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第31話 三日後

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 あれから三日後。
 勇者マコトが大王の間で、複数の美女といちゃついていると、血相を変えた国王が大王の間に入ってくる。

「だ、大王陛下! 大変です!」

「あっ? なんだ国王か……。前にも言っただろ。大王の間に入る時にはノックして俺が入れと言ってから入れってよぉ」

「し、しかし急用でして……」

 口籠る国王に勇者マコトは、美女といちゃつきながら話しかける。

「急用? 俺様はハジマリノ王国に召還されてから大魔王コサカを封印する迄の数年間の疲れを癒す為、美女と戯れていて忙しい訳だが、それに勝る程の急用とは一体なんだ? それはお前達で対処できない様なものなのか?」

「そ、その通りです。私共では対処しかねる方々が王城の外におりまして……」

 勇者マコトは美女といちゃつきながら≪半神眼≫で王城の外を見ると顔をしかめる。
 そこには30体のゴーレムとゴーレムに担がれた汚い格好をした男女の姿があった。

「ああ、アイツらか正直忘れてたわ……」

 そういえば、三日前。敵対国家の王族関係者を捕え連れて来る様にと命令した様な気がする。
 すっかり忘れていた。
 今となっては正直どうでもいい。

 勇者マコトは片手間で、一つの大きな塔を造り上げると、そこにそいつらを放り込むよう命じる。

「今、王城近くの広場に塔を造り上げた。あいつ等全員その中に入れておけ。ああそうだ。後で暇な時にでも激励の言葉をかけに行くから、汚い身体を雑に洗ってから塔に放り込むように……。じゃあ、俺様は忙しいから、あとはよろしく」

 勇者マコトはそれだけ言うと美女と戯れだす。

「だ、大王陛下!? 嘘ですよね? たったそれだけですか? 仮にも他国の王族ですよ?」

 煩い爺め。何度言わせれば気が済むんだ。
 俺様は今美女と戯れるのに忙しい。さっさと終わらせよう。

「アイツらは最早王族ではない。ただの農民だ。反抗されない様、首輪でも付けて農民同様に畑仕事をさせておけ。ちゃんと首輪を付けてから刃物を持たせるんだぞ。あと監視カメラを設置しておいた。奴等がサボらない様しっかり見張る事。ああ、言い忘れた。アイツらの国が農民に課していた税率は七割だったな……。月に一度、奴等が作った農作物の八割を税金代わりに取り上げろ。今まで良い暮らしをしてきたんだ。残りの人生で普通の農民達の生活とイーブンに持っていかないとな……。ちゃんと最低限納める税を設定しておけよ。話は以上だ。後の事はよろしく頼む」

「ち、ちょっと待って下さい。監視カメラって何ですか? 彼等は三日三晩垂れ流すだけで、何も食べていないんですよ? このままでは死んでしまいます!」

 勇者マコトは、宣戦布告してきた奴だし、死んでもいいんじゃね? という言葉を飲み込むと国王に視線を向ける。

「じゃあ農民が普段食べている飯よりツーランク落とした飯を与えろ。今日一日だけ休ませてやる。寝場所は馬小屋でいいか……。飯を食べさせた後、藁にでも寝かせておけ。あと塔で育てる作物が育つまでの二週間は今日と同じ飯を食わせてやる。しかし、それ以降は自分達で生計を立てるように。まあここまでお膳立てして死ぬ様ならそれが奴等の天命だ。働かざる者食うべからず。育てたら育てただけ結果の出る場所は提供した。死にたくなければサボるなよとでも伝えておいてくれ」

「お、鬼ですな……」

「あっ? なんか言ったか?」

 勇者マコトがギロリと国王を睨みつける。

「い、いえ……。なんでもありません」

「話は終わりだ。さっさと出ていく様に」

 勇者マコトはそう言い放つと、今度こそ心ゆく迄美女達と戯れだした。

 一方、その頃。強制的に身体を洗われ人としての尊厳を蔑ろにされたと思っている元王族関係者達はというと……。

「ぐっ……。腹が減って動けぬ」

「私達はここで死ぬのか……」

「人生を賭して信仰を重ねてきた、私達ほど敬虔なる信者であれば生き永らえる事ができる筈だ」

 今までとはまるで違う対応に唖然としながら、グーグーと腹を鳴らしていた。

 すると、そんな元王族関係者の鼻腔が食べ物の匂いを嗅ぎつける。
 匂いの元を辿る様に視線を向けると、そこには食べ物を乗せたお盆を持つ騎士達の姿を目にする。

「おお……! 食べ物だ。三日振りの食べ物だ!」

 この三日間、飯も食べれずゴーレムに強制的に連れてこられ、人としての尊厳という尊厳全てを奪われたと思っている元王族関係者は歓喜の声をあげる。

 よくよく考えてみれば、私達は他国のとはいえ王族。ハジマリノ王国も遅ばせながら、王族を攫うという罪の重さに気付いたらしい。
 とはいえ、腹が空いた。
 ハジマリノ王国を糾弾し裁くのは後にしよう。

 騎士が置いたお盆を覗き込むと、そこには一杯の水と黄色く濁り何かが浮いているスープらしき物、そして蒸した芋が一個だけ置いてある。しかも、フォークやスプーンもない。まさか手掴みで食べろとでも言うのだろうか?

 到底王族に振る舞うべきではない食事に唖然としていると、お盆を置いた騎士が口を開く。

「これは大王陛下からの慈悲だ。粗末にするなよ。もし食べたくなければ食べなくてもいい。しかし、明日から二週間これと同じ食事が続く。早めに慣れたほうがいいと思うがな……」

 こ、これが食事だと……。これではまるで家畜の食事ではないか……。

 しかし、三日間ぶりの食べ物が目の前にある事は事実。それに腹が減り、喉が渇いているせいで抗議する気力もない。

 王族関係者は仕方がなく、目の前に出された水と食べ物を口に運ぶ。三日間振りに食べた食事は塩の味がした。
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