人を亡き者にしようとしたのだとか。
竜騎士さんにはその気なさそうだったので何もしなければ次期当主になれてたと思うのだけれどな…。

候補に考えていた男が無理となったので親族から適当な相手を見つけて次期当主にしようって話が出た時に、竜騎士さんが当主候補としてあちらの家に入るような話をしたらしい。
全ての関係者と会ったわけではないけれど、俺の知ってる人はみんな良かったと言っているので問題は無いのかなと思っている。

「おいお前ら」

収納。

「あれ?」
「どうかした?」
「誰かに話しかけられたと思ったのだけれど…」
「気のせいじゃないか? それより教室に行こう」

通路やドアの前に立っていたわけでもなく、何か作業をしていた場所にいたわけでも無いのに強目に話しかけられてつい収納してしまった。
被害らしい被害を受けたわけではないので早まったかも…。
誰か知らないが遠くに出しておこう。



学年は2クラスでこれといって分けた理由は無いそうだ。
王太子が入学する時などは狙って子供を作る家が多いらしく5クラスくらいにまでなる時もあるらしいのだが、今年は王族が居ないので少なめらしい。
貴族率も低くて3割だとか。
貴族家が何世帯あるか知らないけれど、1クラスも埋まらなのか。

「今年1番注目されてるのはキミね」
「めんどくさいので嫌です」

色々と俺に説明してくれた隣の女子がそんなことを言う。
娘しか居ない土地持ちの貴族家が俺を婿養子にと狙っているらしいです。
上の学年からも注目されてるらしく、声を掛けられるわよとニヤニヤ笑って言います。

「ちなみにうちは商家として関係を持ちたいわね」
「色彩鯉狙い?」
「繁殖も含めて引き受けるつもりよ」
「それはありね!」
「? 誰の声?」
「ここでは無理だ、後で説明するから帰りはうちに寄ってくれ」
「わかったわ」

担任の教師が入ってきてそれぞれ自己紹介した後、講堂で王様やら大臣の話を聞く。
要約すると同世代の人となりを把握する為に用意された箱だから観察を怠るなってところだろうか。
人を集めるのに都合が良いから学校を作ったのかな?
専門的な知識を得たいなら各家庭で人を雇えば良いしな。

授業はそんなに難しくないのかも知れないな。



商家の子を池のある離れの前まで連れてくる。

「これは凄いね」
「彼女が頑張って色々やってるからね」
「突然現れた?!」
「彼女は長年色彩鯉の繁殖をしていたんだ」
「突然現れたことの説明なし?!」
「彼女は水の精霊だからね」
「凄いのよ、私」
「いや、会話になってないよね? あと、精霊らしさ全くないわ!」

勢いで納得させようと思ったのだけれど通じないらしい…。

水の精霊は初めて見た時のようなひらひらした服は来ておらず、普通の街娘のような姿をしている。
青く長い髪くらいしか水の精霊らしさがないので、言われないと誰も気がつかないと思う。
実際、水の精霊を見ようとこの家へやってきた王女様は、彼女に水の精霊さんはどこに居ますかと訊ねたくらいだし。

「全身濡れてた方がそれらしく見えるのかしら?」
「やめろ」

それから水の精霊と商家の子が色彩鯉の住みやすい環境や輸送手段について話し始める。
俺は義理両親に色彩鯉の販売を商家に委託することを伝える為に離れた。

領主様からはある程度行き渡ったので好きに販売して良いと言われているのだが、それでもドゥーンハルト家にとって売ったら都合の悪い相手と言うのも居るだろうしそれがわからない俺ではこの先上手くやれない。
それに商家との契約についても不慣れな俺では不利な内容になる可能性もある。
俺個人としては問題無い内容でもドゥーンハルト家としてよろしくないなんてこともあるかも知れない。
その辺りを考えてというか、考えることを放棄して任せてしまえと言うのが本音だ。

後日、商家の当主が呼ばれて俺同席の元話し合いがもたれた。
初めて見る義理両親の貴族としての振る舞いに丸投げして良かったと思う。
商家の当主の人が用意してきた資料も凄い。
色や模様の形や場所ごとに区別して名前や値付けをしようとは考えたことなかった。
水の精霊や俺個人に対する報酬なんかも書かれているしこの資料のままで良いのではと思うのだが、踏み台でしかないようで色々と修正変更されていく。

池造りに俺や水の精霊を使いたいようだったがそれは断った。
代わりに庭師さんと池を作った人たちで池を含めた庭造り専門の商会を立ち上げることになった。領主様から庭造りに使えるスキルを持った人を派遣してもらい活用していく話も出た。
領民のスキル調査は義理両親も知っているのか。家のことだから当然か。

資料を読んでこれで良いですよと即答えてしまいそうな俺には貴族らしく振る舞うのは無理だとしみじみ思ってしまうな。
自分が貴族家の当主となった時同じことが出来るとは思えないし、結婚するならその辺りを任せられる相手としたい。
俺を狙っている家の1人娘に居れば良いのだけれど…。



「貴族としてやっていける自信が無い」
「そんなに大変だったの」

話し合いの場には居なかったが親について来ていた商家の子と離れで話している。

「資料通りの内容で良いと俺は思ったんだけど、終わってみたら半分以上変わってたよ」
「そんなものよ」
「そう…」

資料通りに行かないが普通なのか。
そこから既についていけないな、俺。

「そっちはそれで良いの?」
「想定内だと思うわよ。歴史が浅いうちとしてはドゥーンハルト家と繋がることが出来さえすれば不利な契約内容でも問題無いと言っていたし」
「俺からドゥーンハルト家へ伸ばしていくつもりが、いきなり繋がってそちらとしては嬉しい誤算てところだったりする?」
「そうね」

その辺りには全く思い当たらなかった。
商家の思惑とか家同士の繋がりとかまでこれから考えていかないといけないのか。
この子が俺の隣に座ったのもたまたまじゃなく狙って居た可能性も高いのか?
それは考えすぎか?

近づいて来た目的とかを考えて人付き合いをしていかなければならないとか嫌過ぎるな。

「貴族も怖いが商家も怖いな」
「大きな家ってどこもそんな感じだと思うわよ。貴族は部下や領民を私たちは従業員を食べさせる為に家を維持していく義務があるわ」
「家を維持する義務か、考えたことないな」

領都の家も使用人も領主様に用意されたものだった。
稼いだお金は全部俺が持っていたし、家の人に渡す必要がなかった。
この離れも義理両親が作ってくれたし、俺を世話してくれるのもドゥーンハルト家に雇われた使用人だ。
俺は自分が金に困らなければそれで良かった。

「これから考えていけば良いじゃない」
「それで良いのかな」
「その為の高等学校よ。私たち平民はともかく貴方達の通学が義務になってるのはその辺りも含めてだと思うわよ」

学校で経験を積めば貴族の顔をした義理両親のようになれるのだろうか。
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