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第380話 復讐心に捕らわれる池谷
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「……はっ?」
仁海……今、仁海と言ったのか?
何故、ここで仁海先生の名前が出てくる。
「……仁海先生の事をどこで?」
言葉を絞り出す様にそう尋ねると、高橋翔は世間話でもするかの様に言う。
『いや、仁海とかいう爺さんから氷樹とレアメタルを寄越せと闇バイト経由で脅されてね。危害加えられそうになってムカついたから報復しようと思ってさ』
「そう……」
政界の怪物、仁海を爺さん扱い。
こんな怪物に目をつけられるとは、仁海も運がない。いや、それは私も同じか……。
しかし、今の仁海と私とでは立場が違う。
仁海は高橋翔に睨まれ、私はその高橋翔の支援を受ける立場にある。
高橋翔はピンハネと同じ異世界の力を持っている。
今の私にとってこれ以上ない支援者だ。
しかし、一歩間違えば私も仁海同様破滅街道まっしぐら……。
私は再度、問いかける。
「……本当にこの条件で支援してくれるの?」
すると、高橋翔は軽口でも叩く様に言う。
『ああ、これ以上の条件は出さないさ。まあ、強いて言えば、都議会議員選挙に立候補する度胸がありそうな人を議席分集めておいてくれると手間が省けて助かる。その程度かな?』
「……都議会議員選挙?」
何故、ここで都議会議員選挙の話が出るのか分からない。
しかし、高橋翔が言うのだ。
「都議会議員選挙に立候補する度胸がありそうな人ね? わかったわ……」
仮にも私は都知事を勤めた女。
この私が声をかければ、それなりの人数を集める事ができる。
「でも費用はどうするつもり? 都議会議員選挙に出るにしてもそれなりの費用が……」
そこまで言って思い出す。
この男にとって資金捻出が容易である事を……。
『……まあ、選挙費用に関しては心配しなくても大丈夫かな? 必要になれば、彼等には宝くじを買って貰うさ。公職選挙法に引っかからない様にね』
宝くじ協議会は紆余曲折を経て、元の運営方針に戻っている。
高橋翔から不正の証拠が見つからず、宝くじが何度も当選する運の良い人を豚箱に打ち込む訳にはいかないためだ。
結局、割を食ったのは我々だけ。高橋翔を筆頭としたピースメーカーの面々は今も宝くじを購入しながら悠々自適な生活を送っている。
プープープープープー
そんな事を考えていると、通話中、仁海から電話がかかってきた。
『うん? 電話かな、話は以上。その書類にサインしたら送り返してくれ』
「ちょっと、待っ……」
一方的に通話を切られた私はため息を吐く。
なんて勝手な男だろうか……。
しかし、今の私にとっては心強い。
「……はい。池谷です」
そう言って電話を取ると、電話口から仁海の声が聞こえてくる。
『――ああ、池谷君。暫らくぶりだね。その後、どうかな。聞けば駅前に一人立ち、選挙活動に勤しんでいるそうではないか』
「ええ、まあ……」
仁海からの支援を頼る事はできない。
今更、何の用があって電話をかけてきたのだろうか。
すると仁海は唐突に本題へ入る。
『まあ、世間話は程々にしておこう。実は君に伝えたいことがある……』
無駄に間を開け勿体ぶる仁海。
そんな仁海にへキヘキしながら私は尋ねる。
「伝えたいこと……ですか?」
仁海がこう言った報告を自発的にしてくる時は決まって自慢話が多い。
『ああ、実はな。高橋翔から氷樹とレアメタルの権利を受領する見込みが立った……』
「……へ?」
今回も碌でも無い自慢話だろうと思えば……。一体、どういう事だろうか。
私は思わず絶句する。
『……君が驚くのも無理はない。ここだけの話、高橋翔の身柄は私が預かっている。今、説得している最中でな。中々、強情で困っているよ。まあ、自由を与えず電話もできない状態のまま、体に直接追い込みをかけている。もう二、三日もすれば素直になるだろう』
「え? ええ?」
仁海の言う事が真実であれば、さっき私が電話したのは一体……。
確かに、仁海の人脈を使えば、高橋翔を捕えるのは容易かもしれない。
しかし、あの高橋翔がそんな簡単に捕まるだろうか??
