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第25話 その頃のボウ国の国民達はというと……
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ボウ国を大魔王に支配されてしまった私達は、ボウ国の国民と共にハジマリノ王国から隣国オワル王国に辺り築かれた壁沿いに移動を始める。
「くっ……。何故、何故この私がこんな事に……」
ハジマリノ王国に使者として訪れたボウ国の貴族ザマールは、部下のカストリスの前でそう呟く。
ボウ国の国民達がその身一つでハジマリノ王国に転移させられたのに対し、馬車ごとハジマリノ王国に転移させられたザマールは今、上位貴族に馬車を強請られ、国民達と同じく徒歩での移動を強いられていた。
幸いな事に、壁沿いに10日も歩けば隣国オワル王国に辿り着く事ができるだろう。それにしても、こんなに歩いたのはいつ以来だろうか……。
ザマールが息を切らしながら国民達と移動していると前方から歓声が上がる。
「川だ! 食べ物もあるぞ!」
歩くので精一杯で気付かなかったが、太陽が天辺にある。今は昼時。歩いた事で腹も減ってきた。
国民達が歓声を上げる中、それに水指す行為をする者が現れる。そう、クズ中のクズ貴族にして私の乗っていた馬車を奪い去ったクソ貴族、クズジャン・ピエール大公である。
「皆の者! よく聞け! 私はクズジャン・ピエール大公である! この川と食料は私が見つけたものだ! 川の水で喉を潤し、不自然に生えている食料で腹を満たしたければ、私に金を払え!」
クソ貴族クズジャン・ピエール大公がそう叫ぶと、馬車から一人の男の子がバナナを片手に降りてきた。
「パパ。このバナナ美味しいよ」
「おお、そうかそうか。どんどん食べなさい。まだまだこんなにも沢山の食料があるのだからな」
「うん! でもみんなの視線を受けながら食べるのはちょっと……。あっ! 良い事を思いついたよパパ! お金がない貧乏人には、そこに置いてある不味そうな木の根みたいな食べ物や、僕達が食べた後の残飯をあげればいいんじゃないかな!」
その男の子は、チラリとボウ国の国民達に視線を向けると、そんなとんでもない事を呟く。
「おお! 天才かっ! その考えはなかったぞ!」
クズジャン・ピエール大公は国民達に視線を向けると、大声をあげる。
「良かったなお前達! 金がなくてもただ飯が食えるぞ! ほら、そこにある木の根みたいな食べ物をくれてやる。一杯食べるんだぞ。木の根みたいな食べ物には食物繊維が豊富に含まれているからな。食物繊維は凄いんだぞ。便秘の予防だけではなく整腸効果や血糖値上昇を抑制する効果がある。ああ、安心しろ。残飯が欲しい奴には、後で腹がパンパンになる程食べさせてやる。環境の為にも残飯処理は大切だからな! まずはホレ、私の息子が食べたバナナの皮をプレゼントしてやろう」
そう大声を上げると息子からバナナの皮を受け取り、国民の頭上へと放り投げる。
放り投げられたバナナの皮は放物線を描きながら国民達の頭上を通りそのまま地面に落下した。
ボウ国の国民の誰一人として、クズジャン・ピエール大公が投げたバナナの皮に飛びつく人はいなかった。
「んん? なんだ、折角、残飯をくれてやったというのに誰もいらないのか?」
クズジャン・ピエール大公がそう言い放つと、国民達が大公を睨みつける。
「なんだその視線は! この川と食料は私が最初に発見したのだぞ! 見つけた食料を金銭と交換で譲り渡して何が悪い! それに私は大公だ! 王族が全員死んでしまった今、一番偉いのは私だぞ! お前達は、大公である私に逆らうとでもいうのか!」
すると、一人の青年が大公の横を通り過ぎていく。
「お、おい! 何をやっている!」
そして、食料に手を付けると、一心不乱に食べだした。
「おい! 何を勝手に食べているんだ! それは私が発見した食料だぞ! やめ……ぐふっ!」
クズジャン・ピエール大公が慌てて、それを止めようとすると、今度は後ろから来た女性に殴られてしまう。そして、その女性も食料に手を付けると一心不乱に食べだした。
「お、おい! 貴様ら! 私にこんな事をしていいと思っているのか! 私は大公だぞ! ボウ国の大公! 処刑だ処刑! 貴様らは絶対に処刑してやるからな!」
すると今度はボウ国の全国民がこちらに向かってやってくる。
「や、やめろ! 嘘、嘘嘘嘘! 冗談だ! いや冗談でした! 来るな! こっちに向かって来るんじゃない! やめろぉぉぉぉ……うごぉぉっ!」
「パパぁ! あー! 駄目ー! ボクの食べ物がー! みんな食べちゃ駄目だって! うわー!」
暴徒化したボウ国の国民は止まらない。
「うるせぇ! チビ!」
「邪魔だデブ!」
「何が大公よ! ボウ国が大魔王に支配された今、そんなの関係ないじゃない!」
「テメーこそ木の根と残飯食ってろ!」
クズジャン・ピエール大公とその息子を馬車ごと倒すと、次々と食料を掴み取る。
その光景は阿鼻叫喚の地獄。
勇者マコトが国民全員に行き渡る様に置いておいた食料は、食料を手にしようとするボウ国の国民達により一つまた一つとゴミに代わっていく。
