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新たな仲間!
しおりを挟む少し休憩し、クロ達は街へ戻る。色々あったが、ちゃっかりペーラの花は持ち帰っている。
依頼は完了だ。
報酬を受け取りみんなで山分け、懐が潤う程ではないがこの報酬はなかなかだ。
ふらふらで帰ってきたクロ達は1日の休息を挟み、再びパーティー会議を開く。
「メンバーを増やそう」
クロは腕を組み言う。
「前衛一人に後衛一人は欲しいな」
そもそも、ネロが増えたというだけでメンバーは全く足りていない。そうクロは考えている。メンバー自体は四人いるがミラは回復専門、実質三人で戦っている。クロの希望としてはあと最低二人は欲しい。あと二人増えれば戦いやすくなり、戦い方の幅も広がる。もちろん、メリットばかりではない、デメリットもある。メンバーが増えると、一人あたりの報酬が減る。入ったメンバーと信頼関係を構築できるかもわからない。
不安要素はあるが、今の状態ではさすがにやって行くにはキツすぎる。その事はみんなも分かっているはずだ。
俺たちは新たにメンバーを募集する。
パーティーメンバー募集!
前衛二人に後衛二人のパーティーです。
さぁ!一緒にゴブリン狩りをしよう!!
短い文章に少し間抜けな絵を描きカウンターへ持って行く。
張り出されて、その募集を見る冒険者は皆んなが笑った。「何だよ、ゴブリン狩りをしようって!」そう言い、高笑いする。
まぁ、半分くらいはウケを狙って書いている。笑われる事は問題ではない。他に狙いがあるのだ。
まず、ゴブリン狩りなんてするのは駆け出しも駆け出し、そんな冒険者しか受けない。
俺はまだ駆け出し、変にランクが上の冒険者が入って来ても肩身の狭い思いをするだけだ。狙いは俺達と同じランク、そしてゴブリン狩りをバカにしない様な冒険者を勧誘するためだ。そう言う冒険者なら仲良くやっていけると思った。
「とりあえず、これでひとまず来るのを待とう」
俺たちは街へ繰り出した。
メンバー四人。だが実質三人。これは少し問題だ。
この世界には冒険者の他にサポーターと言う物がある。サポーターとは名前の通りサポートをする者のこと。冒険者パーティーに絶対ではない、二分の一くらいの割合でいるらしい。討伐モンスターの素材回収や便利アイテムを持ち、冒険者の戦闘サポートをする。ミラにはサポーターになってもらう。
俺たちがまず向かったのは、マジックアイテムを売っている店だ。
薄暗い店内、輝くマジックアイテムが店内を照らす。
「ちょっと不気味だな」
マジックアイテムの横に書かれるアイテム名。まず、選んだのは光玉と言うアイテムだ。俺は投げてから一、二秒程では強烈な光を放つ目くらましアイテムだ。そして音玉、これも同様に投げてから一、二秒程では強烈な音を放つ。まぁ、両方ともスタングレネードの劣化版といっていいだろう。光専門と音専門。そして専門とする両方ともスタングレネードには及ばない。その程度のものだ。それでも、それなりのモンスターの動きを止めるには十分なものだ。
他には火を起こすマジックアイテムのファイアステッキという棒を折ると火が出るアイテム。
トータル、光玉を二個、音玉二個、ファイアステッキを五本購入した。ミラはまだ子供、あまり多くなっても可哀想だ。
そして次に武器屋へ向かい、手頃な値段の小型の弓を購入する。
ミラにはこれで遠距離からのサポートをしてもらう。もちろん、すぐにできるとは思わない。ぼちぼち練習して最終的にできるようにという感じだ。
ミラの装備が揃った。小さいポーズに購入したアイテムを入れ、左手に弓、腰に短い矢をぶら下げる。少し重そうにも見えるが、これは我慢してもらうしかない。
街を歩くと何故か色んなものが目に入る。人や物、建物一つ一つに街の雰囲気なんかも敏感になっていた。
いつから、そして理由も検討が付いている。
これは、あの大蛇に追いかけられてからだ。
気持ちの切り替え、それだけでここまで見える世界が変わるのかと思う。この街に来た直後はこんな風に見えてはいなかった。異世界ということもあって興味は持っていたと思う。だが、俺は前しか見えていなかったのだろう。異世界だからと、何処かアニメを見るようにこの世界を見ていたのだろう。だが、今はよく見える。
そして、心が少し荒む。活気があるように見えるが、人々の顔色は暗い。一番目につくのは奴隷達だ。主人にこき使われ、怯え、泣きそうになりながら命令に従う。悲しげな光景。
どうにかしてやりたい…
