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第18話 破断前提の話し合い
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「やべーな。やべーよ……」
大魔王コサカに反抗的な態度を取っている敵国ボウ国の土地割譲をしに南極大陸まで行ったのに……。
「あれ絶対怒ってるよなー。次に俺の顔見たら殺しにかかってくるかも……」
土地割譲どころか大魔王コサカごと南極大陸を滅茶苦茶にしてしまったかもしれない。
「おお、大王陛下! 戻って来て下さいましたか! では早速ボウ国の使者に大王陛下自ら引導を……」
まあ終わった事は仕方がない。
非常に遺憾ではあるが賠償という形でボウ国の支配権を差し出せばいいか……。
「だ、大王陛下? 私の話を聞いておりますか?」
でもなー。此処でボウ国の使者が日和って戦争取り下げちゃったら面倒くさい事になるしなー。
「大王陛下? おーい。聞こえておりますかー?」
仕方がない。ボウ国の使者とやらを散々ディスって戦争に話を持っていこう。何というか、もうそれしかない気がする。
よしっ! これでいこう!
考えが纏まった勇者マコトは思考の渦から脱出すると、国王に視線を向ける。
「よし! 糞爺、俺をボウ国の使者の元に案内せよ。俺様直々に引導を渡してやる」
「き、聞こえておりましたか……。では此方へどうぞ。ボウ国の使者がお待ちです」
国王の案内でボウ国の使者が待つ会議室に入ると、そこにはテーブルに足を置きふんぞり返った態度を取るボウ国の使者の姿が目に写る。
なんだコイツ?
本当に使者なのかコイツ?
「漸く、話が分かる方がいらっしゃいましたか……」
ボウ国の使者はテーブルに置いた足を組み替える。
「私はボウ国の使者、ザマール。そこの凡夫が大王陛下に聞かなきゃ返事が出来ないと言って困っていたのだよ。それで? 君がこの国の大王陛下とやらかな?」
なんだコイツ。今すぐぶっ殺したいんだけど……。
そんな視線を国王に送ると、国王が勢い良く首を横にふる。
こんな無礼な奴でも殺しちゃ駄目らしい。
まあ取り敢えず……。
勇者マコトは席に着くと、テーブルの上に乗っかっている使者の足を払い除ける。
「き、貴様! 何をする!」
激高するボウ国の使者を尻目に、勇者マコトは手をヒラヒラさせる。
「いや、すまない。テーブルに塵が乗っていたのでな……。貴君も不快に思っていた事だろう」
「ぐっ! 塵とは私の足の事を言っているのか!?」
「おや? テーブルに乗っていた塵は貴君の足であったか。いや不思議な事もあるものだ。君はボウ国の使者だろう? その使者の足が何故、テーブルに乗っかっていたのか……」
ボウ国の使者は苦虫を嚙み潰した様な表情を浮かべると、ギリッと音を立てて歯を食いしばる。
「そ、それはそれは失礼致しました。丁度いい高さにカウチソファーがあったので足を乗せてみたのですが、まさか足を払われるとは……」
「ええ、これはカウチソファーではなくテーブルですから、テーブルに乗っている塵を払うのは当然の事です」
勇者マコトがそう笑顔で話しかける。
「それで? ボウ国の使者様はこの国に一体何をしに来たのですかな?」
「ふんっ! まあいい。勇者マコトが魔王を討伐した事により、魔石が採れず困っている。貴国には、採れなくなった魔石の補償をして頂きたい!」
「魔王討伐は全世界の人々の悲願。貴国は魔王が討伐されない方がよかった……そういっているのですか?」
勇者マコトがそう呟くと、ボウ国の使者は鼻息を荒くして答える。
「当然だ! 我が国は魔物を討伐し、その素材と魔石を輸出する事により成り立っていた! それを勇者マコトが魔王を討伐してしまった為、魔物が出現しなくなり魔石が採れなくなってしまったのだ! 補償を求めるのは当然だろう!」
「もし、断ったらどうする?」
勇者マコトの問いに、ボウ国の使者は嗜虐的な笑みを浮かべる。
「その場合、戦争……しかありませんな」
「ほう。戦争ですか……それは穏やかではない」
「私共と致しましては、貴国が補償を断るつもりであれば仕方がありません」
勇者マコトはボウ国の使者を前に考える振りをする。
「そうですか……わかりました。それでは戦争と行きましょう!」
「はぁ?」
ボウ国の使者は意味が分からないと言わんばかりの表情を浮かべると、恐る恐る口を開いた。
「も、申し訳ない。急に耳が遠くなったのか……今、戦争がどうと聞こえた気がしたのだが……」
「はい。折角ですので、戦争と行きましょう。勝てば官軍負ければ賊軍といいますし、その方が分かりやすくていいでしょう? まあ、そもそも戦争にすらならないかもしれませんけどね」
「き、貴様っ! 本気でボウ国とやりあう気か!」
ボウ国の使者は怒りのあまり顔を紅潮させる。
「はい。これで話はお終いですね。帰りは気を付けてお帰り下さい(帰る頃には国が亡くなっているかもしれませんが……)」
「ふん! 不愉快だ! 精々後悔する事だな!」
ボウ国の使者はそう怒鳴り声を上げると、ズカズカと音を立てながら会議室を後にした。
「だ、大王陛下……よろしいのですか?」
国王が心配そうな表情で呟く。
「当然だ。ボウ国が亡国になるだけで、ハジマリノ王国には何の影響もない。じゃあ、もう一度大魔王コサカに会いに行ってくる。あとは任せたぞ」
勇者マコトはそう言い残すと南極大陸に転移した。
大魔王コサカに反抗的な態度を取っている敵国ボウ国の土地割譲をしに南極大陸まで行ったのに……。
「あれ絶対怒ってるよなー。次に俺の顔見たら殺しにかかってくるかも……」
土地割譲どころか大魔王コサカごと南極大陸を滅茶苦茶にしてしまったかもしれない。
「おお、大王陛下! 戻って来て下さいましたか! では早速ボウ国の使者に大王陛下自ら引導を……」
まあ終わった事は仕方がない。
非常に遺憾ではあるが賠償という形でボウ国の支配権を差し出せばいいか……。
「だ、大王陛下? 私の話を聞いておりますか?」
でもなー。此処でボウ国の使者が日和って戦争取り下げちゃったら面倒くさい事になるしなー。
「大王陛下? おーい。聞こえておりますかー?」
仕方がない。ボウ国の使者とやらを散々ディスって戦争に話を持っていこう。何というか、もうそれしかない気がする。
よしっ! これでいこう!