電話もできない状態のまま、体に直接追い込みをかけているなら高橋翔が私に電話をかける事自体できる筈がない。
もしかして、仁海は間違った情報を掴まされているのではないだろうか。
そこまで考え、私は首を横に振る。
仁海は私を裏切った。
そんな奴が偽の情報を掴まされているなんていい気味じゃないか。
すると、仁海は嬉しそうに言う。
『――そこでだ。今回、君の応援ができなくなった埋め合わせがしたい。お詫びと言ってはなんだが、君にレアメタル利権の一部をプレゼントしよう』
「レ、レアメタル利権の一部をですか!?」
高橋翔の持つレアメタルの産出国は恐らく異世界。
権益の一部だけとはいえ、その影響力は計り知れない。
『ああ……ただ、君が都知事として返り咲いた時は……わかるね?』
まるで蝙蝠の様な男だ。
恐らく、見返りを寄越せという事だろう。
「わかりました。しかし、もし私が都知事に返り咲いた場合、少し困ったことになるかも知れません。主に、不信任決議に賛成した都議会議員達が……ですか……」
今になって思う。
高橋翔は恐らくこの事を言っていたのだろう。私が都知事に返り咲けば、不信任決議案に賛成した都議会議員は窮地に陥る。
民意とはそういうものだ。
「……念の為、都議会議員に出馬したい方を秘密裏に擁立しておいた方がいいかも知れません」
そうアドバイスすると、仁海は呟く様に言う。
『……なるほどな。肝に銘じておこう』
仁海は用心深い。
おそらく、現職の都議会議員以外の擁立を目指し動く事だろう。
『……有意義な話ができて結構だ。都知事選頑張りたまえ』
仁海はその言葉を最後に電話を切る。
私は電話が切れていることを確認すると、深い笑みを浮かべた。
「――まさか、こんなに早く復讐の機会が回ってくるとはね……」
相手が油断している時ほど、隙は大きくなる。
仁海からの電話の前に掛かってきた高橋翔の様子から察するに、仁海は高橋翔の事を捕らえていない。それ所か、捕らえたと錯覚している節がある。
「ふふふ、面白くなってきたわ……」
今の私に失う物は何もない。
高橋翔から送られてきた契約書の内容も利権にさえ関わっていなければ至極真っ当なものだった。今、何の柵のない私であれば余裕で対処可能だ。
「ふひっ……ふひひひひっ……!」
池谷は高橋翔から送られてきた契約書にルーペをあて、内容を確認した後、書き殴る様にサインする。
おそらく、この契約書はピンハネが持っていた物と同じ……つまり、契約書にサインしたが最後、契約は履行しなくてはならない。
しかし、裏を返せば、この契約書にサインしている高橋翔自身も書かれた条項に縛られる。
「いいわ……やってあげるわよ」
自分達のやってきた事は顧みず、全ての責任を私に押し付け不信任決議案を可決した都議会議員の事なんか知ったことか……浄化してやる。この濁り切った東京都を、この私が徹底的に浄化してやる!
その結果、誰がどうなろうが知った事ではない。
私はただ復讐できればそれでいい。
高橋翔自身に思う所がない訳ではないが、ピンハネの一件で世の中には、決して手を出してはいけない人がいるという事を悟らされた。
ただ自分の手の届く範囲にいる者達の裏切りだけは絶対に許せない。
今、私は苦しんでいる。
私に責任を擦り付けた者達も同様の苦しみを味合わせる。
それが、私が私として生きる為の新たな人生の第一歩だ。
失敗しても死ぬほど叩かれるだけで、実際に死ぬ訳ではない。
何故なら、私の命は異世界の徒であるピンハネの同類である高橋翔が守ってくれる。
契約を結ぶとはそういう事だ。
私はただやりたい様にやればいい。
最後は辞任し、隠居するだけで責任を取った事になるのだから楽なものだ。
「……私が都知事に返り咲いたら覚えておきなさい」
東京都からこれまで国が作り上げてきたシステムをメチャクチャにしてやるわ。
具体的には、私を利用してきた団体全てを葬り去る。
委託事業は厳格に管理するし、補助金の支給も企業並みに厳格に行う。開示請求があれば、すべてを包み隠さず公開し、都内で活動する公益法人の監督は他の中小企業と同様にするし、東京都内限定でスパイ禁止法も制定する。不正があれば、返済が終わるまで返還請求し、罪を償わせる。
それが、私を裏切った者達へ一番効率的にダメージを与える事に繋がる。
「ふふふ、楽しくなりそうだわ」
そう呟くと、私は東京都の夜景を見ながら高笑いを浮かべた。
仁海……今、仁海と言ったのか?
何故、ここで仁海先生の名前が出てくる。
「……仁海先生の事をどこで?」
言葉を絞り出す様にそう尋ねると、高橋翔は世間話でもするかの様に言う。
『いや、仁海とかいう爺さんから氷樹とレアメタルを寄越せと闇バイト経由で脅されてね。危害加えられそうになってムカついたから報復しようと思ってさ』
「そう……」
政界の怪物、仁海を爺さん扱い。
こんな怪物に目をつけられるとは、仁海も運がない。いや、それは私も同じか……。
しかし、今の仁海と私とでは立場が違う。
仁海は高橋翔に睨まれ、私はその高橋翔の支援を受ける立場にある。
高橋翔はピンハネと同じ異世界の力を持っている。
今の私にとってこれ以上ない支援者だ。
しかし、一歩間違えば私も仁海同様破滅街道まっしぐら……。
私は再度、問いかける。
「……本当にこの条件で支援してくれるの?」
すると、高橋翔は軽口でも叩く様に言う。
『ああ、これ以上の条件は出さないさ。まあ、強いて言えば、都議会議員選挙に立候補する度胸がありそうな人を議席分集めておいてくれると手間が省けて助かる。その程度かな?』
「……都議会議員選挙?」
何故、ここで都議会議員選挙の話が出るのか分からない。
しかし、高橋翔が言うのだ。
「都議会議員選挙に立候補する度胸がありそうな人ね? わかったわ……」
仮にも私は都知事を勤めた女。
この私が声をかければ、それなりの人数を集める事ができる。
「でも費用はどうするつもり? 都議会議員選挙に出るにしてもそれなりの費用が……」
そこまで言って思い出す。
この男にとって資金捻出が容易である事を……。
『……まあ、選挙費用に関しては心配しなくても大丈夫かな? 必要になれば、彼等には宝くじを買って貰うさ。公職選挙法に引っかからない様にね』
宝くじ協議会は紆余曲折を経て、元の運営方針に戻っている。
高橋翔から不正の証拠が見つからず、宝くじが何度も当選する運の良い人を豚箱に打ち込む訳にはいかないためだ。
結局、割を食ったのは我々だけ。高橋翔を筆頭としたピースメーカーの面々は今も宝くじを購入しながら悠々自適な生活を送っている。
プープープープープー
そんな事を考えていると、通話中、仁海から電話がかかってきた。
『うん? 電話かな、話は以上。その書類にサインしたら送り返してくれ』
「ちょっと、待っ……」
一方的に通話を切られた私はため息を吐く。
なんて勝手な男だろうか……。
しかし、今の私にとっては心強い。
「……はい。池谷です」
そう言って電話を取ると、電話口から仁海の声が聞こえてくる。
『――ああ、池谷君。暫らくぶりだね。その後、どうかな。聞けば駅前に一人立ち、選挙活動に勤しんでいるそうではないか』
「ええ、まあ……」
仁海からの支援を頼る事はできない。
今更、何の用があって電話をかけてきたのだろうか。
すると仁海は唐突に本題へ入る。
『まあ、世間話は程々にしておこう。実は君に伝えたいことがある……』
無駄に間を開け勿体ぶる仁海。
そんな仁海にへキヘキしながら私は尋ねる。
「伝えたいこと……ですか?」
仁海がこう言った報告を自発的にしてくる時は決まって自慢話が多い。
『ああ、実はな。高橋翔から氷樹とレアメタルの権利を受領する見込みが立った……』
「……へ?」
今回も碌でも無い自慢話だろうと思えば……。一体、どういう事だろうか。
私は思わず絶句する。
『……君が驚くのも無理はない。ここだけの話、高橋翔の身柄は私が預かっている。今、説得している最中でな。中々、強情で困っているよ。まあ、自由を与えず電話もできない状態のまま、体に直接追い込みをかけている。もう二、三日もすれば素直になるだろう』
「え? ええ?」
仁海の言う事が真実であれば、さっき私が電話したのは一体……。
確かに、仁海の人脈を使えば、高橋翔を捕えるのは容易かもしれない。
しかし、あの高橋翔がそんな簡単に捕まるだろうか??
電話もできない状態のまま、体に直接追い込みをかけているなら高橋翔が私に電話をかける事自体できる筈がない。
もしかして、仁海は間違った情報を掴まされているのではないだろうか。
そこまで考え、私は首を横に振る。
仁海は私を裏切った。
そんな奴が偽の情報を掴まされているなんていい気味じゃないか。
すると、仁海は嬉しそうに言う。
『――そこでだ。今回、君の応援ができなくなった埋め合わせがしたい。お詫びと言ってはなんだが、君にレアメタル利権の一部をプレゼントしよう』
「レ、レアメタル利権の一部をですか!?」
高橋翔の持つレアメタルの産出国は恐らく異世界。
権益の一部だけとはいえ、その影響力は計り知れない。
『ああ……ただ、君が都知事として返り咲いた時は……わかるね?』
まるで蝙蝠の様な男だ。
恐らく、見返りを寄越せという事だろう。
「わかりました。しかし、もし私が都知事に返り咲いた場合、少し困ったことになるかも知れません。主に、不信任決議に賛成した都議会議員達が……ですか……」
今になって思う。
高橋翔は恐らくこの事を言っていたのだろう。私が都知事に返り咲けば、不信任決議案に賛成した都議会議員は窮地に陥る。
民意とはそういうものだ。
「……念の為、都議会議員に出馬したい方を秘密裏に擁立しておいた方がいいかも知れません」
そうアドバイスすると、仁海は呟く様に言う。
『……なるほどな。肝に銘じておこう』
仁海は用心深い。
おそらく、現職の都議会議員以外の擁立を目指し動く事だろう。
『……有意義な話ができて結構だ。都知事選頑張りたまえ』
仁海はその言葉を最後に電話を切る。
私は電話が切れていることを確認すると、深い笑みを浮かべた。
「――まさか、こんなに早く復讐の機会が回ってくるとはね……」
相手が油断している時ほど、隙は大きくなる。
仁海からの電話の前に掛かってきた高橋翔の様子から察するに、仁海は高橋翔の事を捕らえていない。それ所か、捕らえたと錯覚している節がある。
「ふふふ、面白くなってきたわ……」
今の私に失う物は何もない。
高橋翔から送られてきた契約書の内容も利権にさえ関わっていなければ至極真っ当なものだった。今、何の柵のない私であれば余裕で対処可能だ。
「ふひっ……ふひひひひっ……!」
池谷は高橋翔から送られてきた契約書にルーペをあて、内容を確認した後、書き殴る様にサインする。
おそらく、この契約書はピンハネが持っていた物と同じ……つまり、契約書にサインしたが最後、契約は履行しなくてはならない。
しかし、裏を返せば、この契約書にサインしている高橋翔自身も書かれた条項に縛られる。
「いいわ……やってあげるわよ」
自分達のやってきた事は顧みず、全ての責任を私に押し付け不信任決議案を可決した都議会議員の事なんか知ったことか……浄化してやる。この濁り切った東京都を、この私が徹底的に浄化してやる!
その結果、誰がどうなろうが知った事ではない。
私はただ復讐できればそれでいい。
高橋翔自身に思う所がない訳ではないが、ピンハネの一件で世の中には、決して手を出してはいけない人がいるという事を悟らされた。
ただ自分の手の届く範囲にいる者達の裏切りだけは絶対に許せない。
今、私は苦しんでいる。
私に責任を擦り付けた者達も同様の苦しみを味合わせる。
それが、私が私として生きる為の新たな人生の第一歩だ。
失敗しても死ぬほど叩かれるだけで、実際に死ぬ訳ではない。
何故なら、私の命は異世界の徒であるピンハネの同類である高橋翔が守ってくれる。
契約を結ぶとはそういう事だ。
私はただやりたい様にやればいい。
最後は辞任し、隠居するだけで責任を取った事になるのだから楽なものだ。
「……私が都知事に返り咲いたら覚えておきなさい」
東京都からこれまで国が作り上げてきたシステムをメチャクチャにしてやるわ。
具体的には、私を利用してきた団体全てを葬り去る。
委託事業は厳格に管理するし、補助金の支給も企業並みに厳格に行う。開示請求があれば、すべてを包み隠さず公開し、都内で活動する公益法人の監督は他の中小企業と同様にするし、東京都内限定でスパイ禁止法も制定する。不正があれば、返済が終わるまで返還請求し、罪を償わせる。
それが、私を裏切った者達へ一番効率的にダメージを与える事に繋がる。
「ふふふ、楽しくなりそうだわ」
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