贈るコトバ

I am DOG

文字の大きさ
2 / 7

始動

しおりを挟む
『ある日突然、平凡な中学生のもとに届いた一枚の手紙――それは、国王就任要請だった。国連と日本を巻き込み、彼の住む小さな町は突如として異国の首都となる。戸惑う町民の前で、彼は演説する。逃げ出す者には容赦しない、と。権謀術数渦巻く国際社会で、彼と彼の同級生たちが作り上げた国とは?

(中略)

 俺たちは当初のシナリオ通り、ニューヨークにある国連本部へと向かった――』


「こんな感じのストーリー展開だけど……どうかな」

 俺は読書感想文ですら人に見られたくないくらいシャイだ。自分の感想を見られたり、それに対する感想を聴くこと自体は別にいい。
 文章は人の内面を殊更にさらけ出す。だからこそ、自分自身を否定されるんじゃないかという恐怖が嫌なんだ。

「うん、面白いと思うよ」

 少しの間を置いて、彼女が呟いた。

 少しの間も置かず、俺は言い返す。

「社交辞令おつ。まぁ、何度でも書き直すからアイデアくらいは出してくれよな」

「えぇー、私なんかじゃ無理だよー。誤字脱字を探すくらいしか――」

「てかさ、そもそも勝手に国なんて作れるもんなの? ムツゴロウ動物王国とか」

「俺も思った。一応、ネットで調べてみたんだけど、あれは独立国じゃなくてただの団体らしいよ」

 A4用紙三枚に纏めた資料をベッドに置き、二人に見せる。

『国家の権利及び義務に関する条約:1933年にモンテビデオで締結された、主権国家の資格要件を明記した条約。第一条で、国家とは"永久的住民、明確な領域、政府、外交能力を持つもの"と定められている。
 しかし、国際法上国家成立を認可する機関が存在しないため、いかなる行為があった場合に国家成立とみなすのかについては争いがある。従来、国際法上の国家成立は他国の承認によってなされるとする創設的効果説が有力であったが、第二次世界大戦後に相次いだ新興諸国誕生を経て、現在では、実効的な国家の成立のみで十分とする宣言的効果説が通説と考えられている――』

「これが実際に作られた国」

 プリントをさらっとめくり、二枚目を見せる。そこには各国の概要と年表、地図がまとめられている。

『アトランティス:ハリケーンと訴訟にて滅亡
大カプリ共和国:大陸棚訴訟に敗訴し滅亡
ニューアトランティス:大統領選後の嵐で滅亡
アバロニア:国土(貨物船)が沈没し滅亡
シーランド公国:建国38年後に売りに出される』

「意外とあるのね。でも、建国なんて日本の憲法や法律で禁止されてるんじゃない?」

「うん、調べた。こんな感じだった」

 三枚目を見せると、フォントが小さすぎたのか、三人の顔が急接近する。呼吸が止まる。息が苦しい。

『日本国憲法第七十七条:国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし……首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。
 同第八十一条:外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する――』

「怖ぇ……こんな小説書いて大丈夫なのか?」

「革命成功後は“行為が正当化されて犯罪性が否定される”らしいし、あとがきに“※本作はフィクションであり、実際の個人・団体・思想・宗教とは一切関係ありません”って一行書いておけばOK牧場、超余裕。お前ビビりすぎ、ヘタレすぎ」

 一歩下がって酸素を目一杯補給し、一息で幼馴染を蜂の巣にしてやった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

処理中です...