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しおりを挟む「なんでっ、わらうのぉっ、」
秋葉さんはクスクスと笑っている。そんで、ずっと俺の背中を撫でている。
「ごめんね、しんどいのにね。宇津希がちっちゃい子みたいで可愛くて」
「なに、それ、さいてい、ばか、」
「ふふっ、…そうだね、最低だね、ごめんね?」
「またわらったぁ、…、っひ、」
「ごめんごめん。でもね?ずっとこのままじゃお腹苦しいでしょ?もうちょっとだけ頑張れるね?」
「……っ、ん、」
「よしいい子」
頭をポンポンと叩かれて、腕を引かれて。後ろから抱き抱えられてまた、さすられるお腹。
「泣いてたら余計力入っちゃうよ?」
「っ、っん゛、」
息を止めても、深呼吸をしても、涙は止まったけどしゃっくりは依然出たまま。便器の前でいつもみたいに性器を持たされる。
「ここはトイレ。おしっこしていい場所。分かる?」
「…そんなの、わかって、」
「そうだね。わかってるよね。でもね、体は分かってないみたい」
「んっ、」
肩を何度か軽く叩かれて、摩られて、揉まれて。
「背中とー…腕も。緊張してる。手ぶらーんってしてみよっか」
「リラックスリラックス。足も広げてみ?」
無意識に寄っていた膝が開かれる。脚の付け根を軽く揉まれて初めて、そこに力が入っていたのだと実感した。
「あとはココ。お腹だけ」
未だ何度も撫でられているそこは、ぽっこりと膨らんだまま。冷えていた腹は随分と温まった。秋葉さんの手の感触にも慣れたぐらいに。
どうやってしてたっけ。どうやっておしっこを出してたっけ。考えれば考えるほど分かんなくなって、そしたらまた意識してしまって。
「しーしーって言ってみよっか」
「っ、ぇ、」
「おまじない。自分で言った方が効果あるよ?」
意味わかんない。そんな恥ずかしい言葉。一気に顔が熱くなって、嫌だと思わず呟いた。
「俺も一緒に言うからさ。ほら、しーしー、」
「っ、しぃ…しぃ…?」
「上手。しぃー、しぃー」
耳元でかかる息と、甘い声。何度も何度も2人で繰り返す、「おまじない」。
「……ぁ、ぁあっ、」
そう時間はかからなかった。全身に電流が流れたみたいに震えて、先端にぶわぁと熱が広がる。
やっと。やっとおしっこが出来る。チョロリと便器に吸い込まれる音が聞こえた。
「ぁっ、んっ、んんっ、んんんんっ、」
「こーら、焦らない。これでいいの」
止まってしまう、そう思って反射で気張ってしまったタイミングで、3本の指で優しくくるくると膀胱を撫でる秋葉さん。
「だって、こんなんじゃおわらないっ、」
「足が生えてる訳でもないんだから。便器は逃げません。ゆーっくりでいいの。ほら、しーしー言うの止まってるよ?」
俺の焦りとは裏腹に、間抜けな掛け声を続け、俺のお腹を変わることなく撫で続けている。
「しぃーー…しぃーー…」
じゅぃ…じゅぅ…
「しぃっ…しぃーー…ぁっ、、」
じゅぃぃい…じゅぅうううう…
「しぃっ、っし、ぃー、…っ、ぁ、あ、あ゛、」
じょぉ…じょぉお…
「あ、あっ、で、でぅ、」
しょおおおおおおおおおおおっ、
けたたましい水流が便器を叩く。びちゃびちゃと狂ったホースみたいに耐えてたものが溢れ出し、お腹のものが排出されている、お腹がみるみるうちに軽くなっていくから分かった。
「ぁっ、し、しぃ、」
「すっきりした?」
「…でた、」
「よく出来ました」
「、…ん、ぁっ、」
がくりと視界が低くなる。膝が崩れた。力、抜けた。
「っ、とと…大丈夫?打ってない?」
「ん、」
秋葉さんの腕でお腹を押さえられていなければ、今もなおガクガクと震えている足は地面に打ち付けられていただろう。
「お腹変になってない?」
「ん、」
放心してしまって頭がボーッとする。ふわふわして、夢の中にいるみたい。立つように促されて、パンツとズボンを履かせてもらっているのも、壊れ物に触るようにお腹を何度かさすられるのも。
「ご飯食べよっか」
頭を撫でて、背を押してくれるのも。
「宇津希ぃ…あとで食べな?」
手に持った箸が何度も落ちかける。うどんが滑り落ち跳ねた汁の熱さが頬にチリ…と伝わった。
「ん゛~…」
目の前のうどんがどうしようもなくぼやけている。まだ数口しか啜っていないのに。眠い。眠すぎる。こんなことは初めてで、手の甲をつねっても、お茶を一気に飲んでも治らない。
「起きたらまたあっため直したげるから。布団行きな?」
「…ん~、」
ここ数日の眠気が一気にのしかかっている。瞼を開けよう開けようと頑張っても意味がない。視界がぼやけていつもよりも狭い。
「はいおしまい。こっち、ごろーんして」
お箸を取り上げられて、背中を押されてベッドに誘導されて。挟み込まれた掛け布団を引っ張って俺の上にかけてくれる。
「んぅ、」
「はい、おやすみ」
温かい手が目元を覆う。瞼がじんわりと温められて、視界が遮られた。心地いい。布団越しにトントンってされるのも、優しい声でおやすみって言われるのも。ふわふわと宙に浮いているみたいで、あったかい。
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