その日、神絵師がVR世界に舞い降りた

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ひとつのギルドができるまで

とりあえず

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「今日はね、目標を決めたの!」
「目標?」
「うん! 学校の休み時間に攻略サイトをちょっと見たりして、序盤にやれることとかを探してみたの!」
「ありがとう、指針がある方が動きやすいものね」

 Monster Legendsへログインした兄妹は、ハジマリの古都の片隅にあるベンチで今日のタスクを話し合っていた。昨日ヒュウガがラテと会話を交わしていたベンチだ。

「まず最初! 職業に就きます!」
「僕たち、今は無職なんだね」
「そうだね! 最初に選べるのは一次職っていう職業みたい!」

 スノウが挙げた一次職は、
“戦士”
“狙撃手”
“聖職者”
“魔術師”
“職人”
の五つだった。それぞれに違った特徴があり、またプレイスタイルによって様々な二次職三次職へと進化するらしい。

「龍人も獣人も前衛職の戦士に向いてるらしいけど……お兄ちゃんは戦士って感じしないよね?」
「うん……僕は……何だろう……?」
「やっぱり職人かなぁ? お兄ちゃんは何かを作るのがとっても上手だもん」

 二人がのんびりと話し合っていると、そこへ小さな足音が近付いてきた。

「職業のことならボクにお任せー、ですよー!」

「あ、ラテさん」
「ラテさん! 今日もふわふわー!」
「おふたりのログイン通知がきたので、飛んできちゃいましたよー」

 できたばかりの友人の姿に、兄妹は嬉しそうに笑う。

「なにしろボクは上級職解放済み! フレンドやギルメンから話を聞きまくりでーすからねー、他の職業にも何かと詳しいのでーすよー」
「それは、頼りになります」
「やったー! お話いろいろ聞かせてください!」

そんな可愛らしい二人に、ラテもまた満足気に微笑んだ。


「スノウ……さんーはヒューガさんを守りたいんですよねー、ならやっぱり戦士がいいと思いまーすよー」
「やっぱりそーですよね! わたしもそれがいいと思ってました!」
「戦士は二次職からかなり有用な職に就けますからねー、コンテンツでも席がありまーすよー」
「席……?」

 ラテの言葉に電車の座席を思い浮かべて疑問符を出すヒュウガに、ラテはにこにこと応える。

「席がある、っていうのはー、まあ居場所があるというかー……モンレジェって色々なコンテンツがあるんですけどー、場合によっては“え、その職業の人とパーティ組むの嫌なんだけど!”みたいになるやつもあってー」
「そんなことが……」
「たとえばレベル30から参加できるトレジャーコンテンツでは聖職者系列の職業が割と居場所ないというか足手まといというか……」
「あー……戦士だとそれがないんですか?」
「うんー、やっぱり前衛って基本だからー、ですからー。特定のパーティ構成でないと突破できないコンテンツとかじゃなきゃ戦士系列は必須なんですよー」
「なるほど……」

 それなりにゲームをしてきているスノウとは反対に、ゲーム慣れしていないヒュウガはちんぷんかんぷんといった様子だ。
 そんな兄の様子に「あとで攻略サイトの用語集とか見せてあげよう」と考えたスノウは、ラテの話に再び耳を傾ける。

「んー……とりあえず、スノウさんはもう戦士になっちゃった方がいいと思いまーすー。中央の戦士詰所で登録すればおーけーなので、まずはそこ行きましょっかー」
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