34 / 50
海で
しおりを挟む
領主様に難民を連れて来るかも知れないから受け入れてもらえないかと頼んだら良いとのこと。
交換に夏季休暇を利用して宿場町を2つ作ることになった。
今回の町は2つとも領都と俺の馴染みの街を結ぶ街道に出来、野営をする回数が減ることで知り合いの負担も軽くなるから個人的にもありがたい。
学生でいる間は家族からの頼みは許されているので残り少ない間に色々とやっておきたい。
竜騎士さんも何か頼みたいそうなので、そのうち行ってみようと思う。
*
「これを着るんですか…」
「不服そうだな」
「いえ…」
近衛騎士と似た感じに似た着衣や鎧ではあるのだが、マントに描かれている模様と言うかこの国の国旗が少し恥ずかしいと言うか…。
「人に会うときは必ずこれを身につけろよ」
「はい」
気の毒そうな顔するくらいなら止めてよ付き人の人。
後から聞いた話ではこれでもだいぶマシになったそうだ。
*
王女と海の精霊の別れを見た後に、収納して飛び立つ。
早く移動出来るようになって港街までの時間が早くなったから別れの時間をもう少し長めにしても良かったのだが、海の精霊が飽きてたからな。
王女に対してそんな思い入れなさそうだったし仕方がない。
「今更だけど海ならどこでも良いのか?」
海が見えるようになってふと思い付いたことを聞いてみる。
「う~ん、人があんまり居ないところ」
「どうしてだ?」
「何度か網に引っかかって痛かったから」
「じゃあ、沖の方で良いか?」
「うん」
日帰りのつもりだったけど今日は港街に泊まるか。
*
「なんだこれ…」
「島が動いてる!」
島と言うか島くらい大きな亀の魔物かこれ?
そこそこ大き目の宿場町くらいありそうだぞ…。
「これは精霊か?」
「何にも感じないよ?」
「精霊じゃないんだな?」
「うん!」
しまってみるか?
でも、しまってどうする?
人を襲ってるわけでもないしこのままでも良いか?
「人間と精霊が一緒に居るのは珍しいな!」
「魔物が話した?!」
「こっちだこっち!」
亀の顔から島のような背中?に向かって目線を上げていくと、手を振っている中年男性が居た。
その位置から声が聞こえる物なのか?
また精霊じゃないよな?
警戒しつつ、声が聞こえそうなところまで近づくことにする。
「失礼ですが、貴方は人間ですか?」
「それ以外の何に見えるんだ?」
「精霊とか」
「こんなおっさんの精霊は居ないだろ」
自分でおっさんて…。
しかし、普通の人間に収納庫の中に居る海の精霊が見えるものなのか?
「では、何故精霊が居るとわかったのですか?」
「神の声を聞く役目を持っていたからな、人以外の気配には敏感なんだ」
「神の声を聞く役目?」
「俺は聖人なんだよ」
「聖人??」
「知らないか?」
「はい」
聞いたことないな。
「聖女は知っているか?」
「はい」
「それの男版だ」
「なるほど!」
神の声を聞くのが女性だけってことはないだろうからな、そりゃ男性もいるだろうし成長すればおじさんにもなるだろうな。
でも、そんな人がなんでここに居るんだ?
