ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ

文字の大きさ
363 / 411

第363話 敗走

しおりを挟む
「……捕まえた? 今、捕まえたと聞こえた気がするけど、それはどういう事かな?」

 突如として心の中に沸いた疑念。
 そう尋ねると、高橋翔は口を歪め笑い出す。

「はははっ……! わからないか? こういう事だよ!」

 高橋翔がそう声を上げると同時に、手足が動かなくなる。
 何が起きたのか手足に視線を向けると、そこには、動かなくなった手足に纏わり付く影の上位精霊の姿があった。

「――か、影の上位精霊・スカジ!? な、何故、スカジが……!」

 高橋翔の持つ影の精霊・シャドーはスカジの影の世界へ閉じ込めた。出てこれる訳がない。そもそも、スカジなんて……。
 しかし、スカジがピンハネを縛り上げているのもまた事実。

 驚くピンハネを前にして、高橋翔は手で膝に付いた埃を払うと、ゆっくりと立ち上がり首に嵌められた隷属の首輪を外す。

 そ、そんな馬鹿な……。何故、隷属の首輪を外す事ができる。それは特殊なアイテムを使うか首輪を嵌めた者以外、外す事はできない筈。なのに何で……。

 目を見開き思考していると、高橋翔は薄笑いを浮かべながら話しかけてくる。

「鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているな。いいぜ。教えてやるよ。何故、俺が隷属の首輪を外す事ができるのか……。それはな、お前が隷属の首輪を付ける前に、同様の効果を持った隷属の腕輪を付けているからだよ」
「……っ!?」

 隷属系のアイテムを先に付けている者に隷属系のアイテムは付けられない。
 先に付けられた隷属系アイテムの命令が優先される。

「初めから隷属系のアイテムを身に付けておく。基本中の基本だろ? 奴隷を自分の手足の様に使うお前の様なカスを相手にする場合は特によぉ……」
「……っ!」

 ――油断した。確かに、隷属系アイテムは最初に付けた者の命令が優先される。だが、そんな事、普通やるか?
 影の上位精霊・スカジを持っているなら最初からエレメンタルを使い攻撃してくればいい。危険を冒してまで私の前に出てくる意味なんて……。いや、今はそんな事を考えている場合じゃない。

「スカジ! 高橋翔のエレメンタルを打ち倒せェェェェ!」

 高橋翔の持つ闇の上位精霊・ディアボロスはアイテムストレージに閉じ込めてある。そして、影の精霊・シャドーはスカジの影の中……。
 つまり、こいつを倒せば、高橋翔はお終いだ。

 そう声を上げると、ピンハネの影から変わり果てた姿のスカジが現れる。

「……はっ?」

 意味が分からずそう呟くと、高橋翔が笑い出す。

「あはははっ……! お前さ、この期に及んで何で余裕ぶっこける訳? 俺が何の勝算もなく出てくる訳ねーだろ。俺がお前の前に出てきた時点でお前はもう詰んでるの! 分かれよ、その位、俺を過小評価し過ぎだ」
「そ、そんな馬鹿な……。だって、君のエレメンタルはスカジの影の世界に閉じ込めて……」
「ああ、そうだな。確かに閉じ込められていた。俺も焦ったよ。お前の下に送り出した影の精霊・シャドーが帰ってこない時にはな。だが、メニューバーでエレメンタルの状態を見れば、シャドーがどこに捕らえられているのか推測が付く。だから、使ったんだよ。俺のシャドーを閉じ込めているであろうお前の上位精霊を倒せる様に、エレメンタル進化チケットと強化チケットをたっぷりとなぁ!」
「――エ、エレメンタル進化チケットに強化チケット!?」

 私をこの世界に送り込んだ神め。厄介な奴になんて物を……!
 いや、今はそんな事を言っている場合じゃない。

 今にも消え入りそうな瞳でこちらを見てくるスカジ。
 影の世界に閉じ込めていた影の精霊・シャドーを強化し、スカジに進化させることで私のスカジを倒し、影の世界から抜け出した。
 それは同時に影の世界に閉じ込めていた他のエレメンタルの復活を意味する。
 到底勝てる戦力差ではなくなった。
 くそっ! 何故、奴隷が高橋翔を捕らえた時、疑問に思わなかった……!
 服はボロボロなのに怪我を負っている様子はなかった。隷属の首輪を嵌められる状況に追い込まれて尚、余裕の表情を浮かべていた理由……。すべての事象が物語っているじゃないか!

