ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ

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第376話 釣り餌として優秀なクソ兄貴

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「……私、直々の電話に出ない所か、突然のガチャ切りか」

 耳に残る不快な落下音。
 あれをガチャ切りと言っていいか分からないが、不誠実な対応である事に変わりはない。

「私も舐められたものだ」

 高々、二十代そこそこの若造が……。
 穏便に氷樹とレアメタルを譲り受けてやろうと思ったが気が変わった。
 一度、社会の厳しさを教えてやった方が良さそうだ。

「おい。第三秘書……は、処分したんだったな。まったく、どいつもこいつも……」

 今、思い返しただけで腹が立つ。
 あちら側の世界からやってきた帝国の皇子二人……。それを契約書の力で捕らえたまではよかった。
 問題が起きたのはここからだ。
 二人を捕らえた翌日、何を思ったのか第三秘書が二人を逃してしまったらしい。
 折角、あちら側の世界の来訪者を手元に置く事ができたのに愚かな事を……。
 お陰で私の計画に変更が生じた。
 今、北極海に浮かぶ、あちら側の世界。
 そして、北極海で暴れ日本に向かって回遊中の化け物。仮称、ヨルムンガルド。
 何でも帝国の皇子は神からそのヨルムンガルドを支配する為の力を貰ったらしい。
 こちら側の世界に来れる向こう側の世界の人間は六人。その内、一人は塀の中。残る五人の内、三人は手の内にある。いや、秘書のお陰で二人逃してしまったから実質一人か。
 まだヨルムンガルドを支配する力を奪っていないというのにやってくれた。
 だが、悲観する程の事でもない。
 あの二人の皇子にヨルムンガルドを支配する力が与えられていたという事は、それに類する力がセイヤにも与えられているという事……。
 東京都知事選が終わり、東京都知事就任と共にセイヤは私の物となる。
 そうすれば、万事解決だ。
 もし、セイヤにヨルムンガルドを支配する力がなくとも、セイヤはあちら側の世界の人間。ヨルムンガルドを討伐する力位は持っている筈だ。

「しかし、高橋翔君と言ったか? まさか、セイヤ君やピンハネ君と同じ異なる世界を行き来する力を持っているとはな」

 レアメタルや氷樹を無尽蔵に仕入れる事のできるカラクリはこれか。
 そうなると、色々見方が変わってくる。

「つまり、池谷君が失敗したのも彼が原因か……。恐ろしい男だ」

 しかし、こちら側の世界に籍を置いているのが運の尽き。

「だが、まだまだ青い。高橋翔。君は誰を敵に回したか理解していない様だ。嘆かわしい限りだよ。君が強情であればあるほど周りに迷惑をかけると知るがいい。おい……。いつも通り、この宗教法人に五百万円ほど振り込んでおけ。改心させたい者がいると伝えた旨でな」

 そう言うと、第一秘書は静かに頷く。

「はい。わかりました」

 私にとって、宗教法人は使い易い駒の一つに過ぎない。
 暴対法が施行されてからというものの暴力団員の数は減少の一途を辿っている。
 そんな中、暴力団が新たな隠れ蓑としたのが宗教法人という名の組織だ。
 日本の宗教法人法には法人役員の欠格事由や解散命令の要件として暴排規定がなく、行政側の調査権限は極めて限定的……。
 元暴力団のシャブ中牧師や人身売買を生業とするブローカーに至るまで、数多くの半グレが宗教法人の皮を被った。
 宗教法人法には、暴力団の介入を防ぐ規程がないのだから当然だ。

「素直に電話に出て、レアメタルと氷樹の権利を無償で譲渡しておけば危険な目に遭わずに済んだものを……」

 物事をちゃんとした物差しで測れない者は一定数存在する。
 そして、宗教法人の皮を被った暴力団は強か……。

「化け物相手ならいざ知らず、暴力のプロ相手にどう立ち回るのか楽しみだよ。宗教法人に属する暴力団がどれほど恐ろしい存在か、その身をもって味わうがいい」

 そう言うと、仁海はスマホを放った。

 ◆◆◆

 千秋真理教団。それは暴力団が休眠状態の宗教法人を買い取り活動している宗教法人。
 本来、宗教法人の売買は、文化庁が脱法行為と位置付けているが、買い主が売り主に合意額を支払い、役員交代を登記すれば違法性が無くなるという抜け穴がある。

「頭、仁海から依頼料が振り込まれました」
「――そうか、それで内容は?」

 政治家である仁海からの依頼は多岐に渡る。
 頭と呼ばれた男がそう尋ねると、組員は「この男です」と高橋翔の写真を渡す。
 男は高橋翔の写真を見ると思わず舌打ちした。

「――ちっ、こいつか……」

 少しばかり厄介だな……。
 高橋翔。アメイジングコーポレーションの経理として勤め、昨年になって退職。任意団体を立ち上げ、現在、複数の役員に任命されている若い男だ。
 億単位の金を持っていると専らの噂で、こいつに関わった組織は軒並み酷い目に遭わされている。
 千秋真理教団を運営するこの男もその一人。
 高橋翔……。あの男が運営する任意団体宝くじ研究会に手を出した事で準暴力団である万秋会は壊滅状態に陥った。
 男も馬鹿ではない。
 高橋翔を拉致したつもりがいつの間にか入れ替わっていた警察官……。警察が入ってきたタイミング。
 あれはすべてが出来過ぎていた。
 万秋会が壊滅状態に陥った原因は、この高橋翔にあるのではないか……。
 あの時気付く事のできなかった真実に辿り着いている。
 だからこそ迷いが生じていた。