考えが纏まった勇者マコトは思考の渦から脱出すると、国王に視線を向ける。
「よし! 糞爺、俺をボウ国の使者の元に案内せよ。俺様直々に引導を渡してやる」
「き、聞こえておりましたか……。では此方へどうぞ。ボウ国の使者がお待ちです」
国王の案内でボウ国の使者が待つ会議室に入ると、そこにはテーブルに足を置きふんぞり返った態度を取るボウ国の使者の姿が目に写る。
なんだコイツ?
本当に使者なのかコイツ?
「漸く、話が分かる方がいらっしゃいましたか……」
ボウ国の使者はテーブルに置いた足を組み替える。
「私はボウ国の使者、ザマール。そこの凡夫が大王陛下に聞かなきゃ返事が出来ないと言って困っていたのだよ。それで? 君がこの国の大王陛下とやらかな?」
なんだコイツ。今すぐぶっ殺したいんだけど……。
そんな視線を国王に送ると、国王が勢い良く首を横にふる。
こんな無礼な奴でも殺しちゃ駄目らしい。
まあ取り敢えず……。
勇者マコトは席に着くと、テーブルの上に乗っかっている使者の足を払い除ける。
「き、貴様! 何をする!」
激高するボウ国の使者を尻目に、勇者マコトは手をヒラヒラさせる。
「いや、すまない。テーブルに塵が乗っていたのでな……。貴君も不快に思っていた事だろう」
「ぐっ! 塵とは私の足の事を言っているのか!?」
「おや? テーブルに乗っていた塵は貴君の足であったか。いや不思議な事もあるものだ。君はボウ国の使者だろう? その使者の足が何故、テーブルに乗っかっていたのか……」
ボウ国の使者は苦虫を嚙み潰した様な表情を浮かべると、ギリッと音を立てて歯を食いしばる。
「そ、それはそれは失礼致しました。丁度いい高さにカウチソファーがあったので足を乗せてみたのですが、まさか足を払われるとは……」
「ええ、これはカウチソファーではなくテーブルですから、テーブルに乗っている塵を払うのは当然の事です」
勇者マコトがそう笑顔で話しかける。
「それで? ボウ国の使者様はこの国に一体何をしに来たのですかな?」
「ふんっ! まあいい。勇者マコトが魔王を討伐した事により、魔石が採れず困っている。貴国には、採れなくなった魔石の補償をして頂きたい!」
「魔王討伐は全世界の人々の悲願。貴国は魔王が討伐されない方がよかった……そういっているのですか?」
勇者マコトがそう呟くと、ボウ国の使者は鼻息を荒くして答える。
「当然だ! 我が国は魔物を討伐し、その素材と魔石を輸出する事により成り立っていた! それを勇者マコトが魔王を討伐してしまった為、魔物が出現しなくなり魔石が採れなくなってしまったのだ! 補償を求めるのは当然だろう!」
「もし、断ったらどうする?」
勇者マコトの問いに、ボウ国の使者は嗜虐的な笑みを浮かべる。
「その場合、戦争……しかありませんな」
「ほう。戦争ですか……それは穏やかではない」
「私共と致しましては、貴国が補償を断るつもりであれば仕方がありません」
勇者マコトはボウ国の使者を前に考える振りをする。
「そうですか……わかりました。それでは戦争と行きましょう!」
「はぁ?」
ボウ国の使者は意味が分からないと言わんばかりの表情を浮かべると、恐る恐る口を開いた。
「も、申し訳ない。急に耳が遠くなったのか……今、戦争がどうと聞こえた気がしたのだが……」
「はい。折角ですので、戦争と行きましょう。勝てば官軍負ければ賊軍といいますし、その方が分かりやすくていいでしょう? まあ、そもそも戦争にすらならないかもしれませんけどね」
「き、貴様っ! 本気でボウ国とやりあう気か!」
ボウ国の使者は怒りのあまり顔を紅潮させる。
「はい。これで話はお終いですね。帰りは気を付けてお帰り下さい(帰る頃には国が亡くなっているかもしれませんが……)」
「ふん! 不愉快だ! 精々後悔する事だな!」
ボウ国の使者はそう怒鳴り声を上げると、ズカズカと音を立てながら会議室を後にした。
「だ、大王陛下……よろしいのですか?」
国王が心配そうな表情で呟く。
「当然だ。ボウ国が亡国になるだけで、ハジマリノ王国には何の影響もない。じゃあ、もう一度大魔王コサカに会いに行ってくる。あとは任せたぞ」
勇者マコトはそう言い残すと南極大陸に転移した。
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