 歯軋りしたい気持ちを抑え、ピンハネはため息を吐く。

「……どうやら、私の負けの様だね。残念だけど負けを受け入れるよ。それで? 私をどうするつもりかな? その隷属の首輪で奴隷にでもするつもりかい?」

 元の世界に戻れば、隷属の首輪を解除するのは容易い。
 今は敗北を受け入れた振りをしてでも生き残る事を優先しなければならない時だ。

 しおらしくそう尋ねると、高橋翔は首を横に振る。

「いや、そんな事はしないさ。俺はこれでも紳士でね。ただ隷属の首輪を付け放置するだけに留めるよ」

 紳士的どころか十分過ぎるほど悪辣だ。
 しかし、これは好機でもある。

「そう。隷属の首輪を付け放置するなんて酷い人だ。でも、負けたのは私だからね。受け入れるよ」
「そう? なら遠慮なく」

 そう言うと、高橋翔は手に持った隷属の首輪を首に嵌めてくる。

 不快……。首輪の感触が非常に不快だ。
 しかし、今は我慢の時……。

 高橋翔は私に隷属の首輪を嵌めると、ただ一言、厄介な命令を口にする。

「さて、命令だ。現時点を以って俺の不利益となり得る行動の一切を禁じる。それ以外は好きにするといい。ただ、お前のアイテムストレージに入っている闇の上位精霊・ディアボロスだけは返して貰おうか」
「……わかった」

 私はアイテムストレージから闇の上位精霊・ディアボロスを解放する。

 アイテムストレージの枠が一つ空いた。
 ここに高橋翔を格納し、逆転を狙いたいが……無理か。
 それ程までに、隷属の首輪の効力は強い。

「これでいいかな?」
「ああ、充分だ。後はお前の好きな方を選択・・・・・・・するといい。ただし、命令は違えるなよ」
「? ああ、わかっているさ。私も命が惜しいからね」

 少なくとも今は命令を違えない。
 そもそも隷属の首輪が嵌っている以上、どうしても行動が制限されてしまうからね。
 命令を違えるのは、元の世界に戻り隷属の首輪を外した後だ。
 高橋翔の顔は割れた。保有する戦力も確認できた。次こそは上手くやる。やって見せる。
 私が元の世界に置いてきた奴隷と、今、影の世界に囚われている自衛隊員を奴隷化し、総動員すれば高橋翔を屠る事も容易い。
 舐められたらお終いなんだよ。
 高橋翔のお陰で、この世界を手に入れる事は困難となったが、復讐だけは果たして見せる。いや、必ず果たす。そして、また機を伺いこの世界に戻ってくる。

 決意を新たにそう言うと、高橋翔は姿を隠すアイテム、隠密マントを羽織る。
 そして……。

「じゃあな、後はまあ……。頑張れ」

 そう告げると、姿をくらました。

 敵に対して甘い男だ。
 強がり余裕振る自分をカッコいいとでも思っているのだろう。
 その甘さ故に未来の自分が足下を掬われる事になるとも知らずに……。

「あーあ、一度、元の世界に戻らないとだね」

 手酷い返り討ちにあったが、収穫もあった。影の上位精霊・スカジが捕らえた、大量の自衛隊員という収穫が……。
 これを使って高橋翔に報復してやる。
 徹底的に、私を敵に回した事を後悔する位に……!