 ……こいつを消すに少しばかり名が売れ過ぎている。信者を嗾けてもいいが下手にこの事が公になって困るのはこちら側だ。

 仕方がない。
 闇バイトの連中に任せるか……。

 闇バイトとは、一般のアルバイトに偽装して募集し、高収入を餌に個人情報を取得。闇バイトから逃れられないよう脅し、騙して犯罪行為を行わせる金に困った情弱。または、楽して金を稼ぎたい愚か者を狙った使い捨ての駒のこと。
 警察に捕まらず実行できれば報酬を支払うし、そうでなければ支払う必要のない使い勝手のいいトカゲの尻尾だ。
 万秋会では、こういった使い捨ての駒を多く保有している。
 問題は、高橋翔が中々、病院の特別個室から出てこない点。
 マンションや持ち家ならともかく、大学附属病院の特別個室に篭られてはどうする事もできない。

「仕方がない。あの情報を使うか……」

 高橋翔の親族には、厳重な警備網が敷かれている。しかし、高橋翔の兄弟に関しては話が別だ。
 何故かはよく分からないが、遠洋漁業に出ているらしい。
 調べた所、相当駄目な兄の様だ。しかし、家族に見捨てる素振りは見受けられない。
 大方、海外に遠洋漁業に出ていれば、大丈夫だとでも思っているのだろう。

「兄弟を人質に高橋翔を捕らえ、箱に詰めろ。俺直々に交渉する」

 流石の高橋翔も海外に遠洋漁業に出ている兄を人質に交渉されるとは思っても見ないだろう。

「いいな? 確実に捕えるまでは絶対に俺達の犯行だと割れるような真似は絶対にするな。すべて末端共がやった事……。そう徹底して周知しろ」

 そう告げると、男は金の入ったネットバンクの残高を見てニヤついた。

 ◆◆◆

『……高橋翔だな。海外で遠洋漁業に出かけていたお前の兄弟を確保した。命が惜しければ、今すぐ塩浜にある東京湾堤防まで一人で来い。警察に通報したら兄弟の命はないと思え』

 今の時間は午後十一時。
 俺こと高橋翔は、スマホの留守録に耳を傾けため息を吐く。
 嘘か本当か、クソ兄貴が拉致られたとの連絡が入った。

「どいつもこいつも……。俺の事を何一つ理解していないな……」

 何の為にクソ兄貴を遠洋漁業に出したと思っているんだ?
 馬鹿な賊に仮にも親族であるクソ兄貴を利用させない為に決まってんだろ。
 勿論、更生と借金返済の意味合いもあるが、今の俺にとってクソ兄貴の借金なんて微々たるもの。
 むしろ、変にクソ兄貴を利用され、俺や他の親族に迷惑をかける事を恐れ遠洋漁業に出したのだ。
 当然、クソ兄貴にはエレメンタルという名の見張りが付いている。
 賊如きに攫う事は不可能だ。
 だが、俺や親族に危害を加えようとする賊の存在を確認する事はできた。
 クソ兄貴は釣り餌として優秀な様だ。
 大方、遠洋漁業に出ていては連絡は付けられまいとでも思っていたのだろう。
 所詮はアウトロー。実に底の浅い考えだ。
 脅せはどうとでもなると考えている。

「仕方がない。対処するか……」

 タイミング的に仁海とかいう氷樹狙いの政治家が絡んでいそうだが確信はない。
 とはいえ、脅す事で不正に利益を得ようとする者は組織毎潰すに限る。

 俺、嫌いなんだよね。
 俺を利用して利益を貪ろうとする性根の腐ったクソ野郎の相手をするのはさ。
 何と言うか相手をしているだけで反吐が出る。
 だからそういう性根の腐った奴は元から排除する。例えそれが、高額報酬に釣られた闇バイトであろうとも……。

 高額報酬に釣られ人に危害を加えようとするのだ。まさか、人に危害を加えようとしていて自分は被害者だと馬鹿な事は言わないよな?
 この手の馬鹿を相手するのはいい加減ウンザリしていた所だ。
 明確に危害を加えにきているし、もう手加減は不要だろう。

「すいません。塩浜にある東京湾堤防までお願いします」

  そう言って、タクシーに乗り込むと、俺は闇バイトの待つ東京湾堤防までタクシーを走らせる。

 さて、準備は整った。
 あちら側も今か今かと俺の到着を待ち侘びている筈だ。
 しかし、俺の到着を待たせるのも悪い。
 俺がタクシーに乗り、アリバイ工作をしている間にすべてを終わらせよう。

 エレメンタルを通じて確認した闇バイトの人数は十人。

「闇の大精霊……」

 そう闇の大精霊を呼ぶと、闇バイトの連中を洗脳する為、影の精霊と共に東京湾堤防に先行させる。

「到着まで一時間ちょっとか……。結構、距離があるな……」

 そう呟くと、東京湾堤防に到着するまでの間、熟睡する事にした。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(あとがき)

 書き貯めていた新作「忌み子転生」をカクヨム様で配信しました!
 地獄育ちの赤子が現世に強制転生させられ、いつか地獄に帰るまでを綴った物語となっております。
 お時間があれば、ご確認いただけると幸いです!
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