が、さすがにそれは出来ない。
偽善者を演じると決めたが、俺がどうあがいてもこの世界にいる奴隷達を救う事は出来ない。これはどのアニメの主人公も同じだ。
俺は歯痒い思いで目をそらす。ミラに視線を向け、
この子は…
と、幸せにする事でを誓う。
それから二日。
ギルドの酒場。椅子に座り、ぐったりとした態勢で身体を机に預ける。
「あーあ、腹減った…」
俺たちはこの二日間、依頼をこなしていない。俺たちは新しい仲間がが来るまで依頼を受けないと決めていた。
……というのは言い訳で、前回の依頼であんな事があったのだ、怖くて依頼を受けられない。と言うのが本音だ。
この二日間、ギリギリまで節約し食費を減らした。現在お昼、前に食事をしたのは昨日の夜。もちろん、アリスとミラにはちゃんと食事をさせている。だが、そろそろ食事を摂らないと正直キツイ。アリスは俺がぐったりとしていると「大丈夫?」と声をかける。そして俺も「大丈夫」と返す。このやり取りをアリス達が食事をとり、俺が食事を抜いているタイミングの時に必ずする。そろそろ本当に来てくれないと、気持ち的にも金銭的にもまずい。
そんな時だ。
「あの」
カウンターのお姉さんが俺より少し年下くらいかという少年少女二人を連れてきた。
「パーティーに入りたいという方々が見つかりました」
クロは跳ね起きる。
「レーナっていいます。こっちは弟のソーゴです。二人とも冒険者ランク一です。これからよろしくお願いします。」
深く頭を下げるレーナ。その横で軽くペコっとむすっとした顔で頭を下げる。愛想の良いレーナに対し、無愛想なソーゴ。
何だこいつ、と思いつつも第一印象のみで判断してはいけないと自分に言い聞かせる。
「よろしく、俺はクロ。こっちはアリスでその隣がミラ。」
ミラは軽く頭を下げ、アリスは俺の服の袖を掴み、頭を下げる。
「二人とも人見知り何だよ」
二人に対し怯えるような態度を見せるアリスと、少しぶっきら棒な態度をするミラをフォローする。
俺たちはネロと合流し、早速ゴブリン討伐の依頼を受け森へ向かう。
二日ぶりの依頼、身体が鈍っていると言うことはなかったが、クロは今空腹状態。身体に力が入らなかった。
だが、ゴブリンを発見すると身体に緊張が走る。前回の依頼の事が頭をよぎり嫌でも気合が入り、少し身体が震える。
今回はソーゴとレーナの実力確認を兼ねている。俺は二人でゴブリンを倒すように言うと二人はコクリと頷いた。
そこから数秒、息を合わせる二人。次の瞬間、二人は攻撃を仕掛けた。レーナが無属性の拘束魔法を使う。ゴブリンの足元に魔法陣が現れ、紫色の鎖が拘束する。ミラの使う魔法とよく似ている。見た感じは拘束しているものが違うだけ。俺の目にはそうしか見えないが恐らく、相性や強度などいろんなものがあり、それぞれ違うのだろう。
レーナがゴブリンを拘束すると同時にソーゴが飛び出し斬りかかる。ソーゴはあっという間にゴブリンの首を落とし一撃で倒した。いざと言う時の為に準備をしていたが必要はなかった。
「どうでしたか?」
レーナは少し不安そうに聞く
「うん、充分だ。これからよろしくな」
安心したレーナは軽く笑みを浮かべたが、ソーゴは表情一つ変えずうんともすんとも言わない。
流石のクロも思う事はあったが、何か言って関係が悪くなってもと思い何も言わなかった。
何にせよ、メンバーは揃った。
俺たちは簡単な依頼を片っ端から受けていった。採取系の依頼にゴブリン討伐。依頼をこなすに連れ、どんどんチームワークを向上させていくのか実感できた。
そして、前に失敗したヒューマンウルフ討伐にも行き、前回の失敗を活かし仲間を呼ばれる前にアリスとレーナの拘束魔法で動きを止め、手早く倒し無事に依頼を完了した。
星一、星ニのか依頼は殆どこなし俺たちはどんどん自信をつけた。
そして俺たちは次のステップへと移行する。
星三の依頼、ホブゴブリン討伐だ。
オークは簡単に言うとゴブリンの上位互換、大型のゴブリンだ。ホブゴブリンとは別にゴブリンロードやレジェンドゴブリンなんてものもいるらしい。だか、そいつらは星五以上の依頼でしか出回らないし、そんな頻繁に出回らないとか。
星三の依頼からはグッと難易度が上がる。以前、不用意に手を出した星三依頼で痛い目を見た経験上かなり不安だ。
だか、レーナが言うにはそろそろ冒険者ランクが上がるかもと言う話だ。本当ならやる気が出る。
不安と期待を胸に俺たちは準備を整え、街を出た。
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