「スカジ? 何をやってる。元の世界に戻るよ。早く影の中に戻っ……」

 そういいながら振り返ると、そこには無数の影の刃で貫かれ絶命するスカジの姿があった。

「……ス、スカジ?」

 突然の事に意味が分からずそう呟くと、次いで、スカジの影の世界に閉じ込めていた自衛隊員達が解き放たれ、家電量販店の店内を埋め尽くす形で姿を現した。
 思わず凍り付くピンハネ。
 当然だ。今、周囲を囲っているのは自衛隊員。ルートから情報を引き出し、新橋を起点に東京都に大災害を発生させた元凶、ピンハネを捕える為の精鋭部隊。

「俺達は一体何を……」
「新橋三丁目に突入してからの記憶が……」

 記憶を無くしている?
 どういう事だ??
 影の上位精霊・スカジの作る影の世界とこの世界の時間の流れは同じ。
 その為、最長六時間何もない暗闇の中に閉じ込められた者もいる。
 上も下も分からない暗闇に突如として放り込まれたのだ。何故、そんな会話ができる。

 ハッとした表情を浮かべ、上を見上げるとそこには、先ほど解放したばかりの闇の上位精霊の姿があった。

「ぐっ……! そういう事かっ!」

 どうやら高橋翔は、私の事を無事、元の世界に帰す気はないらしい。
 闇の上位精霊の視線がピンハネに突き刺さる。

 何が紳士だ。エセ紳士め。
 おそらく、この自衛隊員達は既に記憶を書き換えられている。
 だからこそ、突然、闇の中に放り込まれても無事だった。そう考えるのが妥当だ。
 当然、それだけに留まらないのも容易に想像がつく。その証拠に……。

「対象を見つけたぞ!」
「対象を確保しろっ!」

 ちょっと目が合っただけでこの騒ぎだ。
 ピンハネは肩を震わせながら呪詛を込め対象の名前を吐き出す。

「た、高橋翔……!」

 あのクソ野郎、スカジを倒し、影の世界に閉じ込められた自衛隊員を解放しやがったァァァァ!
 恐らく最初から目論んでいたのだろう。
 何という悪辣。何が紳士だ。何が好きにしろだ。ふざけるなっ!

 しかし、叫んだ所で状況は変わらない。
 すべてを失っての敗走。
 ピンハネは歯を噛み締めると、元の世界に戻るべく手を上げる。

「――転移! ミズガルズ聖国!」
「「「確保ォォォォ!」」」

 自衛隊員の手が迫る中、故国の名を叫ぶと、ピンハネの姿が掻き消えた。

 ◆◇◆

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 やってくれたな。
 あっち側の世界に行った事でエレメンタルを失い、主力奴隷も失った。
 計り知れぬ程の大損害だ。
 今、残っている奴隷を連れて戻った所で、あの戦力差を覆すのは難しい。

 仕方がない。あの世界を手中に収めることは一旦諦める。
 代わりに、奴隷共に八つ当たりしよう。そうでなければ私の気が収まらない。

 転移したのは、ミズガルズ聖国にあるピンハネの人間牧場近隣。
 名目上、表向きは畜産業を営んでいる事になっている。

「さて、今日は誰と遊ぼうかな……」

 そういえば、最近、餌をやってない奴隷がいたな。そろそろ死にそうだし、廃棄する前に希望の光を見せ、絶望させて楽しもう。
 希望の光を見せ、絶望の淵に叩き落とす。
 生殺与奪の権利を持った絶対的強者にのみ許された愉悦。

「ふふふっ……。楽しみだなぁ……」

 ストレスと相まって今日は凄惨な事になりそうだ。しかし、その奴隷の嘆きがピンハネの心にひと時の癒しを与えてくれる。

 ピンハネの経営する人間牧場は階段を上った先にある。
 愉悦の笑みを浮かべながら階段を上り、そこに広がる更地となった人間牧場跡地を見て、ピンハネは目を瞬かせた。
しおりを挟む
感想 558

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...