聖人おじさんに興味無さそうな海の精霊を離れた場所に出して別れた後に戻ってきて島に降りる。
聖人おじさんはロイルさんと言い、教会内の派閥争いに巻き込まれて部屋に居た人と一緒に海へ転移させられて生き延びる為に必死で近くの島へ辿り着いたらしい。
その時は普通の島だと思っていたのだけれど、突然動き出して大きな魔物だと知ったそうだ。
魔物の背中は何故だか知らないが海水ではなく飲むのに向いてる水が沸いているし、畑を作れるくらいの土もある。
建物はないが雨風を凌げそうな穴が有り、最初から人が生活する為に作られた物なのではないのかと思ってしまいそうだ。
「アベルくんは干し肉とか持っていないかな? 魚ばかりだと飽きてしまってね」
「干し肉は有りませんが魔物の肉がそこそこ有りますよ。けど、聖職者だと魔物の肉は食べないんでしたっけ?」
「特にそんな決まりはないな。教会によるのかな?」
「そう言えばどこの教会か聞いてませんでしたね」
「そういや名前しか名乗ってなかったな。私はトイベリア教の聖人だよ」
え、知らないが…。
交換に夏季休暇を利用して宿場町を2つ作ることになった。
今回の町は2つとも領都と俺の馴染みの街を結ぶ街道に出来、野営をする回数が減ることで知り合いの負担も軽くなるから個人的にもありがたい。
学生でいる間は家族からの頼みは許されているので残り少ない間に色々とやっておきたい。
竜騎士さんも何か頼みたいそうなので、そのうち行ってみようと思う。
*
「これを着るんですか…」
「不服そうだな」
「いえ…」
近衛騎士と似た感じに似た着衣や鎧ではあるのだが、マントに描かれている模様と言うかこの国の国旗が少し恥ずかしいと言うか…。
「人に会うときは必ずこれを身につけろよ」
「はい」
気の毒そうな顔するくらいなら止めてよ付き人の人。
後から聞いた話ではこれでもだいぶマシになったそうだ。
*
王女と海の精霊の別れを見た後に、収納して飛び立つ。
早く移動出来るようになって港街までの時間が早くなったから別れの時間をもう少し長めにしても良かったのだが、海の精霊が飽きてたからな。
王女に対してそんな思い入れなさそうだったし仕方がない。
「今更だけど海ならどこでも良いのか?」
海が見えるようになってふと思い付いたことを聞いてみる。
「う~ん、人があんまり居ないところ」
「どうしてだ?」
「何度か網に引っかかって痛かったから」
「じゃあ、沖の方で良いか?」
「うん」
日帰りのつもりだったけど今日は港街に泊まるか。
*
「なんだこれ…」
「島が動いてる!」
島と言うか島くらい大きな亀の魔物かこれ?
そこそこ大き目の宿場町くらいありそうだぞ…。
「これは精霊か?」
「何にも感じないよ?」
「精霊じゃないんだな?」
「うん!」
しまってみるか?
でも、しまってどうする?
人を襲ってるわけでもないしこのままでも良いか?
「人間と精霊が一緒に居るのは珍しいな!」
「魔物が話した?!」
「こっちだこっち!」
亀の顔から島のような背中?に向かって目線を上げていくと、手を振っている中年男性が居た。
その位置から声が聞こえる物なのか?
また精霊じゃないよな?
警戒しつつ、声が聞こえそうなところまで近づくことにする。
「失礼ですが、貴方は人間ですか?」
「それ以外の何に見えるんだ?」
「精霊とか」
「こんなおっさんの精霊は居ないだろ」
自分でおっさんて…。
しかし、普通の人間に収納庫の中に居る海の精霊が見えるものなのか?
「では、何故精霊が居るとわかったのですか?」
「神の声を聞く役目を持っていたからな、人以外の気配には敏感なんだ」
「神の声を聞く役目?」
「俺は聖人なんだよ」
「聖人??」
「知らないか?」
「はい」
聞いたことないな。
「聖女は知っているか?」
「はい」
「それの男版だ」
「なるほど!」
神の声を聞くのが女性だけってことはないだろうからな、そりゃ男性もいるだろうし成長すればおじさんにもなるだろうな。
でも、そんな人がなんでここに居るんだ?
聖人おじさんに興味無さそうな海の精霊を離れた場所に出して別れた後に戻ってきて島に降りる。
聖人おじさんはロイルさんと言い、教会内の派閥争いに巻き込まれて部屋に居た人と一緒に海へ転移させられて生き延びる為に必死で近くの島へ辿り着いたらしい。
その時は普通の島だと思っていたのだけれど、突然動き出して大きな魔物だと知ったそうだ。
魔物の背中は何故だか知らないが海水ではなく飲むのに向いてる水が沸いているし、畑を作れるくらいの土もある。
建物はないが雨風を凌げそうな穴が有り、最初から人が生活する為に作られた物なのではないのかと思ってしまいそうだ。
「アベルくんは干し肉とか持っていないかな? 魚ばかりだと飽きてしまってね」
「干し肉は有りませんが魔物の肉がそこそこ有りますよ。けど、聖職者だと魔物の肉は食べないんでしたっけ?」
「特にそんな決まりはないな。教会によるのかな?」
「そう言えばどこの教会か聞いてませんでしたね」
「そういや名前しか名乗ってなかったな。私はトイベリア教の聖人だよ」
え、知らないが…。
17
あなたにおすすめの小説
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる