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第19話 イナズマでイレブンな魔法を繰り出す魔王
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「グッ……ググッ……あのド腐れ勇者め……!」
大魔王コサカは南極大陸を統べる主(巨大魚)を時空魔法に格納すると、氷層から這い上がると、自身に回復魔法をかけていく。そして、空から降ってきた南極大陸を統べる主によって潰されてしまった釣竿を手に持つと涙を流して怒り狂う。
「あの腐れ勇者め……あのド腐れ勇者め……あのド腐れ勇者めぇぇぇぇぇぇ!」
そして勇者マコトへの怨嗟の声を叫ぶと、思いっきり地面を殴りつけた。
「こんな事はしたくなかったが仕方がない! 融けよ氷の大地よ! あのド腐れ勇者の統べる世界なんぞ水浸しにしてしまえ!」
大魔王コサカは南極大陸の天候を操り、極寒の世界から灼熱の世界へ変えていく。
するとあまりの熱量に南極大陸の棚氷が崩落し、徐々に氷の重さで沈んでいた大陸が浮き上がる。
それだけではない。南極大陸の氷が融ける事によりどんどん水位が上昇していく。
「あのド腐れ勇者の世界なんぞ知った事かぁぁぁぁ! ワシの釣竿を壊した罪その身で味わうがいい!」
そして融けた氷は波となり勇者マコトの統べる世界を襲っていく。
氷の大陸を普通の大陸と化した大魔王コサカは、『ハァッ、ハァッ……』と息をつく。
「フ、フハハハハッ! 思い知ったか勇者マコト! 大魔王であるワシを怒らせるからこんな事になるのだ! 愚か者めがっ!」
南極大陸の氷をすべて融かすと水位が約60m上昇すると言われている。
今、勇者マコトの統べる世界に破滅の音が……迫っていなかった。
「ん? なんだ?」
足下を見ると先程まで陸地だった大地が水浸しになっている。それだけではない。
「す、水位が上がってきただとぉ!」
勇者マコトの統べる世界と、大魔王コサカの統べる世界。
同じ世界ではあるが、勇者マコトと大魔王コサカが契約を結んだ時から別の世界と言ってもいい状態となっている。
そのため、南極大陸の氷を融かす事は、そのまま大魔王コサカが統べる世界に影響を及ぼす。
そうやっている間にもどんどん水位が上昇していく。
「グッ! このままでは拙い……。吹き荒れろ! エターナルブリザード!」
大魔王コサカは一瞬で周囲の大気ごと氷結させる必殺技。エターナルブリザードの魔法を発動させると、折角融かした氷の大地を元に戻していく。
だがまだ足りない。
氷結させた大地に溶けた海水が浸水してくる。
「し、仕方がない……これだけは使いたくなかったが、背に腹は代えられぬ! 凍てつけ! これで終わりだ! エターナルコフィン!」
大魔王コサカが極大氷結魔法エターナルコフィンを発動させると、つい先ほどヤケクソで融かしまくった南極大陸の氷の大地をエターナルコフィンの魔法で元に戻していく。
「そ、そうだった。勇者マコトの統べる世界と、ワシの統べる世界はもはや別次元の存在……すっかり忘れておったわ……。しかしこれでは復讐ができぬ。一体どうすれば……」
どうにかして勇者マコトに復習したい大魔王コサカは考えを巡らせる。
すると、考え込んでいる大魔王コサカの背後から声がかかる。
「よう、大魔王コサカ! さっきは悪かったな。賠償はできねーが良い話を持ってきてやったぜ。まあ話を聞けよ」
いま大魔王コサカが一番聞きたくなかった声に、ビキビキッと額の血管を浮き上がらせると、勇者マコトに向かって即座に攻撃を仕掛ける。
「死ねェ! 魔王・ザ・ハンド!」
怒りの心を手に注ぎ込み勇者を握りつぶすべく手を伸ばす。
「おわっ、あぶねぇ! 何しやがる!」
「チィ! 避けられたか! だがこれを避ける事ができるか! いかりのてっつい!!」
自分の事ばかりを考え無為に行動する勇者マコトに対して怒りの鉄槌を与えるべく、右手を振りかぶりジャンプすると、勇者に向かって拳を振り降ろす。
しかし、ギリギリ避けられてしまった。
「あ、危ねぇ! 人の話を聞けよコサカ!」
「ワシのファーストネームを呼ぶんじゃない! 見せてやろう大魔王の怒りを……灼熱の炎を! 勇者マコト、貴様に絶望を与えよう! カオスブレイク!」
どこかで聞いた事のあるイナズマでイレブンな技名を繰り出すと、大魔王コサカは勇者マコトにかかと落としを繰り出した。
勇者マコトはそれを避けると、声を張って大魔王コサカに話しかける。
「話を聞けって! お前が大切にしていた釣竿を壊した賠償がしたい! 一つの国をくれてやる。それで怒りを鎮めてくれ!」
勇者マコトがそう叫ぶと、大魔王コサカはピタリと攻撃を止める。
「いま言った話は真か?」
「ああ、ボウ国という国をお前にくれてやる。それで機嫌を直せよな!」
釣竿と国とでは明らかに価値が異なる。
勇者マコトの言葉に不信感を抱いた大魔王コサカは質問をする事にした。
「なぜワシにお主の世界の一部を渡す……」
すると勇者マコトから簡単な答えが返ってきた。
「気にくわない奴がいるからだ。それ以上でもそれ以下でもない。俺の機嫌を損ねる様な国いらないからお前にくれてやる。ただし、俺に牙を剥いた王族やその関係者以外には手を出すなよ。もし万が一、魔物がそいつらを襲ったらお前をぶっ殺す」
お前をぶっ殺す発言に気に喰わない所はあるものの、釣竿の補償をするという勇者に感銘を受け、この話を受け入れる事にした。
「わかった。お主に牙を剥いた王族やその関係者以外に手を出さない事を誓おう」
大魔王コサカがそう呟くと、契約が成立する。
「ああ、勇者の庇護を求めない愚かな国に鉄槌を下してやってくれ」
大魔王コサカと勇者マコトは互いに手を取り合うと握手をし、それぞれの場へと転移した。
大魔王コサカは南極大陸を統べる主(巨大魚)を時空魔法に格納すると、氷層から這い上がると、自身に回復魔法をかけていく。そして、空から降ってきた南極大陸を統べる主によって潰されてしまった釣竿を手に持つと涙を流して怒り狂う。
「あの腐れ勇者め……あのド腐れ勇者め……あのド腐れ勇者めぇぇぇぇぇぇ!」
そして勇者マコトへの怨嗟の声を叫ぶと、思いっきり地面を殴りつけた。
「こんな事はしたくなかったが仕方がない! 融けよ氷の大地よ! あのド腐れ勇者の統べる世界なんぞ水浸しにしてしまえ!」
大魔王コサカは南極大陸の天候を操り、極寒の世界から灼熱の世界へ変えていく。
するとあまりの熱量に南極大陸の棚氷が崩落し、徐々に氷の重さで沈んでいた大陸が浮き上がる。
それだけではない。南極大陸の氷が融ける事によりどんどん水位が上昇していく。
「あのド腐れ勇者の世界なんぞ知った事かぁぁぁぁ! ワシの釣竿を壊した罪その身で味わうがいい!」
そして融けた氷は波となり勇者マコトの統べる世界を襲っていく。
氷の大陸を普通の大陸と化した大魔王コサカは、『ハァッ、ハァッ……』と息をつく。
「フ、フハハハハッ! 思い知ったか勇者マコト! 大魔王であるワシを怒らせるからこんな事になるのだ! 愚か者めがっ!」
南極大陸の氷をすべて融かすと水位が約60m上昇すると言われている。
今、勇者マコトの統べる世界に破滅の音が……迫っていなかった。
「ん? なんだ?」
足下を見ると先程まで陸地だった大地が水浸しになっている。それだけではない。
「す、水位が上がってきただとぉ!」
勇者マコトの統べる世界と、大魔王コサカの統べる世界。
同じ世界ではあるが、勇者マコトと大魔王コサカが契約を結んだ時から別の世界と言ってもいい状態となっている。
そのため、南極大陸の氷を融かす事は、そのまま大魔王コサカが統べる世界に影響を及ぼす。
そうやっている間にもどんどん水位が上昇していく。
「グッ! このままでは拙い……。吹き荒れろ! エターナルブリザード!」
大魔王コサカは一瞬で周囲の大気ごと氷結させる必殺技。エターナルブリザードの魔法を発動させると、折角融かした氷の大地を元に戻していく。
だがまだ足りない。
氷結させた大地に溶けた海水が浸水してくる。
「し、仕方がない……これだけは使いたくなかったが、背に腹は代えられぬ! 凍てつけ! これで終わりだ! エターナルコフィン!」
大魔王コサカが極大氷結魔法エターナルコフィンを発動させると、つい先ほどヤケクソで融かしまくった南極大陸の氷の大地をエターナルコフィンの魔法で元に戻していく。
「そ、そうだった。勇者マコトの統べる世界と、ワシの統べる世界はもはや別次元の存在……すっかり忘れておったわ……。しかしこれでは復讐ができぬ。一体どうすれば……」
どうにかして勇者マコトに復習したい大魔王コサカは考えを巡らせる。
すると、考え込んでいる大魔王コサカの背後から声がかかる。
「よう、大魔王コサカ! さっきは悪かったな。賠償はできねーが良い話を持ってきてやったぜ。まあ話を聞けよ」
いま大魔王コサカが一番聞きたくなかった声に、ビキビキッと額の血管を浮き上がらせると、勇者マコトに向かって即座に攻撃を仕掛ける。
「死ねェ! 魔王・ザ・ハンド!」
怒りの心を手に注ぎ込み勇者を握りつぶすべく手を伸ばす。
「おわっ、あぶねぇ! 何しやがる!」
「チィ! 避けられたか! だがこれを避ける事ができるか! いかりのてっつい!!」
自分の事ばかりを考え無為に行動する勇者マコトに対して怒りの鉄槌を与えるべく、右手を振りかぶりジャンプすると、勇者に向かって拳を振り降ろす。
しかし、ギリギリ避けられてしまった。
「あ、危ねぇ! 人の話を聞けよコサカ!」
「ワシのファーストネームを呼ぶんじゃない! 見せてやろう大魔王の怒りを……灼熱の炎を! 勇者マコト、貴様に絶望を与えよう! カオスブレイク!」
どこかで聞いた事のあるイナズマでイレブンな技名を繰り出すと、大魔王コサカは勇者マコトにかかと落としを繰り出した。
勇者マコトはそれを避けると、声を張って大魔王コサカに話しかける。
「話を聞けって! お前が大切にしていた釣竿を壊した賠償がしたい! 一つの国をくれてやる。それで怒りを鎮めてくれ!」
勇者マコトがそう叫ぶと、大魔王コサカはピタリと攻撃を止める。
「いま言った話は真か?」
「ああ、ボウ国という国をお前にくれてやる。それで機嫌を直せよな!」
釣竿と国とでは明らかに価値が異なる。
勇者マコトの言葉に不信感を抱いた大魔王コサカは質問をする事にした。
「なぜワシにお主の世界の一部を渡す……」
すると勇者マコトから簡単な答えが返ってきた。
「気にくわない奴がいるからだ。それ以上でもそれ以下でもない。俺の機嫌を損ねる様な国いらないからお前にくれてやる。ただし、俺に牙を剥いた王族やその関係者以外には手を出すなよ。もし万が一、魔物がそいつらを襲ったらお前をぶっ殺す」
お前をぶっ殺す発言に気に喰わない所はあるものの、釣竿の補償をするという勇者に感銘を受け、この話を受け入れる事にした。
「わかった。お主に牙を剥いた王族やその関係者以外に手を出さない事を誓おう」
大魔王コサカがそう呟くと、契約が成立する。
「ああ、勇者の庇護を求めない愚かな国に鉄槌を下してやってくれ」
大魔王コサカと勇者マコトは互いに手を取り合うと握手をし、それぞれの場へと転移した。
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