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分からない気持ち

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❋本日も、2話投稿します❋















そして今、リュークレインさんに両脇に手を入れて抱き上げられ、後ろ足がブラーンと垂れ下がった、久し振りのお腹曝け出し状態です。

ー色々と恥ずかし過ぎる!ー

抵抗の意味を込めて後ろ足をジタバタさせると

「あぁ、すまない。この抱き方は嫌いなんだったな。」

と、苦笑した後、私を下ろしてくれる─と思いきや、そのまま抱え直して私を抱っこしたまま椅子に座った。

「はぁ──やっぱりルーナの側は落ち着く…。」

そう言って、私を撫でる手は温かくて……その目は優しい。いつもなら私もホッとして安心するのに…。何故か、今は昼間に見たリュークレインさんとカミリア王女の姿が目に浮かんで落ち着かない。

「お土産があるんだけど、今日はもう遅いから、また明日…一緒に食べてくれるか?」

『明日?明日は、仕事はお休みなんですか?』

「うん。明日から3日間休みなんだ。残念ながら、叔母上は居ないけどね。」

私を抱っこしたまま器用に肩を竦めるリュークレインさん。

ー明日は…リュークレインさんと、ゆっくりお話ができる?ー

そう思うと、また自然と尻尾が揺れ出した。

『───明日、ゆっくりお話ができるのを、楽しみにしてますね。』

鼻先で、リュークレインさんの頬をスリッと一撫でしてから、私は目を瞑って────




「………ルーナは……俺をどうしたいんだ!?」



と、リュークレインさんが呟いた声は、寝落ちしてしまった私の耳には届かなかった。








次の日は、約束通りにリュークレインさんとケーキを食べながら色んな話をした。
アシーナさんをはじめ、東西南北の魔女さん達4人は、ほぼほぼ付きっ切りで聖女達の訓練をしているそうだ。その合間をぬっては、森に異常がないかの確認もしている為、リュークレインさんよりも忙しくしているとの事だった。

そして、リュークレインさんが忙しい理由は、カミリア王女が立太子したから─。王太子となったカミリア王女が、公務に早く慣れる為─と、公務が増えたお陰で、近衛の仕事も増えたそうだ。特に、王家として繋がりを大切にしている領地に関しては、いち早く新たな王太子となったカミリア王女との繋がりを強くしたい為に、視察を兼ねた挨拶周りも多かったそうだ。

「カミリア王女はリナと同い年でね。身分も問題無かったから、幼い頃からよく遊んでいて…2人がよく俺に絡んで来ていたんだ。幼馴染み…妹?みたいなものだな。だからか、どうしてもカミリア王女の事が心配になってしまって、ついつい視察の時は俺が同行してしまうんだ。それで、余計に忙しくなって……。」

“妹みたいなもの”

そう聞くと、ホッとする自分と、それでも─と思う自分が居る。その感情が、やっぱりいまいち分からない。
でも、リュークレインさんとのこの時間は、やっぱり楽しいと思うし、大切にしたいなと思った。






その翌日は、リナティアさんも休みだった為、私は久し振りにリナティアさんに全力で身を任せた。その横で、リュークレインさんが笑っていたけど、気にしない!

そして、休暇最終日は昼間は庭でゆっくり過ごし、夜は夜でリュークレインさんの膝の上で身を任せている。

ーはぁ─本当にリュークレインさんに撫でられるのは……気持ちいいなぁー

でも、また明日から忙しくなると言っていたから、また暫くは会えないんだろうな…。そして、また……リュークレインさんは……カミリア王女の側に──と言う事なんだよね?

チクリ──と胸が痛む。

リュークレインさんは、以前と変わらず優しい目で優しく撫でてくれているのに。

ーあぁ、そうかー

私は、杏子女性どころか、人間ひと扱いされていないんだ。だから、白狼の私を膝の上に乗せる事に抵抗が無いし、部屋に2人きりになっても…問題無いんだ。

チクリ──

そして…この痛みは…………

「ルーナ?」

ソッと顔を両手で挟まれて持ち上げられた。

「魔力が…不安定だけど……何かあったのか?疲れたのか?」

綺麗な紫色の瞳が、少し心配そうに揺らめいている。

『…少し…疲れたかも……ですね。そろそろ…寝ようかな…』

「そうか……。寝てしまったら、ルーナの部屋に運んであげるから、ここで寝て良いよ?」

持ち上げられた顔を、もう一度リュークレインさんの膝上に乗せて、私はそのまま目を閉じた。

ー明日朝起きたら……もうリュークレインさんは…居ないんだろうなー

リュークレインさんの膝に左前足を乗せて、その手にキュッと力を入れた。





朝目が覚めると自分(アシーナさんに充てがわれた客室)の部屋の寝床であるカゴの中だった。勿論、リュークレインさんは既に登城した後だった。

『ん?』

カゴの上に、メモが置かれていた。

“次の休みの時も、一緒にケーキを食べよう”

『リュークレインさん……』

胸がチクリと痛んだり、キュンと切なく?なったりはするけど、“次”もあると分かると、自然と気持ちが上昇する。

これが、“恋”なのなかどうかはまだ分からない。

ー次に会った時には、答えが出ているだろうか?ー

と、私は暫くの間、そのメモを見つめ続けた。













それからもリュークレインさんは忙しいようで、月に2、3回程しか帰ってはこれなかったけど、帰って来た時は必ず私の側に居てくれた。

やっぱり、白狼扱いしかされないけど、一緒に居られるから良いか?とも思ったりもする。



そんな日々を過ごし、更に半年ほど月日が経ち、私がこの世界に来てから2年が経った。ウンディーネ様の言った通り、魔力も安定して馴染んで来たのか、水玉を出す以外の魔法も使えるようになってきた。














『……雨か………』

その日は、アリスタ邸には使用人の人達以外は誰も居なかった。アリスタ公爵とリュークレインさんとアシーナさんは王城に、リナティアさんは学園に行っている。比較的家にいる事の多いクラリス様も、今日はお茶会に行っている。

水の精霊の加護があるからか、雨が降っている日は何となく嬉しくなるんだけど、何故かその日は嫌な感覚に襲われていた。
だから、私はアシーナさんのベッドの上で丸まって、ほぼ1日そこで過ごした。





その日、その時、王城敷地内の神殿で、“召喚の儀”が行われていた事など……一切知らずに。












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