この暴動はもう止まらない。
暴動を客観的に見ていたザマールがそう思うと、突如、天候が崩れ大雨が降ってきた。
「くっ……。何故、何故この私がこんな事に……」
ハジマリノ王国に使者として訪れたボウ国の貴族ザマールは、部下のカストリスの前でそう呟く。
ボウ国の国民達がその身一つでハジマリノ王国に転移させられたのに対し、馬車ごとハジマリノ王国に転移させられたザマールは今、上位貴族に馬車を強請られ、国民達と同じく徒歩での移動を強いられていた。
幸いな事に、壁沿いに10日も歩けば隣国オワル王国に辿り着く事ができるだろう。それにしても、こんなに歩いたのはいつ以来だろうか……。
ザマールが息を切らしながら国民達と移動していると前方から歓声が上がる。
「川だ! 食べ物もあるぞ!」
歩くので精一杯で気付かなかったが、太陽が天辺にある。今は昼時。歩いた事で腹も減ってきた。
国民達が歓声を上げる中、それに水指す行為をする者が現れる。そう、クズ中のクズ貴族にして私の乗っていた馬車を奪い去ったクソ貴族、クズジャン・ピエール大公である。
「皆の者! よく聞け! 私はクズジャン・ピエール大公である! この川と食料は私が見つけたものだ! 川の水で喉を潤し、不自然に生えている食料で腹を満たしたければ、私に金を払え!」
クソ貴族クズジャン・ピエール大公がそう叫ぶと、馬車から一人の男の子がバナナを片手に降りてきた。
「パパ。このバナナ美味しいよ」
「おお、そうかそうか。どんどん食べなさい。まだまだこんなにも沢山の食料があるのだからな」
「うん! でもみんなの視線を受けながら食べるのはちょっと……。あっ! 良い事を思いついたよパパ! お金がない貧乏人には、そこに置いてある不味そうな木の根みたいな食べ物や、僕達が食べた後の残飯をあげればいいんじゃないかな!」
その男の子は、チラリとボウ国の国民達に視線を向けると、そんなとんでもない事を呟く。
「おお! 天才かっ! その考えはなかったぞ!」
クズジャン・ピエール大公は国民達に視線を向けると、大声をあげる。
「良かったなお前達! 金がなくてもただ飯が食えるぞ! ほら、そこにある木の根みたいな食べ物をくれてやる。一杯食べるんだぞ。木の根みたいな食べ物には食物繊維が豊富に含まれているからな。食物繊維は凄いんだぞ。便秘の予防だけではなく整腸効果や血糖値上昇を抑制する効果がある。ああ、安心しろ。残飯が欲しい奴には、後で腹がパンパンになる程食べさせてやる。環境の為にも残飯処理は大切だからな! まずはホレ、私の息子が食べたバナナの皮をプレゼントしてやろう」
そう大声を上げると息子からバナナの皮を受け取り、国民の頭上へと放り投げる。
放り投げられたバナナの皮は放物線を描きながら国民達の頭上を通りそのまま地面に落下した。
ボウ国の国民の誰一人として、クズジャン・ピエール大公が投げたバナナの皮に飛びつく人はいなかった。
「んん? なんだ、折角、残飯をくれてやったというのに誰もいらないのか?」
クズジャン・ピエール大公がそう言い放つと、国民達が大公を睨みつける。
「なんだその視線は! この川と食料は私が最初に発見したのだぞ! 見つけた食料を金銭と交換で譲り渡して何が悪い! それに私は大公だ! 王族が全員死んでしまった今、一番偉いのは私だぞ! お前達は、大公である私に逆らうとでもいうのか!」
すると、一人の青年が大公の横を通り過ぎていく。
「お、おい! 何をやっている!」
そして、食料に手を付けると、一心不乱に食べだした。
「おい! 何を勝手に食べているんだ! それは私が発見した食料だぞ! やめ……ぐふっ!」
クズジャン・ピエール大公が慌てて、それを止めようとすると、今度は後ろから来た女性に殴られてしまう。そして、その女性も食料に手を付けると一心不乱に食べだした。
「お、おい! 貴様ら! 私にこんな事をしていいと思っているのか! 私は大公だぞ! ボウ国の大公! 処刑だ処刑! 貴様らは絶対に処刑してやるからな!」
すると今度はボウ国の全国民がこちらに向かってやってくる。
「や、やめろ! 嘘、嘘嘘嘘! 冗談だ! いや冗談でした! 来るな! こっちに向かって来るんじゃない! やめろぉぉぉぉ……うごぉぉっ!」
「パパぁ! あー! 駄目ー! ボクの食べ物がー! みんな食べちゃ駄目だって! うわー!」
暴徒化したボウ国の国民は止まらない。
「うるせぇ! チビ!」
「邪魔だデブ!」
「何が大公よ! ボウ国が大魔王に支配された今、そんなの関係ないじゃない!」
「テメーこそ木の根と残飯食ってろ!」
クズジャン・ピエール大公とその息子を馬車ごと倒すと、次々と食料を掴み取る。
その光景は阿鼻叫喚の地獄。
勇者マコトが国民全員に行き渡る様に置いておいた食料は、食料を手にしようとするボウ国の国民達により一つまた一つとゴミに代わっていく。
この暴動はもう止まらない。
暴動を客観的に見ていたザマールがそう思うと、突如、天候が崩れ大雨が降ってきた。
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