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三
始動
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『ある日突然、平凡な中学生のもとに届いた一枚の手紙――それは、国王就任要請だった。国連と日本を巻き込み、彼の住む小さな町は突如として異国の首都となる。戸惑う町民の前で、彼は演説する。逃げ出す者には容赦しない、と。権謀術数渦巻く国際社会で、彼と彼の同級生たちが作り上げた国とは?
(中略)
俺たちは当初のシナリオ通り、ニューヨークにある国連本部へと向かった――』
「こんな感じのストーリー展開だけど……どうかな」
俺は読書感想文ですら人に見られたくないくらいシャイだ。自分の感想を見られたり、それに対する感想を聴くこと自体は別にいい。
文章は人の内面を殊更にさらけ出す。だからこそ、自分自身を否定されるんじゃないかという恐怖が嫌なんだ。
「うん、面白いと思うよ」
少しの間を置いて、彼女が呟いた。
少しの間も置かず、俺は言い返す。
「社交辞令おつ。まぁ、何度でも書き直すからアイデアくらいは出してくれよな」
「えぇー、私なんかじゃ無理だよー。誤字脱字を探すくらいしか――」
「てかさ、そもそも勝手に国なんて作れるもんなの? ムツゴロウ動物王国とか」
「俺も思った。一応、ネットで調べてみたんだけど、あれは独立国じゃなくてただの団体らしいよ」
A4用紙三枚に纏めた資料をベッドに置き、二人に見せる。
『国家の権利及び義務に関する条約:1933年にモンテビデオで締結された、主権国家の資格要件を明記した条約。第一条で、国家とは"永久的住民、明確な領域、政府、外交能力を持つもの"と定められている。
しかし、国際法上国家成立を認可する機関が存在しないため、いかなる行為があった場合に国家成立とみなすのかについては争いがある。従来、国際法上の国家成立は他国の承認によってなされるとする創設的効果説が有力であったが、第二次世界大戦後に相次いだ新興諸国誕生を経て、現在では、実効的な国家の成立のみで十分とする宣言的効果説が通説と考えられている――』
「これが実際に作られた国」
プリントをさらっと捲り、二枚目を見せる。そこには各国の概要と年表、地図が纏められている。
『アトランティス:ハリケーンと訴訟にて滅亡
大カプリ共和国:大陸棚訴訟に敗訴し滅亡
ニューアトランティス:大統領選後の嵐で滅亡
アバロニア:国土(貨物船)が沈没し滅亡
シーランド公国:建国38年後に売りに出される』
「意外とあるのね。でも、建国なんて日本の憲法や法律で禁止されてるんじゃない?」
「うん、調べた。こんな感じだった」
三枚目を見せると、フォントが小さすぎたのか、三人の顔が急接近する。呼吸が止まる。息が苦しい。
『日本国憲法第七十七条:国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし……首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。
同第八十一条:外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する――』
「怖ぇ……こんな小説書いて大丈夫なのか?」
「革命成功後は“行為が正当化されて犯罪性が否定される”らしいし、あとがきに“※本作はフィクションであり、実際の個人・団体・思想・宗教とは一切関係ありません”って一行書いておけばOK牧場、超余裕。お前ビビりすぎ、ヘタレすぎ」
一歩下がって酸素を目一杯補給し、一息で幼馴染を蜂の巣にしてやった。
(中略)
俺たちは当初のシナリオ通り、ニューヨークにある国連本部へと向かった――』
「こんな感じのストーリー展開だけど……どうかな」
俺は読書感想文ですら人に見られたくないくらいシャイだ。自分の感想を見られたり、それに対する感想を聴くこと自体は別にいい。
文章は人の内面を殊更にさらけ出す。だからこそ、自分自身を否定されるんじゃないかという恐怖が嫌なんだ。
「うん、面白いと思うよ」
少しの間を置いて、彼女が呟いた。
少しの間も置かず、俺は言い返す。
「社交辞令おつ。まぁ、何度でも書き直すからアイデアくらいは出してくれよな」
「えぇー、私なんかじゃ無理だよー。誤字脱字を探すくらいしか――」
「てかさ、そもそも勝手に国なんて作れるもんなの? ムツゴロウ動物王国とか」
「俺も思った。一応、ネットで調べてみたんだけど、あれは独立国じゃなくてただの団体らしいよ」
A4用紙三枚に纏めた資料をベッドに置き、二人に見せる。
『国家の権利及び義務に関する条約:1933年にモンテビデオで締結された、主権国家の資格要件を明記した条約。第一条で、国家とは"永久的住民、明確な領域、政府、外交能力を持つもの"と定められている。
しかし、国際法上国家成立を認可する機関が存在しないため、いかなる行為があった場合に国家成立とみなすのかについては争いがある。従来、国際法上の国家成立は他国の承認によってなされるとする創設的効果説が有力であったが、第二次世界大戦後に相次いだ新興諸国誕生を経て、現在では、実効的な国家の成立のみで十分とする宣言的効果説が通説と考えられている――』
「これが実際に作られた国」
プリントをさらっと捲り、二枚目を見せる。そこには各国の概要と年表、地図が纏められている。
『アトランティス:ハリケーンと訴訟にて滅亡
大カプリ共和国:大陸棚訴訟に敗訴し滅亡
ニューアトランティス:大統領選後の嵐で滅亡
アバロニア:国土(貨物船)が沈没し滅亡
シーランド公国:建国38年後に売りに出される』
「意外とあるのね。でも、建国なんて日本の憲法や法律で禁止されてるんじゃない?」
「うん、調べた。こんな感じだった」
三枚目を見せると、フォントが小さすぎたのか、三人の顔が急接近する。呼吸が止まる。息が苦しい。
『日本国憲法第七十七条:国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし……首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。
同第八十一条:外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する――』
「怖ぇ……こんな小説書いて大丈夫なのか?」
「革命成功後は“行為が正当化されて犯罪性が否定される”らしいし、あとがきに“※本作はフィクションであり、実際の個人・団体・思想・宗教とは一切関係ありません”って一行書いておけばOK牧場、超余裕。お前ビビりすぎ、ヘタレすぎ」
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